勃勃13 長安侵攻 上

赫連勃勃かくれんぼつぼつの見立通り、劉裕りゅうゆうはあっさりと後秦こうしんを撃滅、長安ちょうあん入りした。それからすぐ赫連勃勃に宛てて和親の使者を立て、兄弟の契りを求めた。赫連勃勃は皇甫徽こうほきに返答を起草させ、密かに暗記。劉裕の使者を召し出すと、暗記した内容を口頭で伝え、記録させる。書き留めさせた内容を返答とさせた。


劉裕は返答文を見て只者ではないと感じ、かつ、使者がその卓抜した容貌、武威についても言及すると、「これは敵わぬ」と嘆じた。赫連勃勃がいちど安定あんていから統万城とうまんじょうに引き返すと、劉裕は子の劉義真りゅうぎしんに長安を任せ、東に戻っていった。


劉裕の長安撤退を聞き、赫連勃勃は大喜び。王買徳おうばいとくに問う。


「長安を獲るぞ! 策を言え!」


王買徳は答える。


「劉裕の後秦攻略は乱をもって乱を制するたぐいのもの。徳でもって民を救わんとする意図はございません。確かに関中は守りに適した地。しかしそこを未熟な幼子に守らせるとは、およそ軍略の気配を感じません。やつが慌てて引き返したのも、簒奪を慌てて進めねばならなくなったに過ぎますまい。すなわち、中原ちゅうげん攻略になぞかかずらっておれなくなったのです。

 しかるに陛下は天命に従い逆賊を討たれ、その道義心は神霊にも市井にも広く伝わるところ。民草は陛下が義の旗を振り決起なさることを、今や遅しと待ち望んでおります。

 青泥せいでい上洛じょうらくは敵兵が南に抜けるに当たっての要地。遊撃の兵を配し、早々に行き来を遮断なされませ。その後に潼關どうかんを閉ざし、洛陽らくようへと至る陸路水路を塞いでしまうのです。

 そうして陛下が長安に檄を発され恩澤を約束なされましたならば、三輔の父老はみな歓迎の酒を陛下に差し出して参りましょう。劉義真はひとり空の長安城に座すより他なく、逃れることもできぬまま、十日もすれば自らの顔に袋をかぶり、その身に縄を打ち、陛下のもとに降伏して参りましょう。すなわち兵の刃を血に濡らすことなく、戦なくして関中の平定が叶うのです」


赫連勃勃はこの献策を受け入れ、子の赫連璝かくれんかいに二万騎を与えて前鋒を務めさせ、赫連昌かくれんしょうには潼關を封鎖させ、王買德には青泥を封じるよう命じた。その上で赫連勃勃も本隊を率い、南下した。




俄而劉裕滅泓,入于長安,遣使遺勃勃書,請通和好,約為兄弟。勃勃命其中書侍郎皇甫徽為文而陰誦之,召裕使前,口授舍人為書,封以答裕。裕覽其文而奇之,使者又言勃勃容儀瑰偉,英武絕人。裕歎曰:「吾所不如也!」既而勃勃還統萬,裕留子義真鎮長安而還。勃勃聞之,大悅,謂王買德曰:「朕將進圖長安,卿試言取之方略。」買德曰:「劉裕滅秦,所謂以亂平亂,未有德政以濟蒼生。關中形勝之地,而以弱才小兒守之,非經遠之規也。狼狽而返者,欲速成篡事耳,無暇有意于中原。陛下以順伐逆,義貫幽顯,百姓以君命望陛下義旗之至,以日為歲矣。青泥、上洛,南師之沖要,宜置遊兵斷其去來之路。然後杜潼關,塞崤、陝,絕其水陸之道。陛下聲檄長安,申布恩澤,三輔父老皆壺漿以迎王師矣。義真獨坐空城,逃竄無所,一旬之間必面縛麾下,所謂兵不血刃,不戰而自定也。」勃勃善之,以子璝都督前鋒諸軍事,領撫軍大將軍,率騎二萬南伐長安,前將軍赫連昌屯兵潼關,以買德為撫軍右長史,南斷青泥,勃勃率大軍繼發。


(晋書130-13_政事)




王買徳さん「やるなよ、殺しとかやるなよ」

赫連勃勃さん「おっせやな」


なお

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