転職繰り返して何が悪い

山城 潤

第1話 それを私は「暗黒」と呼ぶ

―小学校時代―


「根暗でド真面目で、ぶっさいくで毎日同じ服着てる奴、だぁ~れだ?」

「はいはい!中川!!」

「ハイ、正解~!」


「じゃぁ次な、友達がいなくて、休み時間も昼休み時間もずっと本呼んでる奴、だぁ~れだ?」

「はい!中川!」

「ハイ、正解~!さすが石田ぁ!」教室中が笑いに包まれる。


私はその場にいるのが苦しくなり席を立ち、図書室へ向かった。


はぁ・・・。

溜息をついて、すぐそばにあった椅子に座り込んだ。

机の上で顔をうずめ、泣きそうになるのを必死で堪えた。


キーンコーンカーンコーン・・


チャイムの音が聞こえて、あわてて椅子から立ち上がり、教室へ向かった。


「遅いぞ、中川!」

「すみません。」


担任に怒られた。その様子を周りは面白そうにクスクス笑って見ていた。


―中学校時代―


中学生になった。

いじめをしてくる男子達とは違う学校だった。

だが、なぜだろう。私の暗い性格のせいだろうか。いじめはなくとも、友達は全く出来なかった。


バスに乗って社会科見学に行く時も、周りはすぐに隣に座る友達を見つけてはしゃいでいるのに、私はいつも賑やかな周りから一人残される。そして余った一人といつも隣同士。

悲しいが、現実を受け止めるしかなかった。


私に話しかけてくる女子もいなければ、自分から話しかける勇気も無い。

虐めと言う虐めは無かったが、成績も悪く、根暗な性格は相変わらずだった。


昔同様、「学校行きたくない」と、毎日そればかり考えていた。

友達がいなければ、無論、話す相手もいない。


本当につまらない3年間だった。

結局、中学でも友達は1人も出来なかった。


―高校生時代―


高校生になった。

私はお年頃の年齢となり、外見を気にするようになった。

今までずっとメガネだったが、コンタクトにした。少しでも綺麗になりたいと思うようになったからだ。


長かった髪の毛も肩ぐらいに切り、心機一転、楽しい思い出を1個でも作りたいと思って入学した。


だが、この暗くて物静かな性格。

始めは話し掛けられる事もあったが、次第に誰も近寄って来なくなった。

私の話しが面白くないのだろう。もしくは、根暗なオーラが出ている・・?

いや。それは無いか。どんどん人が離れて行くのは気付いていた。だが、私から話し掛ける勇気は無かった。


このまま私の学生生活も終わりかあ。


漫画のように、イケメンと恋愛をする。声を掛けられる。

図書室で本を取ろうとしたら、手と手がぶつかる。なぁんて、夢のまた夢。

っていうか、ドラマか漫画の中の話しで、現実に起こるはずが無い!


いや、もし自分が美人で、学校の人気者で、凄くモテていたら、状況は全く違っていたかもしれない。周りにちやほらされ、友達も大勢いて、充実した学校生活を過ごせていたかもしれない。


そんなくだらない妄想を時々していた。


そうして高校三年間も、結局惨敗。

友達と呼べる友達は1人も出来ずに卒業式を迎えた。

きっと生涯、誰1人として、私の名前を思い出す人はいないであろう。


もらった卒業アルバムと証書を手に持ち、母と一緒に自宅へ帰った。


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