第二話 『戻ってる?』
「起きられましたか?」
「へ?」
目を開けると、そこにはショウワールさんがいた。
俺は何故か、病室のようなところのベットで寝かされていた。
さらに、服はさっきまでの制服ではなく、病人の着るようなうすい白衣のようなものを着ている。
「あ、あの、ここは?」
「ここは王宮の病棟です。」
俺は何でここにいるんだ?
確か、さっきまではダンジョンでステータスの能力を釜瀬と試していたんだっけ?
それでその後、危機感知がいきなり反応しだして、それで、
「っう、おえぇぇ」
「お、落ち着いてください。」
俺はあの時のことを思い出して、吐いてしまった。
そうだ、俺は釜瀬に殺されたんだ。じゃあなぜ俺は今生きてるんだ?
俺がこの状況について考え始めると、ショウワールさんが話し出した。
「いいですか、あなたは今勇者としてこの世界に召喚されました。」
知ってる。
さっきその話は聞いた。
「あなたは、私たちに召喚された時に顔の半分を欠損するような重傷を負っていました。幸いここには、多くの回復魔法のスキルを持つものがおりましたので、なんとか一命をとりとめました。」
そういえば、俺の意識がなくなる直前に《次元転移を発動します》と、聞こえた気がする。
つまりあれか?
俺は過去に転移したってことか?
しかも、肉体ごと。
俺は、ショウワールさんのさっきと同じような説明を聞き流しながら「次元転移」について調べていた。
「次元転移」
使用者が移動したことのある、同次元間を転移できる。
今転移することができる次元は、一~五次元です。
一次元:直線内で、自身の指定できるポイントに転移できる。
二次元:平面内で、自身の指定できるポイントに転移できる。
三次元:空間内で、自身の指定できるポイントに転移できる。
四次元:時間軸内で、自身の指定できるポイントに転移できる。
五次元:パラレルワールド内で、自身の指定できるポイントに転移できる。
(ヤバすぎるだろ。)
はっきり言って、この結果は俺の想定をはるかに超えたものだった。
というか、俺は五次元間を移動したことなんてないんですけど。
もしかして、この世界は地球のパラレルワールドだとでも言うのだろうか?
一つの疑問を調べたら、より多くの疑問が出てきてしまった。
だが、俺が過去に戻ってきたのは多分このスキルを使って、無意識下で四次元間を転移したからだろう。
その点においては、このスキルには感謝してもしきれない。
なにせ、こうしてやり直すことが出来たことで、俺は決心ができたのだから。
今までは、どうせ無理だろとか、頑張っても逆に苦しくなるだけだとか、言い訳を並べて必死に頑張ろうとしなかったかもしれない。
でも、死ぬ間際になって俺は物凄く後悔した。
もっと頑張れば今ほどひどい状況にはなっていなかっただろうな、と。
帰り道で立ち読みなどせずに一秒でもアルバイトや勉強を頑張ろうとしていたら、釜瀬たちのいじめにもう少し抵抗していたら、何か変わっていたかもしれなかったのに。
諦めずに努力することを無駄だと切り捨てていたあの時の俺では、人生をやり直していたとしてもきっとどの道今と同じように落ちぶれていっただろう。
だからこそ、俺はより決意を強くする。降りかかる不幸を全てに抗ってでも生きよう、生きて幸せになろう、と。
「と、言うわけで、あなたにはこれからステータスを鑑定しせてていただいた後、近くのダンジョンでその能力確かめてみて下さい。」
俺が考え込んでいる間に、どうやらショウワールさんの話が終わったらしい。
ちょうどいい。俺ももう少し、「次元転移」を使ってみたいしな。
それに、確かステータスにはLv.1と書かれていたから、この世界にはレベルも存在するのだろう。
あの時、何故釜瀬が俺を殺したかはわからないけれど、次あいつが殺しに来た時に返り討ちに出来るくらいのレベルは必要だろう。
そう考えた俺は、ショウワールさんと共に、もう一度始めのダンジョンに挑むのだった。
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俺はステータスを鑑定された後、ダンジョンに入っていった。
一瞬、ステータスを見せてしまってよかったかな、と思ったが、もう後の祭りだろう。
また、護衛をつけるという話にもなったが、レベリングの邪魔になるので拒否させてもらった。
一応、俺が転移でダンジョンから逃げることが出来ると知っているからか、しぶしぶ了承してもらった。
ダンジョン内を歩いていると、俺の危機感知が少し弱めに反応した。そして、奥から地球のファンタジー作品でおなじみのゴブリンらしきモンスターが出てきた。
「ぎぃ、ぎぇ」
あっちも俺に気が付いたのか、警戒しながら少しずつ距離をつめてくる。
俺は、「次元転移」でゴブリンの背後に一瞬で移動し、もらった短剣でゴブリンの首を切り落とす。
《次元転移が発動します》
《経験値が入りました。》
《経験値が上限に達しました、レベルが上がります。》
ゴブリンたちを倒し終えると、また天の声が聞こえてきた。
ステータスを確認すると、レベルが1から2に上がっていた。
(おし、この調子で狩り続けるか!)
こうして、俺はレベルを上げていくのだった。
~あとがき~
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