第26話 さくらがやってきた

お母さんは、突然現れた桜に少し驚いたものの、子鬼のともだちなのかと普通に受け入れて、おやつの用意まで始めた。一体どんな神経なのか?少し頭の中を覗いてみたいところだ。


 「お母さん、おやつより子鬼にも桜にも聞きたいことが、たくさんあるんだから。」

 「あら、何か食べながらの方がリラックスして、話せるわよ。ね~。桜ちゃん。」

 「はい。ママン。」

 「あら。ママンって言ってくれたわ。かわいいすぎ~。」

 「そんなことより~。」


 私の質問を無視して、どら焼きにかぶりつく子鬼と桜。なんだか、前に子鬼と河童さんがこの家に住むことになった時と似ている…。また、増えるのだろうか?わが家が仙界1丁目化している…。


 「ママン。さくら、ここにすんでもいい?」

 「ん~桜ちゃんのママは、どうするの?」

 「おかあさんは、りゅうおうさまのところにいるの。しゅぎょうやりなおすんだって。だから、さくらひとりなの。ここにいったら、ゆりちゃんがみてくれるって。」

 「えーーーーー!!なんですと?」


 卒倒しそうな私をお母さんが押しのけて、桜に質問する。


 「えっとね。桜ちゃん。」

 「はい。ママン。」

 「ゆりちゃんって誰?」


 桜が私を見て指をさして『ゆりちゃん』といった。私は、ひ~っと叫んで三橋くんの後ろに思わずかくれた。三橋くんもごくりと生唾を飲み込む。『昨日の再現?嫌だよ~。まあまあ、なんか流れ込んできて頭が混乱するんだから…。頼むよやめてくれーーー。』と三橋くんも同じ思いだったのか私に言った。


 「そう。友香がゆりちゃんなのね。ところでゆりちゃんは、なにした人なの?」


 お母さん。変な質問しないでと思いながら私は、頭をフルフルした。


 『ゆりちゃんは、おかあさんのおともだち。ゆりちゃんは、みちしげさんのおくさん。だから、ここにいたらいいとおかあさんがいったのママン。」


 よくわからないなりに何か納得したお母さんは、うんうんと頷いた。

 

 「じゃあ、しばらくここにいるのね。賑やかになるわね。」

 「え?お母さん。どうしてーーー。」

 「じゃあ、この子どこにやるのこんなに小さいのに。」

 「小さいとかじゃないから。この子は、えっといくつ?だっけ?」

 「さくら?さくらは、なんさい?なのかな?よくわかんない。」


 満面の笑みで私を見つめる桜の目が怪しく見えたのは、私だけなんだろうか?どうして、こんなに家族が増えていくんだ。解決どころかどんどん複雑になっていく我が家に脱力してしまう私だった。そんな私を見て、三橋くんは、気の毒にと言った表情で見てきた。だから言ってやった。


 「圭太。圭太んちもなんか増えればいいよね。」

 「おい。そんなこと言って本当に増えたらどうすんだよ。」

 「だって、自分だけ平和そうな顔するからでしょ。」

 「いやだからってな。もう、マジでやめてくれ。」


 そんな私の言葉が、後で本当になるとは、この時思いもよらなかった。

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