ある学生のある一日

 俺の世界には光がない。


 こう言うと普通は普段の生活に光がない、つまり生活に面白みがないととらえることが多いだろう。事実俺もそうだ。俺は一高校生として今日もいつもと同じように登校していつもと同じように授業を受けいつもと同じように下校する。

 そう、いつもと変わらない。


 俺の世界には光がない。


 俺からしてみれば普段と同じ生活でも他から見てみれば俺の姿はどう映るだろうか。かわいそう、哀れ、不憫、蔑み、優越感、嘲り、怒り・・・皆思っていることは様々だと思う。しかし俺には人の顔色をうかがうことができない。


 俺の世界からは光が消えた。


 光というものは目から網膜を通して感じ取りそれが映像として流れているいわば天然のカメラだ。だが俺のカメラはあの日以来壊れたままだ。左は完全に闇の世界、右は濁った水の中にいるような状態だ。


 ただでさえ生きにくい状態なのに周りの反応がさらに俺を生きづらくしている。俺は目が見えない分、聴力に頼ってきたので周りの声がよく聞こえる。今この瞬間にも俺の周りからは俺のことを言う声が聞こえる。目が見えないからっていろいろ言いすぎだと思うこともある。言ってる本人からすればどうせ目が見えないんだから顔バレしないだろうとか思っているだろうが、その分耳が良いので誰が言ってるかくらいの区別はつく。


 『障がい者に優しい社会を』と世間では言っているが事実全くそうではない。この世界は障がい者にとても厳しい。それは学校生活においても変わらない。いや、学校生活だからこそ厳しさが顕著に現れる。毎日劣等感しか感じない。全く面白くない。あと2年以上こんな生活が続くのか・・・。高校なんか入らなければよかった。


 俺の世界には、光がない。

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