第19話 蓮にいがいうことにゃ

「蓮にい。おかえり~!!パパンより蓮にいの方が覚えてるかも!!だって、おばあちゃん子じゃん!!

「そうね。そういわれて見れば!!」


蓮にいがリビングに入るなり皆が食い入るように蓮にいを見つめる。


「あのさ、ここ辺の歴史知ってるよね。おばあちゃんが昔言ってた領主様の話~!!」

「なんだよ。帰ってくるなり…。それにまた、集まっているのか。はあ~。」

「お邪魔してまーす。蓮さん。」

「圭太。閑か!」

「ははははは。まあまあ。蓮さん。それより、領主様の話を…。」


蓮にいは、仕方なく思い出しながら、おばあちゃんに聞いた話をした。


「うちの先祖は、ここの領主の家老だ。あっそういえば、一人、側室として嫁いだとかなんとか言ってたな。だけど、幼い時に政略的に嫁いだから領主様の子供みたいに扱われたとか言ってたぞ。だから、領主の血筋にはならない。」

「じゃあ、その小さな側室さんがなんかこの件と関わりあるのかも!!」


降ってわいた話に皆が色めき立つ。


「よし!これで小さな糸口は出来たかもな!」

「うんうん。圭太。その側室さんがどうなったか調べに行ったらなんか分かるかな?確か、ここら辺の歴史書は図書館に行けば揃ってるし!!」

「よし、明日、図書館に行って調べよう。今日は、ここまでだ。」


そう言うと三橋くんは、隣の家に帰って行った。そう、このひと月の間に三橋くんは、隣の家に戻ってきていたのだ。転勤で貸し出していた家に高校が近いということで、もともと戻る予定を早めたらしい。おかげで作戦会議は連日のように行われ、蓮にいが辟易していたのは、言うまでもないが狐仙女がうまく宥めてくれていた。

三橋くんが戻った後、金ぴか仙人もシュッといつの間にか消え、河童さんに至っては、プールに戻ってお母さんとおしゃべりしながら快適に過ごしている。私だけが三橋くんの作った表をマジマジと眺めて真剣に明日の事を考えていた。


「お母さん!!河童さんと遊んでないで晩御飯の支度しようよ。」

「あっそうね。パパンも帰ってくるしね~。」

「そうだよ。蓮にいもそんな顔しないでお風呂入っておいでよ。」

「おう。」


蓮にいがお風呂に行き私は、お母さんの晩御飯の支度を手伝い中がらも頭の中は明日の図書館の事で一杯だった。そして、その夜私は、変な夢を見た。着物を着た小さな女の子が毬をつきながらおいでおいでと呼んでいる夢だった。


「あなたは、誰?」

「私?私は、彩子。一緒に遊ぼ。」

「うん。良いよ。この毬で遊ぶの。」

「違う。こっちこっち!!早く行こう。」


女の子は、私の手を引っ張って、駆け始めたのでついていくとそこは、あの滝だった。


「ここって?仙界1丁目の滝・・・。」

「うん。お姉ちゃん。一緒にいてね。」


混乱する私は、夢の中で何か不味いと感じて、女の子に謝って帰ると言ったら女の子は、ダメだと言って手を離さなかった。


「お姉ちゃんも私を一人にするの?帰らないで。」


そこで、目覚めた私は、汗だくで心臓がどきどきしてどうしようもなかった。お水を飲みにキッチンまで降りていくと蓮にいがまだ起きてて、ふっと私に言った。


「お前・・・なんか良い香りするな・・・。」

「なんで?変な夢見て、めっちゃ汗かいたのに良い香りなわけ無いよ~やめてよ~蓮にい。」

「いや。ホントだって。」


そこへ、狐仙女さんが飛んで寄って来た。


「クンクン。この香り・・・仙界の香りよ。どうしたの?」

「え?狐仙女さんまで、私には感じないのにな~。変な夢で目が覚めて、小さな女の子に手を引かれて滝つぼに行く夢で怖いって思ったら目が覚めたんだ~。」


その話を聞いた狐仙女さんは、顔色を変えて急にいなくなってしまった。





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