三十七話「嘘告女の面を剥がす」

*↑「つら」と「めん」どちらか好きな方で読んでもらって構いません。

*微グロ(?)注意


 「次ぃ~~~」



 そう呟きながら、シュートは教室をぐるりと見回す。その際クラスメイトのほとんどが彼と目を合わせないよう必死に逸らす。シュートはしばらく見回したのち、一点の箇所に目を留める。 

 隅っこで震えている女子生徒…板倉ねねである。彼女もシュートの復讐対象に入っている。現実世界での先週、シュートに嘘告白をして騙して心を弄んだことに加え、彼がストーカー犯であるという濡れ衣を着せて陥れたりもした。


 「中里たちと一緒なって俺をどん底に叩き落として嘲笑った、最低の女狐が…っ」


 ぎりり…と怒りで歯を軋ませながら板倉の前に立つと、彼女はびくりと震わせて恐る恐るシュートを見上げる。


 「あ、あの………その……」

 「とりあえずまず最初にさ、お前の口からあのふざけた話が嘘だってこと明かせよ」

 「ふ、ふざけた話って……?」

 「………どこまで、とぼけるつもりだ……っ」


 怒りで顔をしかめたシュートは近くにあった机を蹴り上げる。机は宙を舞って誰もいないところへ落下する。その音に板倉がびくりとする中、シュートから声を大にしてあの忌まわしい件について話す。


 「何が、俺がお前のことストーカーしていた、だよ!?俺は一度だってそんな陰湿行為したことねーよ!よくも、中里たちとグルになってそんな噓八百の事案を学校中に広めやがって!先週の金曜から俺は無実の罪を着せられて悪者、ストーカー野郎扱いの誹りを受け続けてんだぞ!?」

 「ひっ……、ど、怒鳴らないでよぉ……!」

 「はぁ……?」


 偽りの罪を被せられて激怒するシュートに対し、板倉はわざとらしく怯えて涙声で喋りだす。この期に及んでかよわい女を見せる板倉に、シュートの怒り・憎悪のボルテージはさらに増していく。


 「まず、このクラス全員に、お前の口から正直に話せ。あれは自分たちがでっち上げた嘘だったって。俺が想像してた以上に馬鹿なこいつらやこの学校のほとんどの連中は、お前らのクソ下らなくて最低な嘘をまんまと信じてやがるんだぞ!?」


 まぁ半分以上はこのクズどもの悪意に進んで乗っかったんだろうな、とシュートは心の中でさらに毒づく。


 「う、うぅ…分かったわよ。

 みんな聞いて、先週私たちが流した、三ツ木君にストーカーされてたって話。あれは私たちがつくった嘘なの。裏掲示板とかに書いてることもほぼ全部嘘だったの」

 「ほぼ?他に書いたことって何?」

 「そ、それは……三ツ木君が私に告白したこ――」

 「それも全く違ぇだろ!お前が俺を呼びだして、告白してきたんだろうが!しかも、嘘の告白だった!」

 「ひぅう……!」


 怒鳴ると板倉はまたわざとらしく怖がって縮こまる。その演技くさい態度を見たシュートは確信する。こいつ全然反省なんかしていない、と。

 一方、板倉自身から明かされた真実を聞いたクラスメイトたちは驚きを含んだざわめきを漏らす。あの学年人気ナンバーワン女子である板倉ねねが嘘の告白で騙したり嘘の罪を被せて人を陥れようとしていたことに誰もが衝撃を受けていた。


 「で、でもさ……今の話も三ツ木に脅されてそう言ってるだけなんじゃ……」

 「あー、言えてるかも」


 ポツリとこぼれた誰かの発言を聞いたシュートは声が漏れた方を睨みつける。


 「今、ふざけたことほざいた奴、誰だ?」


 全員の心胆を震わせる程に響いた怒声に、教室内はシーンと静まり返る。シュートのどす黒い怒りに当てられて誰も何も言えないでいる。


 「………いいさ。本人が違うって誤解を解いてるのにそうやって曲解しようとする馬鹿どもに、何言っても通用しないだろうし。腹いせに後でそいつらを壊せばいいか」


 シュートの言葉に数名が息を詰まらせる。そんな中、板倉は目に涙を溜めながらシュートに謝罪の言葉を告げる。


 「み、三ツ木君!本当にごめんなさい!軽い気持ちで酷く傷つけてしまって、すごく反省してます!」

 「後原と同じかよ?軽い気持ちとか魔が差したとかのやつ。先週お前に言われたこと忘れてねーからな?告白を本気にした俺を馬鹿すぎるとか気持ち悪いとか言って……」

 「だ、だから…ごめんなさいって……」

 「俺を虐められっ子の底辺男ってゴミみたいに見下して、」

 「ご、ごめんって………」

 「ただ面白いとかそんな理由で、悪いことしていない俺の気持ちをおもちゃみたいに弄んで楽しんで……」

 「~~~っ!う、うるさいのよ!さっきから!!」


 板倉は我慢の限界とばかりにシャウトした。紅実たちはギョッとして彼女の方を見る。シュートは不愉快げに板倉を睨みつける。


 「さ、さっきから前に言われたことを掘り返して、何なのよ!私ちゃんと謝ったじゃない!後原とかだってそう!あいつもちゃんと謝ってたのに、あんたは容赦無くズタボロになるまで痛めつけて!ちゃんと謝ったんだからもういいでしょ!?」

 「………何が、もういいって?」

 「騙してごめんなさい、嘘を広めてしまってごめんなさいって、一応加害者の私がそう謝罪して誤解も解いてあげたんだから、もう終わりでいいってことにすればいいじゃない!」

 「だからさぁ、加害者側のお前らが、何勝手に終わらそうとしてやが……」


 板倉の逆切れはさらにヒートアップする。


 「大体何今さら暴れ出してんのよ!?だいぶ前から虐められてたんでしょ?だったらその時にちゃんとやり返してれば、こんなことにならなかったんじゃない!

 あんたが騙されたり虐められたりするようになったのも、自分で解決できないあんたが悪いのよッ!」

 「……………」

 「何で私がこんな目に遭わないといけないの!?私はあんたなんかとは違うんだから!可愛くてキレイで、何もしなくてもみんな私を讃えてくれる。あんたなんかよりもずっと優れてるんだからぁ!!」


 それだけ言うと板倉は叫ぶのを止めて肩で息をする。対するシュートは無言のまま、彼女に近づいていく。しまった言い過ぎた、と板倉は今さら後悔する。これでは自分も中里たちと同じ目に遭わされる…それをひどく恐れた板倉は、また媚びる態度をとりだす

 

 

 「ご、ごめんなさい!カッとなって言い過ぎちゃって…。で、でも相手がちゃんと反省してるなら、過去のことは水に流していい、っていうか……」


 プチン シュートの中で糸が切れた感覚がした。


 「 あ”? 」


 瞬間、シュートの目から感情が消えた。氷のような冷たい瞳で板倉を睥睨する。先程までの激しい怒りとは違い、どこまでも底冷えたもので、虚無すら感じられる。


 「……………お前みたいに、平気で嘘告を実行して、平気で人を騙して嘲笑うような女に告られて、少しでもときめいてしまった自分を心底恥じてるよ。

 まあそれはそれとして……詐欺とかデスゲームとかを題材にした映画やドラマの話でさ、“騙された奴が悪いんだ”ってセリフをよく聞くんだけどさぁ……」


 一転して静かに話し始めるシュートが、板倉や紅実たちには却って気味悪く・怖く感じられる。

 

 「現実だとやっぱり、人を騙す奴の方がどう考えても悪いだろうが!それも悪意でそうする奴なんかはさぁ!」


 一瞬で板倉の目の前に移動したシュートは、彼女の腹部を見据えて拳を構える。


 (大体……この辺りかな――)


 ゴッッ 「あ……ぐ、ぅ………!?」


 板倉の子宮が位置する腹部に容赦ないパンチをぶつけてめり込ませる。板倉は口から体液を盛大に吐いて悶絶する。


 「あ……かひっ、お、お腹……あ、あああああ……っ」

 「これでお前は一生、子どもが産めない体になったかもな」


 シュートの的確な腹パンで、板倉の子宮は破裂して機能が死んだ。女としての身体機能の一部を壊した。しかしシュートの彼女への暴力はまだ続く。


 ザク……ッ 「い”……!?え、え?い、痛いぃいい……!!」


 続いて貫き手を板倉の下顎部分に深く突き刺す。その部分から血が滴り落ちて、板倉は痛みに苦しむ。


 「や、やだ……痛い!な、何するつもりぃ……!?」

 「さっきから媚びる態度とか、泣き落として許しをもらおうとするとか、かわい子ぶった声とか、何もかもが目障りで、すげぇムカつくんだよ…!全部心からの態度と言葉じゃねーのが、今なら余裕で分かるし。

 とりあえずあれだ……今後二度と、その無駄に恵まれた顔と体を使って人を騙したり色々悪いことができないよう――」


 シュートはここで、あの憎悪を孕んだ鬼の形相で笑ってみせる。

 そして―――



 「 その嘘と悪にまみれた分厚い面を剥がしてやるよ――― 」



 スキル「怪力」を発動して貫き手状態の左手に超人的な力を発揮した――



 ピッ、ベリィイイ!! 



 「~~~~~!?!?ぎゃあああああ”あ”あ”あ”あ”っっ!!」


 分厚い皮を勢いよくめくるような音が響いた直後、板倉の口から彼女が今まで生きてきた中で体験した全ての苦痛をいっぺんに味わったかのような絶叫が、教室中に響き渡った。


 「遊び気分で人をどん底に陥れるような嘘を吐いたり、無実の罪を悪意で被せたりするような、最低のクズで存在自体がブスの、ゲロ糞女が。罰としてお前の無駄に恵まれてる顔を、奪ってやる」


べちゃっと、シュートはたった今剥がしたもの…板倉の顔の皮を床に叩き捨てる。綺麗に剥がされたその顔の皮はリアルな顔面パックのよう。目、鼻、口、眉毛、睫毛まで全てくっきりと残っている。

 そして皮が無くなった板倉の顔からは、血がボタボタ流れ落ちており、まるで人体模型の様相である。


 「あ~~~ははははは!嘘偽りの無い顔になったじゃねーか!?その顔ならもう嘘偽りない自分をちゃんとみせられるんじゃねーか?人を平気で貶めるようなお前に、ぴったりの面だぜ?良かったなぁ…くく、くはははははははは!!」

「う………あああああああ…!!こんな………酷い、酷いよ……痛っ!痛い、痛いよぉ………」


 激痛に加えて醜くなった自分の顔を晒された板倉は声を上げて涙を流す。しかしその涙が剥き出しになった顔に沁みて激痛を呼んでさらに苦しむことに。絶え間無い地獄の痛みに板倉は声にならない悲鳴を上げ続けるのだった。


 「う、わぁ……」「ひ、ひでぇ…!」「う、おぇ……無理、吐きそう」「お、俺も……」「ひ、人の皮が、あああああ……!」「あんなの、あんまりだよぉ……」


 女として死んだ板倉ねねの悲惨な姿を目にしたクラスメイトたちは、目を逸らし(以下略)


 「ああそうだ。先週こいつの仲間に、俺がストーカー行為をしてるよう見せかけた写真や動画を撮らせてたんだっけ。そいつは確か………いた」


 シュートはクラスメイトの群れをきょろきょろ見回して、一人の女子生徒(花柄の髪飾りをおでこ付近に付けている)を発見して、睨みつける。睨まれた彼女は顔を蒼白させて全身を硬直させる。すぐさまに彼女のもとに立ったシュートは脅すように話しかける。


 「先週俺を撮った時に使った携帯電話を出せよ」


 板倉の仲間の女子生徒は脂汗を流しながらポケットから携帯電話を取り出す。シュートは咄嗟にそれを奪い取って床に叩きつけて、さらに足でそれを粉々に踏み砕くのだった。


 「現物はこれで消滅。それで、お前が撮影しやがったあのデータ、パソコンとかに保存してたり裏掲示板とやらにも出してたんだよなぁ?今すぐ消せ。今日中に消してなかったら、お前もあの嘘告クソ女の仲間入りになるぞ」


 板倉に指を差して、さらに女子生徒の髪を乱暴に掴みながら殺意を込めた声で脅す。シュートの殺意がこもった「威嚇」に当てられた女子生徒は泡を吹いて気絶した。


 「ふぅ…。復讐すべきクズどもは、これであらかた潰せたかな。いや~~~最高の気分だわ!自分をどん底に落とした人間のクズどもを、自分の手でぐちゃぐちゃに壊すって、めちゃくちゃ気分爽快!これが最近よく聞く“ざまぁ”ってやつ?」


 シュートは心底楽しそうに笑い続ける。彼が笑いながら立っている場所はまさに惨状を極めていた。シュートの復讐で壊されたクラスメイトが五人以上。その五人とも筆舌に尽くしがたいレベルの損傷を負っており、放っておくと死に至るおそれすらある。

 そんな猟奇的な暴行を何人にも強いたにも関わらず楽しそうに笑っているシュートを、教室にいる生徒たちや担任誰もが恐怖し、戦慄し、気味悪がっていた。シュートは今も、顔の皮を剥がされて激痛に苦しんでいる板倉を見て笑っている。

 

 そんな板倉ねねに、一人の女子生徒が駆け寄っていく…紅実である。彼女はソフト生地のタオルを取り出して、板倉の顔に当てて血を押さえはじめる。クラスメイトたちにタオルやハンカチを持ってくるよう頼み、借りたそれらも使って板倉の顔を外気に触れないようにした。

 そして、自分に目を向けているシュートに、悲痛な面持ちで呼び掛けるのだった。


「シュート君、もう止めてほしい……」







*顔の皮を綺麗に丸ごと引っぺがす描写、元ネタがあります。何か分かるかな?ヒント、そのシーンはアニメにもなりました。

*作品フォロワー数5000人超えました!ありがとうございます!(2022.6.15)

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