隣の席のユミちゃん
ひよひよひよひよ
隣の席のユミちゃん
隣の席のユミちゃんは勉強ができない。
ユミちゃんに頼まれて休み時間の間、勉強を教えてあげることになった。ユミちゃんは理解するのが早かったからぼくも教えていて楽しかった。
ユミちゃんは勉強ができないけれどゲームはとてもうまいらしい。僕はゲームが苦手で、兄からもらったのにクリアできていないゲームがたくさんあったから、ユミちゃんに教えてもらうことになった。
学校で勉強を教える時も放課後公園でゲームを教えてもらう時も僕はとても楽しかった。ユミちゃんもきっとそうだっただろう。
中学生になった。僕とユミちゃんは同じ学校に入学した。ユミちゃんはテニス部に入ったけど僕は運動が苦手だから部活には入らなかった。学校が終わるとすぐに部活が始まったからユミちゃんと話す時間はとても短くなったけど、今でも休み時間にユミちゃんに勉強を教えることがある。
ある日ユミちゃんは言った。
「あなたはすごく頭が良いからきっとすごく頭のいい高校に行くんだね。」
僕は高校のことなんてこれっぽっちも考えていなかったからなんて返事をすればいいかわからなかった。ユミちゃんは言った
「がんばってね」
その時のユミちゃんの目がとても印象的だった。
僕は勉強を頑張ることにした。
三年生になった。ユミちゃんと受験勉強をしようとしたら、受験のために塾に入ったからあなたは自分の勉強をしてと断られた。
僕は地元から少し離れた県内で一番頭のいい高校に入学した。
高校は寮制だった。連絡先を交換していなかったこともあって、ユミちゃんとは全く会わなくなってしまった。1年生の冬休み、帰省中に近所の本屋さんに行ったらユミちゃんに会った。ユミちゃんは中学の時とあまり変わっていなかったが僕と会ったことが意外だったのかその大きな目をパチパチさせていたのが印象的だった。お互いの高校の話をした。ユミちゃんはまたテニス部に入ったらしい。
中学の時何回か行ったファミレスに誘おうかと思ったら、ユミちゃんが腕時計を気にしながら言った。
「この後待ち合わせがあるから。今日はこの辺で」
ユミちゃんとラインを交換して別れた。
2年生の夏、帰省中に近所のコンビニに行ったら、中学の同級生にあった。たしかユミちゃんと同じ高校に入学した彼は3年生の時のクラスメイトでそれなりに仲が良かったため、僕から話しかけた。
互いの高校のことや最近あったことを話していたら彼が思い出したように言った。
「中学の時お前が仲良くしてたユミって子、最近彼氏できたらしいけどしってた?」
僕は何も知らなかった。彼にいろいろ聞こうとしたが、申し訳なさそうに詳しくは知らないと言われた。
家に帰ってからユミちゃんにラインをした。自分は今帰省しているから、近いうちに食事にでも行かないかという内容だ。悩んだが直接聞くのが一番早いだろうと思ったのだ。ラインが返ってきたのは夕方だった。
3日後、中学の時何回か二人で行ったファミレスでユミちゃんと会った。ユミちゃんは髪を伸ばしていたが、ほかはあまり変わっていなかった。互いの最近の話にひと段落ついたところで僕は冗談めかしながら聞いた。
「そういえば最近彼氏ができたって聞いたんだけど、本当?」
一瞬びっくりした顔をしてからユミちゃんは言った。
「誰かからきいたの?まあ、彼氏ができたのは本当だよ。」
僕は目の前が真っ暗になるような気分だった。焦りをユミちゃんに悟られないように聞きたくもないことを聞いた
「えー意外。いつから付き合っているの?」
ユミちゃんは照れくさそうにしながら答えた。
「付き合い始めたのは最近だけど、彼にあったのは中3の時なんだ。同じ塾の同じクラスの隣の席で志望校も同じだったから、中学は違ったけどちょくちょく話していたんだ。あなたほどじゃないけど彼も勉強を教えるのが上手で結構お世話になっていたんだよね。高校に合格した時ご飯に誘われて、これからも付き合いがありそうだしってことでokしたら、そこがなんかすっごい高そうなレストランで、しかも食事もほどほどに告白されちゃったんだよ。当時は私にそんな気はなかったから断って友達としてこれからもよろしくって言ったんだけど。でも彼はあきらめきれなかったらしくて高校になってからもしょっちゅうデートに誘われて、でそんな一途な感じとかたまに見せる優しい感じがなんかいいなぁって思って告白を受けちゃったんだ。だまっててごめんね。」
後半の話はほとんど耳に入らなかった。なんだかだまされたような気持になってユミちゃんのラインをブロックしてしまった。
高校生の間はもう2度とユミちゃんに会うことはなかった。
大学生になった。県外の国立大学に入学した。受験勉強は大変だったけど無事合格できてよかった。大学生になって時間が大量に余るようになったから読書をするようになった。読書は自分の世界を広げてくれるし、なんだか心が研ぎ澄まされていくような感じがするから好きだ。
実験の講義で女の子とペアを組んだ。彼女は要領が悪かったため、実験の講義でもそれ以外の講義でも手を貸すことがあったが、そのうちユミちゃんを思い出すようになったため、彼女とは距離を置くことにした。
帰省中に本屋に行ったらユミちゃんを見かけた。ユミちゃんは髪を茶色に染めていたけど、ほかはあまり変わっていなかった。まともに話せる気がしなかったから、逃げるように家に帰った。
成人式の招待が来たが、友達もほとんど覚えていないから、行かなかった。
大学を卒業した。
社会人になった。それなりに良い企業に就職できた。実家の両親が心配だったから、実家に帰り、実家から通勤することにした。
お金がたまってきたため、車を買うことにした。車好きの兄にいろいろと相談してなかなか満足のいく車を買うことができた。最近は車に乗っていろいろなところにドライブに行くのが趣味になっている。
職場の先輩に風俗に誘われた。興味はあったため、行くことにした。相手の女の子は大きな目が印象的な子だった。なかなか良かったから、また行きたい。最近は色々な人に誘われて釣りとか映画とか今までやったことのなかったことを体験することが多い。どれも楽しい。特に映画はそれ以来自分一人でも見に行くくらいハマった。
職場の後輩の女の子に食事に誘われた。女の子とサシで食事をするのは10数年ぶりだったからかなり緊張した。それからも何度か食事やデートをして彼女と付き合うことになった。それからしばらくして、実家を出て彼女と同棲を始めた。
休日、実家の用事のついでに近所の本屋に行ったら、ユミちゃんに会った。ユミちゃんは茶髪から黒髪に戻っていたけど、ほかはあまり変わっていなかった。積もる話もあったから、なじみのファミレスに行くことになった。
ユミちゃんは結局高3になってすぐにあの男と別れたらしい。理由は恥ずかしいからと教えてくれなかった。それから1浪して大学に行き、今は大学院生らしい。自分が今彼女と同棲していると言ったら少し驚いていた。後に用事があったため、話もほどほどにユミちゃんとは別れた。
それから2度とユミちゃんに会うことはなかった。
隣の席のユミちゃん ひよひよひよひよ @Hiyokoooo
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