勃勃8  嶺北戦記 4

劉勃勃りゅうぼつぼつは攻め手を緩めない。騎兵三万で安定あんてい、つまり長安ちょうあんの喉元を攻撃。迎撃に出てきた楊佛嵩ようふつすう青石せいせきの北にある平原で戦い、打ち破る。降伏してきた将兵は四万五千、武装した馬を獲得すること二万に及んだ。更に侵攻、今度は東郷とうごう党智隆とうちりゅうとぶつかり、降伏させる。党智隆を光祿勳に任じ、その配下にあった三千世帯あまりを貳城じじょうに移した。


この頃、後秦こうしんの鎮北将軍(梁国児りょうこくじか?)の幹部であった王買德おうばいとくが劉勃勃のもとに亡命してきた。劉勃勃は王買德に言う。


「オレはかのの末裔として、代々幽州ゆうしゅう漠北ばくほくの地に居を構えてきた! 偉大なる祖先は常にかんと戦ってこられたが、近世に及んで他者の風下に甘んじてきた! オレもまた力及ばず国を滅ぼし、流浪の身にすらなってしまった! しかし天運巡り、いま大いなる禹の事業を再興せんとしている! キサマならどう動く!」


王買德は答える。


「大いなるしんが天下の手綱を手放し、祭具は南方に流出いたしました。中原では群雄がしのぎを削り合い、人々は新たなる天下の主はいずこ、と求めております。しかれど陛下が禹王よりの遺徳を継承なされ、その徳が中原の暗きを照らし、その武が漢の高帝を越え、その知略が魏の武帝を超えておられながらも、なおも天のお導きに沿えねば大業は成し遂げられますまい。

 いま、しんの政は衰弱しつつありますが、なおも籓鎮の守りは堅固。どうかいまは力を蓄え時をお待ちになり、天運が明らかとなったところで動き始められますよう深くおん願い奉ります」


その言葉は劉勃勃の意にかなうものであった。そこで王買徳を軍師中郎將に任じた。




其年,勃勃率騎三萬攻安定,與姚興將楊佛嵩戰于青石北原,敗之,降其眾四萬五千,獲戎馬二萬匹。進攻姚興將党智隆於東鄉,降之,署智隆光祿勳,徙其三千餘戶於貳城。姚興鎮北參軍王買德來奔。勃勃謂買德曰:「朕大禹之後,世居幽、朔。祖宗重暉,常與漢、魏為敵國。中世不競,受制於人。逮朕不肖,不能紹隆先構,國破家亡,流離漂虜。今將應運而興,復大禹之業,卿以為何如?」買德曰:「自皇晉失統,神器南移,群雄嶽峙,人懷問鼎,況陛下奕葉載德,重光朔野,神武超於漢皇,聖略邁于魏祖,而不於天啟之機建成大業乎!今秦政雖衰,籓鎮猶固,深願蓄力待時,詳而後舉。」勃勃善之,拜軍師中郎將。


(晋書130-8_暁壮)




王買徳登場! 後秦載記に載る鎮北が梁国児しかいないんですが、もしかしたらその前任かもしれないんですよね。まー詳細不明としか言えません。それにしても貮城と三城の違いが気になります。改名とかしたんでしょうかね。ぼつぼっつぁんのほう眺めると三城→貮城だったっぽいけど、ぬぬぬ。

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