第9話 ちっちゃい天界仙人
なんだか、漫才師の様に手をすりすりしながらその掌の小さく光る天界仙人に私は、質問してみた。
「あの~まず、一つ目は、河童さんたちの帰る方法を伺いたいです。二つ目は、もし、帰る方法が天界仙人様でも知らないのであれば兄に河童さんたちが見えるようにしてもらえないかな~と?ですね・・・お願いしたいんですけど。」
天界仙人は、黙って聞いて少し考えた後、訝し気な顔で口を開いた。
「要求は、分かった。じゃが、なんでこの者たちが下界におるんじゃ?修行で下りた様でもなさそうじゃしな。そこから聞かねばやり方が変わるぞよ。」
「・・・かくかくしかじかで・・・。というわけなんです。」〇本新喜劇の様な説明やな。と我ながら思う私だったが、通じるから良いかっと思いつつ返事をまった。
「ふむ。来た理由は、分かった。普通は、こっちで、しばらく修行すればいつか帰れるがそうでもなさそうじゃな。ちょっとした呪いみたいなものがかけられておりそうじゃな。お~い、そこの河童。お前の持っているものからスイレン郷の匂いがするな。ちと、こっちへ持ってこい。」
河童さんが、天界仙人の目の前まで段ボールを持って行くと天界仙人は、持っていた杖でこつんと段ボールを叩いた。
「いてっ」
『ん?なんか声がしなかった?』
そこにいた全員が段ボールをガン見した時である。
段ボールから煙幕が出て、モフモフ耳の色っぽい狐仙女が現れた。
「いや~ん。もう、叩いちゃ~いや!。」
「何を言うておる。其方、また、スイレン仙女を怒らせたのであろう?」
まさかの新たな登場に一同目を丸くする。中でも、父と兄は、その妖艶な仙女によだれが出そうなほどガン見をしている。
「まあ、豊満だこと・・・。ね~お父さん。女の私でもモミモミしたくなるわよ。」
「いやいや~そんなつもりは・・・。はは、ははははは~。」
「蓮にい、よだれ出てるよ。」
「えっ、お、おまえ・・・茶化すなよ。」
狐仙女は、スイレン仙女を怒らせて下界へと飛ばされ、たまたまあった段ボールに変化させられて自分で変化が解けずにいたのだ。
「ふむ。では、この者たちを仙界に導いたわけじゃないのだな?狐仙女。」
「ええ。そうよん。私にそれほどの力があるわけないじゃない。スイレンちゃんじゃあるまいし。」
「何を言うておる。其方は、真面目に修行しておれば天界に上がれたじゃろ。たわけ者が。それより、ちと調べねばな此度の件は、其方といい偶然とはいいがたそうじゃな・・・。わしは、天界に戻ってこの件を報告してくる。」
そう言って考え事をしながら天界仙人が、元の世界へ帰りそうなのを家族全員が察知し止めにかかった。
『ちょ~っと待った!!何にも解決していない!!』
その場にいる河童も入って止める。
「お~そうじゃった。とりあえず・・・。」
また、こつんと兄を杖で叩き河童には、袖から出した豆?の様なものを二粒渡した。
「これ、河童。この粒は、一時的に人型をとれる豆じゃ。普通は、下界で修業したい者に与える。まあ、そうじゃな、一粒で半月ほどはもつじゃろ。じゃが、心眼を持つものの前では本当の姿が見えるからの。気を付けるに越したことは無いぞ。それから、若者・・・お前さんは、今の一振りで、仙界の者が見えるようにした。これは、この先、消えることは無いからの~。気を付けて生きよ。じゃ、わしは、調べに帰る。」
言うが早いか、しゅるんと音が鳴って天界仙人は、消えてしまった。ついでに、仙人さんもついていってしまった。
「蓮にい、仙人さんいないけど河童さんたち見える?」
「お、お、おう。見えてる。それより背中の・・・こ、子鬼を。く、苦しい~。」
いつの間に・・・。母の腕から、蓮にいの背中にぶら下がっている。
「子鬼~だめじゃん。こっちにおいで。」
「だめじゃないじょ~ゆか~のりやすいじょ~。」
私は、兄の背から子鬼を引きはがして、抱っこしてからふと我に返った。
一人増えてるままだ。
「あの~仙女さん・・・なんで、元に戻れたのに帰らないんですか?」
私が口火を切ったが、ここに居る全員がそう思っていた。河童さんは帰るだけの力が無いから仕方ないとして、へんてこ仙人は出たり消えたりできるんだから仙女さんも帰れるはず?と思えたからだ。
「え?どうして?ここに居ちゃダメ?なんだか楽しそうだから。フフフ。」
「だめというか・・・部屋ないし・・・。」
「部屋なんていらないわよ~たぬきちと寝るから。コン!!」
そう言って、宙を飛んでくるりと回ったかと思うと狐に変化した。
「げっ!!だから、狐仙女なのか~しかも尻尾がたくさんあるし・・・1,2,3・・・9もある。九尾狐?ってこと?」
狐仙女も我が家に加わり、なんだか、ここはどこ?私は誰?と言いたくなる状況が深まってきたが、兄以外は、まっ!仕方ないか~という感じで家族会議は、終わってしまった。
その日、兄は、関西弁で「なんでやね~ん!!」と部屋で叫んでいたのだった。
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