彼女と一緒に異世界転生!? 可愛い彼女と憧れの異世界でイチャラブスローライフ送っちゃっていいんですか!
斜偲泳(ななしの えい)
第1話 なかよ死カップル
「はぁ!?」
「ちょっとぉ!?」
ツッコミどころは山ほどあるが、とにかく俺は股間を隠した。
隣の
理由は簡単、俺達二人は全裸だからだ。
薄桃色の空の下、足元にはマシュマロみたいに柔からな雲が広がっている。
それ以外は何もない、だだっ広い空の上……なのだろうか。
そんな事はどうだっていい!
俺の視線は真白の裸に釘付けだった。
高校一年生、当然童貞、女の子の身体に興味津々のお年頃である。
俺はおかしくない。こんな状況になったら誰だってそうする!
違うと言う奴は嘘つきの偽善者だ! 地獄で閻魔様に舌を抜かれちまえ!
失敬。興奮した。いや、現在進行形で興奮している真っ最中だが。
気をつけないと、相棒が掌から零れてしまう。
勘違いしないで欲しい。見ず知らずの相手なら、俺だってこんな風にガン見はしない。知ってる相手でも同じだ。もしそうなら、バレないようにこっそり見る。
俺には真白の裸をガン見する正当な権利がある!
というのは言い過ぎだろうが、そうしてしまっても情状酌量の余地があると思われる程度には特別な間柄だった。
女にしては長身で、明るい茶髪が少しギャルっぽい、スポーティーな美少女。
そして真白は俺の彼女である。
はっはっは! 羨ましいか? 羨ましいだろ? 俺も俺が羨ましい!
俺と真白が彼氏彼女の関係になったのは一週間前からだが、付き合い自体は長い。
真白とは家が近く、幼稚園の頃から友達で、そのまま小中高と一緒になった。
小学生ぐらいまではお互いに性別など気にせずに親友感覚で遊んでいた。
中学生になっても仲は良かったが、身体が成長するにつれてその関係は少しずつ意味を変えていった。
二年の終わり頃には、俺ははっきりと真白の事が好きなんだと自覚するようになっていた。でも、言えなかった。告白して振られて、今の関係が壊れるくらいなら、親友のままでいいと思ったからだ。
俺の気持ちに真白は気づいていたのだろう。三年生の一年間は、お互いに親友役を演じるようなぎこちなさがあった。
このままでいいのだろうか? 高校生になって、ますます可愛くなっていく真白を見て、俺を悩んだ。だってこんなに可愛いんだ。うかうかしてたら、他の奴に取られちまう!
そんな夏休み前のある日、俺は真白に相談された。
二年の先輩から告白されたのだそうだ。
軽音部の、いかにも軽そうな先輩だ。かっこよくて人気者で、そいつと付き合ってるってだけでステータスになる、そんなタイプ。
今更になって俺は後悔した。なんで真白に告白しなかったんだ? 上手くいくのが万に一つの可能性だとしても、告白しないよりはずっといい!
悔やんで、悔やんで、悔やみ抜いて、俺は意地汚い考えにたどり着いた。
今なら、まだ間に合う。
それは卑怯な考えかもしれないけれど、でも、俺は真白が好きだった。
だから、恋愛相談の最中に告白するというズルをやらかした。
好きだ真白! 俺は、ずっと、お前の事が好きだったんだ!
ロマンチックさの欠片もない、身勝手な告白だった。
遅いよバカ。真白は呆れたようにそう言った。
振られたと思って、俺は絶望した。でも、その通りなのだ。なにもかもが遅すぎた。本当に真白が好きで、彼女と付き合いたいと思うのなら、その為に自分を磨いて努力して、必死に好きだと伝えるべきだったのだ。
悔し涙を流す俺に、真白は言った。
告白してくれるの、ずっと待ってたんだからね?
逆転サヨナラホームラン!
かくして俺達はカップルになり、最高のタイミングで夏休みに突入した。
興奮冷めやらぬ、忘れもしない一週間前の出来事である。
「ちょっと刹那!? ジロジロ見すぎだし!?」
小麦色の肌を真っ赤に染めて、真白が言った。
「真白だって見てるだろ!」
俺と同じかそれ以上に、真白は俺の体に興味津々の様子だった。特に股間の辺りに釘付けで、角度を変えてどうにか相棒を覗こうと画策している。
「いーじゃん別に! 昔は見せてくれてたし、一緒にお風呂入ったりしてたでしょ!」
「幼稚園の頃の話だろ!」
それだって、立ちションしてるのを面白がるから見せただけだ。
幼稚園児ならおかしくないが、高校生じゃアウトだろ。
「ていうかここどこ? あたしらどうなっちゃったの?」
「知らねぇよ! こっちが聞きたいっての!」
お互いに一歩も譲らず裸をガン見しながら、そんな事を言い合っていると。
ぱぁー! っと、謎に神々しい音楽と共に、足元の雲から半裸のお姉さんがにょっきりと生えるように浮き上がってきた。
「だぁ!? なんだ!?」
「ちょ! 見ちゃダメ!」
スケスケの、露出度の高いワンピースを着た外国人のお姉さん。一見してそれと分かるノーブラノーパン。だからだろう、真白が胸を隠している腕を使って俺の目を塞いだ。
嫉妬してるのか? 可愛い奴だぜ……。なんて思ったのは一瞬で、この手がさっきまで真白のスレンダーおっぱいに触れていた事を思い出して俺は興奮した。真白の腕からは、ほんのりとミルクみたいに甘い香りが漂っている。
「はぁん。なんて初々しいカップルなんでしょ。お姉さん、妬いちゃいますぅ♪」
謎の綺麗なお姉さんは、胸焼けしそうな程甘ったるい声でそう言った。
「あなた、誰ですか? っていうかここ、どこですか!?」
どうやら真白は、この謎の綺麗なお姉さんに対抗心を燃やしているらしい。
「ここはあの世です」
「「はぁ!?」」
「あの世って……」
「あたし達、死んじゃったって事!?」
「そうですよぉ? 暴走トラックが突っ込んできて、二人仲良くかばい合って、ドッカーン! です」
それを聞いて、俺の目を隠す真白の腕がだらりと下がった。その隙に俺は真白の裸をガン見した。初めてみる真白のスレンダーおっぱいに、俺は感動した。大きさなんか関係ない! 真白の胸というだけで、それは今まで出会ったどんな秘宝よりも魅力的で輝いて見えた。あぁ、俺の女神よ! お前はどうしてそんなに可愛いんだ?
「ちょ! 見ないでよ!?」
慌てて真白が胸を抱える。
時間差で、俺は全てを思い出した。
夏休み初日、俺達ははじめてのデートに繰り出した。手探りで、何をしたらいいのかも分からない、ぎこちないデート。でも、ただ二人でいるだけで俺は幸せだった。真白を好きな気持ちを隠さなくていい。そして真白も、同じように俺を好いてくれている。ただそれだけで俺は満ち足りて、多分真白もそうなのだった。
夕暮れ時の帰り道、俺達はどちらともなく手を繋いだ。小学校低学年の頃以来の懐かしい感触。でも、全然違う感触。柔らかで、温かくて、安心して、ちょっとムラムラする、真白の手。
俺達は理由もなくロマンチックな気分になり、見つめ合って、気が付いたら顔が近づいていた。
そこに突然すさまじい勢いでトラックが飛び込んできた。
俺は咄嗟に真白を突き飛ばそうとして、真白も俺を突き飛ばそうとした。
なにやってんだ!?
刹那こそ早く逃げてよ!?
コントみたいな事をやっている内に、俺達は二人仲良くミンチになってしまったらしい。
「……嘘だろ。俺達、死んだのかよ……ごめん真白! 助けてやれなくて!」
「ううん。あたしこそごめん。刹那の事、助けてあげられなくて……」
「なに言ってんだ! 真白は女だし、可愛いし、性格もいいし人気者だし、真白が助かるべきだったんだよ!」
「はぁ? なにそれ! 命に男も女も関係ないじゃん! あたしは刹那に助かって欲しかったし!」
「俺は真白を助けたかったよ!」
「それで二人とも死んじゃったら意味ないじゃん!?」
二人して睨み合う。俺達は仲がいい分、喧嘩する事も多いのだった。
そんな俺達のすぐ横で、謎の女はすぅ~~~~~! っと、幸せそうな顔で深呼吸をしている。
「……てか、なんなんすかあんた」
「お姉さんは愛の女神でぇ~すぅ♪」
「め、女神ぃ!?」
ギョッとして真白が叫ぶ。だって女神だ。イカレてるだろ?
けど、同時に俺は納得した。そうでもなきゃ、この妙な状況は説明できない。
「で、愛の女神様が、俺達になんの用なんすか?」
「きっとあれだよ! 異世界転生!」
「んなアホな……」
俺は陰キャで真白は陽キャ。だけど二人ともオタクだった。子供の頃から俺とつるんでいるせいで、真白が汚染されたと言った方が正しいのだろう。だから真白も、その手の話題には理解があった。
「大正解ですぅ。お姉さんは愛の女神だけあって、愛とか恋とか惚気とかが大々々好物なんですよぉ。お二人の甘酸っぱくもじれったい恋模様なんかもう最高のおやつでぇ。お姉さん的にはぁ、もっとお二人のイチャイチャラブラブを味合わせて欲しいのでぇ、二人仲良く異世界転生して貰う事にしましたぁ」
「うぉおおお! マジかよ!?」
「やったじゃん! また一緒に生きられるよ!」
嬉しくて、二人して恥ずかしい所を隠すのも忘れてがしっと手を握り合う。
そして、すぐに冷静になってあそこを隠した。
「で、どんな世界なんですか?」
真白が聞いた。
「お姉さんがお友達と一緒に趣味で管理してる世界です。そっちはお遊びで作った世界なので記憶とか年齢とかそのままにしちゃっても怒られないんですよぉ」
「お遊びの世界って……大丈夫なのかよ……」
「なんだっていいでしょ! もう一度刹那と一緒に生きられるんなら、あたしはどんな世界だって文句ないもん!」
真白の言葉に、俺は不覚にも泣きそうになった。
同時に、喜びが込み上げる。
また真白と一緒に生きられる。
しかも、可愛い彼女と一緒に異世界転生だ!
こんな夢みたいな話があるか?
勿論、俺が思うような異世界ではないかもしれないが。
それこそ、真白と一緒ならどーだっていい!
「……それもそうだな。俺も、真白がいるならどんな世界だって望む所だ。このまま死んじまうよりはずっといいぜ」
その言葉に涙ぐむ真白の顔を見て、俺は決意する。
そこがどんな世界であれ、絶対に真白を幸せにしてみせると。
「くぅ~~~! その調子で、次の世界でも沢山惚気ていちゃいちゃしてくださいねぇ! それじゃあ、しゅっぱ~つ!」
心地よさそうに身震いすると、愛の女神様は元気いっぱいに右手を上げた。
途端に足元の雲が消えて、俺達は猛スピードで落下する。
「うわああああああああああ!?」
「きゃああああああああ!?」
どちらともなく手を伸ばし、俺達は裸のまま支え合った。
地上に目を向ければ、広大な草原とファンタジックな街並みが急接近している。
勿論俺達は、お互いの裸が気になってそれどころではなかったが。
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