第十四話 『この職業・・・絶対にヤバい!』

「どうしたんだよクルト、いきなり大声上げて。」

『や、やばいのさ。す、すぐにミリエル様に報告しに行かなくちゃなのさ。』

「って、クルト!?」


 いきなり大声を上げて一人で盛り上がった後、クルトは俺の肩から一瞬で消えた。

 クルトが言っていたし、おそらくはシャーロットさんのところに行ったのだろう。


「全く、何に驚いたかくらい教えてくれてもよかっただろ、クルト。」


 俺がステータスの職業を開いた時にクルトは驚いていたから、きっと俺の職業候補が原因だとは思う。

 けど、どの職業が原因なのかは分からない。


「こりゃ、慎重に職業を選ばないとな。」


 クルトが俺の職業候補を見て、危険だから驚いたのか幸運だから驚いたのかは分からないのだから、もしかしたらとんでもない地雷職業があるのかもだしな。

 まあ、一旦調べてみるか。

 俺は、目の前のステータスボードに書かれている職業候補の特徴を一つ一つ調べていく。



「配達員」

これまでに多くの物を配達してきた者へよく与えられる職業。

物を誰かへ運ぶ時、運び方のコツを覚えやすくなったり、運ぶ速さにプラス補正がかかる。

また、配達することにおいての隠しパラメータの熟練度が上がれば上がる程効果が増したり、使い手によって新たな効果が生まれる。


「学徒」

職業選択時に学徒の者へよく与えられる職業。

隠しパラメータの勤勉値によって学習能力に補正が入る。

また、学徒でなくなった場合はこの職業は所持しているか否かに関わらずに消失する。


「忍耐者」

長い間苦難を堪え忍いだ者へ極稀に与えられる職業。

精神的、肉体的に消耗している時、その消耗具合を軽減してくれる。

また、耐え忍ぶことにおいての隠しパラメータの熟練度が上がれば上がる程効果が増したり、使い手によって新たな効果が生まれる。


「世界を跨ぐ者」

自身の種族では移動不可能の世界間を自由に移動できる者へ与えられる職業。

世界を跨いで出会った他世界間の自分と同調できる。

移動不可能な次元に移動したとしても、その世界に適合しやすくなる。

また、システムの「***」の一部に干渉することが出来る。


「生還者」

生還不可能な状況から生きて生還した者へ与えられる職業。

生還不可能な状況から脱出する時、解決の糸口を必ず見つけることが出来る。

もしも脱出方法が無い場合はシステムの「***」に干渉して、突破口を作れる。

また、システムの「***」の一部に干渉することが出来る。



「ヤバすぎないか。」


 どこから理解すればいいのか。

 というか、最後の方に「***」みたいにぼやけていて読めないんだけども。

 まあ、俺が手に入れた理由は何となく分かるけど。

 「配達員」は、俺が地球で新聞配達とかのアルバイトをしていたからだろうし、「学徒」はその通り俺が高校生だからだろう。

 「忍耐者」は俺が長い間いじめを受けていたからだろう。

 耐え忍んでいたと言えるかは分からないけれども。

 そして、「世界を跨ぐ者」は俺の「次元転移」のせいだろうし、「生還者」は俺が釜瀬に顔を半分破損させられても生き残ったからだと思う。

 まあ、本当にあの時は死んだと思ったしね。

 そして、俺は改めて思う。

 ヤバすぎないか、と。

 「世界を跨ぐ者」の多世界間の自分を管理出来るなんて、もう俺では理解できない。

 説明が意味不明過ぎて判断材料が無い。

 全く、どうしたらいいものか。


「どう、いい職業はあったかい?」


 俺がどの職業にするかを悩んでいると、横からペテラウスさんが話しかけてきた。

 この人さっき程じゃないけれど気配がとても薄いから、いきなり話しかけてくるのは勘弁願いたいんだけど。

 まあ、今回の場合は気付いていたけれど。


「ありましたよ。自分で言うのもなんですが、意味不明な職業が。」

「ちょっと見せてくれないかい?」


 俺は言われた通りにステータスの職業候補を見せようとする。

 しかし、ちらっとステータスの職業一覧を見た時、俺は固まった。


職業 未設定

   職業候補

   ・配達員

   ・学徒

   ・忍耐者

   ・世界を跨ぐ者


「ん?」


 見間違えだ

 さっきまで職業候補にあった「生還者」なくなっている。

 もう一度確認しても、「生還者」は表示されない。


「んんん?」


 見間違いなんかじゃない。

 確かに職業候補の一覧から。「生還者」がなくなっているじゃないか。


『ふぅ、間に合って良かったのさ。』


 いきなり聞こえてきた声に俺は驚いて声の発生源である俺の肩を見る。

 声の主は、俺の肩に乗っている出てもいない汗を拭っているクルトだった。


(何でここにいるんだよ。)


 ペテラウスさんが横にいるので、俺は心の中でクルトに問いかける。


『ミリエル様にキヨハラ様が「生還者」の職業を持っていることを伝えに行ったら、「急いでその職業をキヨハラ様が持っていることが周囲にばれないようにしなさい!」って言われたのさ。だから、焦って戻って来たのさ。』


 ああ、シャーロットさんの命令か。

 じゃあ、クルトが職業候補から「生還者」を消したのか。


『安心して欲しいのさ。職業候補から「生還者」が消えた訳じゃなくて、一時的に見えなくしているだけなのさ。彼にキヨハラ様の「生還者」のことを知られる訳にはいかないのさ。』


 クルトはペテラウスさんを見ながらそう言った。

 話している内容はある程度理解できた。

 だが、そもそも何故隠すのかという前提が分からない。


(何で「生還者」のことを隠したいんだ?)


 俺はクルトに尋ねる。

 すると、クルトは黙考した後に「誰にも言わないで欲しいのさ。」と前置きをした後、話した。


『実はなのさ、もし「生還者」を職業として持つ人がこの世界から生還しようとしたら、』

(しようとしたら?)


 クルトは小さな声で、しかしはっきりと聞こえる声で言い放った。


『その人はt#&e$ng'ok#u!に行けるらしいのさ。』


 t#&e$ng'ok#u!のところは何故か聞き取れなかったが、聞き取れないことが当たり前なのだと俺は何故か直感でそう感じた。

 だが、これだけは本能で分かった。

 「生還者」という職業は、絶対にヤバいやつだと。



~あとがき~


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