第十五話 『思い付いてしまった』

「キヨハラ君、キヨハラ君、聞こえてるかい?」

「っえ、」


 クルトの話に耳を傾けていたから、ペテラウスさんの話をあんまり聞いていなかった。


『三百年くらい前に、その時の聖女の「蘇生」によって生き返らされた少年もキヨハラ様と同じように「生還者」の職業をもっ・・・モゴッ、何をするのさ。』

(後で聞くから、今は黙っていてくれ。)


 しゃべり続けるクルトの口を一旦塞ぐ。

 流石に、この国の騎士団長様を無視し続ける訳にはいかないよな。


「何でしたっけ?」

「だから、君の職業候補を見せてくれないかい?」

「ああ、そうでしたね。はいこれなんですが。」


 俺はクルトに偽装された俺の職業一覧を見せる。


「おお~、良い職業が揃っているじゃないか。特に、「世界を跨ぐ者」なんて凄そうだ。流石は勇者といったところだね。ちょっと説明を見せてくれないかい?」

「まあ、いいですけど。」

『そういうキヨハラ様の警戒心の薄さはどうにかすべきなのさ。まあ、おいらがいるからそうそう大事にはならないけどもさ。』


 クルトの言葉はスルーしておく。

 まあ、ごもっともなド正論なんだけども。


「へぇ~、こんな職業があったんだ。初めて見るけど、これとんでもない効果だね。」


 どうやら、「生還者」が職業候補から消えたからペテラウスさんの興味は「世界を跨ぐ者」へ向いたらしい。

 まあ、それでも「世界を跨ぐ者」の効果もぶったまげているけどな。

 システムの「***」とか、俺には全く理解できなかったけれど隠しておいた方が良かっただろうか?


『そこも当然直してあるのさ。キヨハラ様も、「偽装」のスキルを持っているのだからそれを使えばこの男ぐらい騙せるのさ。』


 そういえば確かに、そんなスキル持ってたよな俺。

 まあ、後の祭りってやつだよな。

 一応、クルトがどう偽装したのかを確認しておくか。



「世界を跨ぐ者」

自身の種族では移動不可能の世界間を自由に移動できる者へ与えられる職業。

世界を跨いで出会った他世界間の自分と同調できる。

移動不可能な次元に移動したとしても、その世界に適合しやすくなる。



 システムがうんたらかんたらってところだけを切り取られている。

 やっぱり、ああいう文章はこの世界の人に気安く見せてはいけないのだろうか?


「ねえキヨハラ君、職業はどれにするか決めたのかい?」

「なかなか決められないんですよ。」


 職業候補の「生還者」と「世界を跨ぐ者」がどちらも凄すぎて、選ぼうにも選べないんだよな。


「まあ、大いに悩んでから決めるのは良いことだよ。職業は誰でも一人たった一つなんだし、一生その職業と付き合っていくことになるからね。」


 まあ、そうだよな。

 「次元転移」でも、俺が一回職業を決めたら取り消せないのだし。


『キヨハラ様、オイラは「世界を跨ぐ者」を選ぶべきだと思うのさ。』


 意外だ。

 あれだけ驚いていたから、クルトはてっきり「生還者」を推すと思っていたんだけどな。


「説明を読む限り、やっぱり「世界を跨ぐ者」が良さそうだよね。移動不可能な次元に移動したとしてもその世界に適合しやすくなるということは、君の肉体が耐えられない次元にも「次元転移」で転移出来るようになるのだから、君の強みをより伸ばせるはずだ。」

『そうなのさ。t#&e$ng'ok#u!に行くことが出来るから「生還者」に驚いただけなのさ。ミリエル様も、キヨハラ様には「世界を跨ぐ者」が良いとおっしゃられていたのさ。』


 それもそうか。

 生還不可能な状況から脱出する時に解決の糸口を必ず見つけることが出来るってのは、確かにチートと言っても過言ではない能力だ。

 だが、実用性を考慮すれば「世界を跨ぐ者」の方が有用だろう。

 それに、「次元転移」があればそうそう死にそうになることなんてないと思う。

 まあ、死にそうになったからこんな職業候補が生まれたんだけどさ。

 俺は、結局数分間程悩んだ末に「世界を跨ぐ者」を選択した。


「お、おおっ!」


 職業を選択した瞬間、俺の頭の中に「世界を跨ぐ者」の特性や効果が頭の中に流れ込んできた。

 さらに、久々の天の声が流れてきた。


《スキル「同調」を手に入れました。》

《スキル「環境適合」を手に入れました。》


「どうやら、職業を決めたらしいね。きっと今君の頭の中に、職業の「世界を跨ぐ者」の大まかの情報が流れ込んできていると思うんだ。使えるようになった諸々の職業の効果を試してみるといいよ。後でその職業を使って模擬戦をやってもらうことになるから。」


 そう言うと、ペテラウスさんが他のクラスメートのところに歩いて行った。

 けっこう俺のところで引き止めちゃったな。


『さあ、早速他世界のキヨハラ様と同調してみてなのさ。』


 若干の興奮と共に、クルトが言ってくる。

 勿論そのつもりだ。

 だって、たった今俺はスキルの「同調」の説明が頭の中に流れ込んできたことによって、とんでもないことを思いついてしまったのだから。


「おいクルト、今俺の思考を読まなくていいのかよ。」

『ん?』

「もしかしたら、あまりに想像外過ぎてショック死するかもしれないぜ。」


 まあ、この妖精にショック死なんてものがあるのかは知らないけど。


「行くか、」

『って、ちょっと待って欲s、」

「せーの、っと」


 俺はクルトの静止を横目に掛け声とともに「次元転移」を発動させた。





《次元転移を発動します。》



~あとがき~


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