第四十三話 『ようやく、ようやくって感じだ』
「よいしょっと。」
僕はやっとの思いでツカサを地上まで運んできた。
やっとの思いで地上に運んだは良いものの、まだやる事がある。
「変形」
僕は土を変形させて、ツカサを拘束する。
「クソッ、離せっ!」
「離せと言われて離す奴が居ると思うのかい? 必要があるから捕らえたんだから。」
僕は一旦戦闘が終了したため、周囲を確認する。
横を見れば、姉さんがクルト君を連れてこっちに向かって来ていた。
よく見ると、クルト君の横にもう一人縄で拘束されていた少女も居る。
そういえば、最初ツカサを追っていたはずクルト君はどこに居たんだろうか?
まあ、「変形」によって土で周囲を覆われて捕らえられてたってところかな。
「こっちは終わったよ、二人共。」
「ありがとうリトライラ君。でも、今まで何処に居たの?」
「それはだね、」
僕は地下で起こったことを簡単に説明した。
「へぇ~、その人だね。」
『流石リトライラ様なのさ。』
大体現状の共有は終えたので、後は兄さんを待つだけだ。
「とりあえず、この人をどうにかしないとね。」
僕は、未だに叫び続けているツカサを見る。
さっきからずっと、あのナギサって人の名前を叫びながら泣いている。
「数分間弟と離れただけで泣くとか、寂しがり屋なんてレベルじゃないよ。」
僕はツカサに声を掛ける。
しかし、ツカサは僕を見ると憎悪を込めた目で僕を見た。
「あ、あんた達のせいでナギサはっ、クソッ!!」
ツカサはそう言って暴れ出した。
しかし、拘束をされている為ただジタバタしているだけだ。
「あ、もうこっちも終わってたか。」
その時、丁度兄さんが僕らの前に転移してきた。
という事は、あのナギサとやらは倒してきたってことか。
「そうだよ。」
「まあ、全部リトライラ君が終わらせたから私たちは何もやれなかったんだけど。」
一応、兄さんにも現状を説明しておく。
「そっか、まあ無事で何よりだよ。」
「うん、そこに兄さんが「変形」を略奪出来る様に捕えてるツカサが居るから。」
『まあ、オイラは今の内にササキバラさんのところに行ってくるのさ。』
そう言って、クルト君は跳んで行った。
「ありがとう、リトライラ。後、このボールに「浮遊」を付与しといて欲しいんだけど。」
「いいけど、何で?」
最初にナギサと会った時に、「浮遊」は目にしている。
「俺、ナギサと戦闘してる時に「浮遊」が付与されているこの玉が未来から送られてきたんだよ。だから、今度は俺が過去にこの玉を転移させれば辻褄が合うだろ。」
「なるほど、そういうことか。」
僕は、兄さんの持つ玉に「浮遊」を付与する。
ちなみに、これで地下で作った「変形」が付与されている土は使えなくなった。
「おっ、サンキューな。」
「お安い御用だよ。」
兄さんは「浮遊」が付与された玉を「次元転移」で過去に転移させた。
未来からあの玉が転移してきたから兄さんが勝ったのか、兄さんが勝ったからあの玉が転移してきたのか。
こういう矛盾を、パラドックスとでも言えばいいんだろうか。
まあ、こういう哲学的なことは暇な時にでも考えようかな。
「あそこにツカサは捕えて、あれ?」
僕はさっきまでツカサが居た場所を指差して言った、つもりだった。
しかし、僕が指を差した先には地面しか無かった。
「もしかして、逃げられた!?」
僕は慌てて近くの建物を隈なく探した。
しかし、ツカサは何処にも居なかった。
(しくじった!)
ステータスもさっきよりは大幅に減少しているし、両手も切り落としているから「変形」は使えないから逃げられるはずは無い、と思っていた。
見事に僕の確信は当てが外れたという訳だ。
僕は周囲の建物を調べ終えて、兄さん達のところへと歩いて戻ろうとした。
しかしその時、
ド――――――ン!!
突如上空から人影が落ちてきた。
(あれ、デジャブ?)
「よくもわしの可愛い弟子を二人も殺してくれたのぉ。」
「毎回お前空から降ってくるよな。」
兄さんが軽口でそう言うと、
「単に、建物の無い屋根の上を走った方が早いってだけじゃよ。」
軽快にそう返す冥皇だが、彼の目には隠そうともしない苛立ちが浮かんでいた。
まさに一触即発。
「ようやく、ようやくって感じだよな。」
「何がじゃ?」
兄さんは空気を一転させて言った。
「お前をぶちのめすのがだよ。」
そう言って、兄さんは短剣を手に取った。
「ちょっと、一旦町から出ないか?」
「そうじゃな。」
その瞬間、僕達四人の体は一瞬で城外へと転移した。
~あとがき~
次話から冥皇戦開始......という訳じゃないです。(テヘペロ)
一旦ツカサ視点と佐々木原視点の回を二回挟んでからって感じです。
なるはやで投稿したいですね。
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