第三十六話 『お前らって、そんな登場ばっかだよな』
《経験値が入りました。》
《経験値が上限に達しました、レベルが上がります。》
俺は、今日も今日とて魔物狩りを続けていた。
もう既に、目標だった300レベルは超えている。
今は、クルトからのとある報告を待っている。
『キヨハラ様、冥皇と、冥皇の弟子達の居場所を確認してきたのさ。ササキバラさん達も準備万端の状態なのさ。』
流石クルト。
これで、本当に後は攻め入るだけになった。
(長かった。)
俺は、ここ数週間のダンジョン生活を思い返す。
今ではダンジョン生活も日常と化してきていたが、地球での俺では考えられない程の濃い日常だった。
そろそろ、安心、いや安寧が欲しい。
「クルト、葉山とリトライラを呼んできてくれ。」
『了解なのさ!』
そう言って、クルトはダンジョンの壁をすり抜けながらどこかへ跳んで行った。
今日が今までの異世界生活の集大成だ。
張り切って行こうか!
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「じゃあ、今日の予定、というより作戦について話すぞ。」
葉山とリトライラも、無言で頷いてくれる。
「まず、俺とリトライラと葉山は冥皇と戦う。そして、ササキバラ達の組織には冥皇の弟子達の対応を任せる。クルトには、俺達の連絡役と佐々木原達の援護を頼む。」
『承知したのさ。』
「うん、了解。」
「分かったよ。」
突然だが、俺は昨日クルトにこんなことを聞いてみた。
この世界の性質上、冥皇に弟子入りしたところで何かメリットはあるのだろうか、と。
実力を上げるのなら、ダンジョンに籠ってレベルアップでもすればいいというのに。
だが、クルト曰くこの世界での強くなる方法は何もレベルアップだけではないらしい。
というのも、自分のMPをスキルを介さずに使用するという方法だ。
つまり、腕に自分の魔力を集中させると現実でカメ〇メ波が使えるということだ。
ちなみに、俺と模擬戦をした時の佐々木原もこの方法を使って攻撃をしていたとのことだ。
常人ならばスキルを介さずに魔法を使うなんて非効率極まりないが、冥皇の弟子達ならばそれも分からない。
まあ、それでもスキルの方が有用だということには変わりないらしいけども。
俺は改めて二人にそのことを伝える。
「それで、今冥皇はどうやら町で散歩をしているらしい。残った弟子達は、王宮で待機している。」
好機だ。
冥皇にだって一人になるタイミングくらいあるだろう。
冥皇と弟子達が良い具合に分断されている。
これなら、佐々木原達も動きやすいはずだ。
「今から俺達はこの町の城壁の外に向かう。」
「直接冥皇様のところに向かわないのかい?」
「一応、無関係の人達に被害は出したくないしな。それに、俺達がダンジョンから出てきたって知ったら冥皇も飛んでくるだろ。」
「まあ、兄さんがそう言うのなら。」
魔族であるリトライラからしたら、人間達の生死に興味が無いのだろう。
実際先日、リトライラがそう言ってたし。
「そして、実際に冥皇と戦う時、リトライラはまずは隠れていてくれ。」
「どうして?」
「リトライラは冥皇に「追跡」を使われていないから、冥皇の奴に奇襲を仕掛けられると思うから。」
「なるほどね、分かったよ。」
その後も、ある程度は今日の作戦を共有した。
こうして話し終えてから、俺達は実に数週間ぶりにダンジョンの外へと転移した。
《次元転移を発動します》
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「ああー----、生きてるって実感を感じるー-!」
俺は、久しぶりに日光を全身に浴びたことで何とも言えない感動を感じていた。
生きてるって素晴らしい。
「せっかく高まっていた緊張が、なんか解けちゃったよ。悪い気をしないけどね。」
葉山も気持ち良さげに両手を上げながらそう呟いた。
「そうだね。なんか、何でも良い気持ちだ。」
「はははっ、どういう気持ちだよ。」
俺達はそんなことを言い合いながら笑い合っていた。
その時、突如上空から何かがとんでもない勢いで落ちてきた。
一瞬見えたが、多分落ちてきたのは人間だ。
(あ、あれ、デジャブか?)
どうにも既視感のある登場の仕方でその二人は現れた。
「ハイバレート様が近くに「追跡」に反応が現れたからと仰られたから来てみれば、」
「魔族、人族、妖精族と、何とも奇妙な組み合わせですね。それに、そこの人族の二人は今行方不明の勇者達じゃんか。」
そう言いながら、二人の男女が冥皇を彷彿とさせる登場で、俺達の前に現れたのだった。
こいつ等、毎回空から降ってくるよな。
~あとがき~
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