第三十九話 『お前がこの戦いの勝ちを確信した時、俺は既に勝ってたんだよ』


「あんた、何したんだよ!?」


 ナギサは状況を理解したのか、俺に問いただしてきた。


「おいおい、この状況でそんなことを気にしてる余裕があるのかよ? 俺に生殺与奪の権を握られているこの状況でよ!」


 俺はいつでも上空に待機している土の壁をナギサの元へ落とすことが可能だ。

 俺がこの固有スキルを解除した瞬間、ナギサはあの土の壁と地面にぶつかって圧迫死をすることだろう。


「クッ、」


 ナギサは全力で「浮遊」を自身の衣類にかけて高速移動をする。

 だが、


「遅い遅いっ!」


 俺は上空の土の塊を端から順に落としていく。

 土の塊は上空およそ200メートル程の高さで浮遊している。

 その土が重力に従って落ちてきたのなら、当然その運動エネルギーの大きさは想像を絶するものだろう。

 とても身体強化を使用したナギサが耐えられるとは思えない。


「この土から、何故か僕が「浮遊」を使用した時と同じ波長の魔力を感じる!? つまり、つまり、」


 ナギサは俺の方向を向いて怒鳴った。


「何であんたが、俺の「浮遊」を使えているんだ!!」

「さあな、俺もどうやってこのスキルを手に入れたのかは分からないよ。だが、一つだけ確実なことを教えてやろう。」


 俺は、土の塊にかけている「浮遊」の力を強めて土の落下速度をどんどん上げながら答える。


「お前は俺に殺される。」

「ふっざけんなぁぁー--!!」


 ナギサは怒りのままに俺へ突進してきた。

 俺は当然、「次元転移」でナギサと距離を取る。


《次元転移を発動します》


 すると、ナギサは俺に追いつくのを諦めたのか、今度は逆に土の壁の真正面に飛んで行った。


「何をしようとしてるんだ?」


 そして、土の塊との距離がもう数メートルというところで、いきなり急降下を始めた。


「なるほどな。自分も土と同じ方向に落下することで、土からの衝撃を緩めようとしているのか。だが、」


 俺は、手元に持っていた短剣をナギサの落下の進行方向に転移させた。


「グハッ、」

「言ったろ、お前は俺に殺されるって。俺のスキルが証明してんだよ。」


 俺は、ナギサの首元に刺さっている短剣を俺の左手へと転移させる。

 そして、致命傷のナギサの元に転移した。


《次元転移を発動します》


 ナギサは俺に最後の抵抗とばかしに近くに落ちている石を這いずりながら逃げていた。


「に、逃げるんだ。ツカサ姉ちゃんのところまで......」


 ナギサはそんなことを言ってから、力尽きた様に倒れた。

 俺は構わずにナギサの元まで歩いていく。

 まだ、天の声が聞こえていないから。


「おい、死んだふりは止めろよ、ナギサ。」


 俺はナギサの前に立ち、そう言った。

 当然、ナギサはピクリとも反応しない。


「仕方ないな。」


 俺は、ナギサの頭蓋骨目掛けて短剣を差し込もうとする。

 すると、


「来るなっ!」


《反射を発動します》


「グハッ、」


 ナギサは、自分の最後の魔力を振り絞って自身に身体強化を掛けてから俺に投石をしてきたが、俺の「反射」によって逆にナギサの腹にその石がめり込む。


「お前、さっき俺の「次元転移」の弱点がうんたらかんたら言ってたろ。」

「そうだよ。例え僕がここで負けたって、冥皇様には勝てない。」

「そうか、なら丁度いい。その冥皇様のスキルを教えてくれよ。」

「嫌だね。」


 俺は、ナギサの腹に短剣を刺す。


「グッ、」

「それなら、交渉と行こうじゃないか。」

「?」


 俺だって拷問をした経験なんてない。

 ナギサにはなるべく冷酷な表情を見せているが、内心では吐き気と悪戦苦闘中だ。


「もしお前が冥皇のスキルについて話してくれたら、俺はお前にその傷を治してやるよ。」

「はっ、ハッタリを言ったって無駄だよ。僕の「鑑定」ってスキルであんたのステータスは読んだが、あんたに俺のこの致命傷を直す術なんか無いはずだ。」

「まあ、当然の反応か。」


 論より証拠だ。

 俺は、ポケットに入っている二つ目のボールを取り出して、俺のちぎれた右手にあてる。

 すると、


「き、傷が癒えていく!?」

「このボールには、HPとかMPを保管しておく「能力吸収」ってスキルが付与されてんだよ。そんで、このボールの中には30000のHPが内蔵されてんだ。ちょっぴりそのHPを使って、俺の肉体を回復させていってるんだよ。」

「なんだって!? 欠損した部位まで直せるというのか。」

「そうだ。」


 治療している俺から見ても、今俺の右手に起きている現象は少し気持ち悪さを感じる。

 なんと言うか、少しづつ右手が生えて言っているのだ。


「あんたが俺のこの傷を治せるのは分かった。じゃあ、最後に聞かせてくれ。」

「なんだ?」

「どうやってあんたは俺の「浮遊」を使ったんだ?」

「ああ、そのことか。」


 まあ、当然の疑問だよな。


「俺の「次元転移」ってスキルで、未来の俺がこの玉に「浮遊」が付与された状態で送って来てくれたんだよ。つまり、」

「なるほど、そういう事だったのか。なるほどな。」


 そう言うと、ナギサは全身の力を抜いて地面に体を預けた。


「ナギサ?」


 俺は不審に思い、ナギサに声を掛けた。


「冥皇様、ツカサ姉ちゃん、俺、キヨハラショウスケには勝てなかったよ。最後の最後まで今までの恩を返しきれなかった、な。せめて、今送った情報を活用して欲しいな。僕の、最後の......」


 そう言って、ナギサは力尽きた様に目を閉じた。



《経験値が入りました。》

《経験値が上限に達しました、レベルが上がります。》

《経験値が入りました。》

《経験値が上限に達しました、レベルが上がります。》



~あとがき~

こちらの作品も、是非是非読んで見て下さい。

なんか、「夫にナイショシリーズ漫画コンテスト」のランキングの付け方が全く分からなくて困惑しております。

分かる人が居たら、どうか教えて欲しいです。


『結婚してもう一か月、そろそろ旦那が浮気する頃かな。~そんなに浮気をするのなら、もう離婚しましょう。え、家のローンがあるから慰謝料を払えない? そんなこと知りません。~』

https://kakuyomu.jp/works/16816927862513222802


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