第12話 クラスのギャルとクラスの静かな子
楽しかった休日も終わって、眠たい目を擦りながら俺は学校への道を歩く。返却日が今日の映画を一本見るのを忘れていて、それに気付いたのが夜十一時過ぎだったからなぁ。見終わったら日付変わってたから完全に寝不足だ。
一緒に見ていた莉々香は開始二十分くらいで隣で爆睡してたから全然平気そうに起きてたけど。
「あ〜……ねむっ」
一人で歩いているのにそんなことを呟いてしまうほどに眠い。だけど口に出さないと歩きながら寝てしまいそうだ。実際にあくびが止まらない止まらない。
「あ、あの……真峠くん、おはよう」
「ふぁ~……ん? ………んん?」
あくびの最中にいきなり声をかけられ、振り向いた先にいたのはショートボブで前髪を二本のピンで留めた小柄な女の子。誰だこの子? 知らない女の子だ。え、こわっ。
「えっと、わかんない……です? 同じクラスの久我なんですけど……」
「あ、あぁ! 生徒会長の妹の!」
危ない危ない。莉々香から聞いてなかったら完全にわかんなかったな。セーフ。
「うぅ……やっぱりそういう認識なんだ……。それにさっき不思議そうにしてたし、多分覚えてなかったよね……」
アウトだった。
「あ……いや、ごめん。俺、人の顔と名前覚えるの苦手でさ」
「いえ、いいんです。自分でもわかってますから。それよりもこの前はスーパーで姉がいきなり話しかけたとか。すいません」
「あぁ、あれにはびっくりしたよ。本当にいきなりだったからね」
「あれは多分私のために……」
「ん?」
「あ、いえ、なんでもないです。それじゃ」
久我さんはそれだけ言うと歩き去ってしまう。いったいなんだったんだ?
◇◇◇
そして、初めて声をかけられた日から久我さんはよく俺に話しかけて来るようになった。
最初は挨拶だけ。それが段々に世間話に。初めの頃は距離感が掴めなくて戸惑っていたけど、慣れとは恐ろしいもので、徐々に普通に話すようになっていた。
時折教室の中で俺に向けられる視線があると、いつもは莉々香だけだったのが、そこに久我さんのが追加されている状態。
だからなのか、家に帰ると莉々香から可愛い嫉妬攻撃を受けていた。
「なんか女の子と仲良くなってるぅ〜!」とか、「しかも羽衣ちゃんと〜! あ、でも羽衣ちゃん可愛いよね!」とか。あとは、「いっちゃんって誰とも話さないからちょっと心配だったんだよね……」って嫉妬ではなく心配もされた。
そんな日々が続いたある日、俺は久我さんに少し物を運ぶのを手伝って欲しいと言われて、今は使われていないただの資料室と化した空き教室に連れてこられていた。
「それで久我さん、何を運べばいいの?」
「あ、こっちにあります。私じゃ持てなくて……お願いしてもいいですか?」
「わかったよ」
そして俺が床に置いてあったダンボールを持つ為にしゃがんだ時だ。
「!? おわっ! な、なんだ!?」
何か液体のような物が頭に吹きかけられ、それを手に付けて見てみるとそこには青い塗料。……まさか!?
「久我さん!? これって!」
「やっぱり……やっぱり真峠くんが私の青鬼様だったんだ……」
「っ!」
バレた──!?
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