あやかしLIFE(河童と子鬼と暮らしてます。)
華楓月涼
第1話 連れて(着いて)きちゃダメでしょ・・・
あの日、送られてきたコンタクトを装着したことで異世界に飛ばされた私は、いろいろな生き物と出会った。最初に出会ったのは、河童でその次に狸を連れた小鬼だった。他にもいろいろと出会ったが、のちのち思い出すとして・・・異世界で路頭に迷った私は、河童の頭の皿を人質にして、帰る方法を河童に教えてもらい、道中で出会った冗談ばかり言う仙人も一緒に、その仙人が管理している迷い人の集落までやって来たのだった。
「誰もいないじゃん!!仙人さん、河童さん!」
「あー、また、滝つぼに入って消えたパターンじゃな・・・。」
無責任に仙人が言う。集落の傍にある大きな滝つぼに入ると迷い人は、消えるのだと言う。後を追ったわけでは無いので、『迷い人のその後は知らない』と言った。
「えっじゃあ、帰れるかどうか分かんないんだよね?」
「そうじゃな。知らんからの~ふぉふぉふぉ。」
仙人は、長い黒髪に麗しい顔立ちのイケメンなのに、仙人だからか爺さんの様な話し方だ。しかも、頭にへんてこな葉っぱの冠を乗せている。下界と呼ぶ私たちの世界に遊びに行くことはできるが連れて行くほどの力は無いらしく、時折来る迷い人の為にとりあえずこの集落を作ったのだが、知らない間に・・・滝つぼに消えていくのだと説明してくれた。
「おい。皿から手を離せ!!小鬼も親鬼に返せよ。俺は、帰る。」
説明を聞いて頷く私に河童が突然言った。
「なんでよ。私が一人になっちゃうじゃん!!。」
「しょうだじょ・・・かっぱ。」
抱っこして、河童の皿をつかませていた小鬼も言う。
「お前、どのみち俺と水の中で住めないだろ!!」
「そんなのわかんないじゃん!ここは、異世界何でもありじゃないの?」
「訳の分かんないこと言うな!!」
私と河童の言い合いを見ていた仙人が、間に入って無責任なことを言い放った。
「そうじゃな・・・迷い人。何でもありなのか?試してみたらどうじゃ?ふぉふぉふぉ。面白そうじゃ~。」
「じゃあ。やってみようじゃない!行こう河童さん。」
「おっおう!」
河童がドボンっと水に飛び込む。それに続いてドボンっと飛び込む。
『えっ底が見えない・・・』
つい、負けん気を出してついていったが、そこは、さっきの迷い人が消える滝つぼだった。その時だった、水の中で鱗が剥がれるかのように、コンタクトがパラりと取れて水底に沈んでいく・・・。
『溺れる・・・・・。』
そう思って無我夢中で河童にしがみついた。すると、さらに自分が重くなるのを感じる。もれなく、小鬼とたぬきちまで飛び込んでいた。もうだめか・・・と思っていたら自分の周りが発光するのが分かった。
『ここ、滝つぼじゃん!』思うが早いか遅いのか?いったい、どこに飛ばされるのか?元の世界に戻れるのか?・・・どうする?私!!!
意識がどんどん薄れていく・・・。『このまま、死んじゃうの~?』そんな風に思っていたら、ドサッと何かの上に転がり落ちた。
「いたたたた・・・。」
気付けば、自分のベッドの上だ。
「は~。夢か・・・まじ、リアルなんだけど。ん?んんんん?重っ。」
身体を起こして目が合ったのは、あの河童だった!!
「うわ~~~~!!!!。」私、ベッドから飛び出して壁に張り付く。
「うわ~~~~!!!!。」河童、布団にしがみつく。
「うわ~~~~!!!!。」子鬼、たぬきちに飛びつく。
「河童!!子鬼まで・・・。おまけに、たぬきち!此処元の世界じゃないのーーー!!」
その時だった、コンコンとドアがノックされガチャリと開けられた。
「ちょっと!!友香。起きてるんなら早く用意しなさい。」
「あ!」
「あ!」
「あ!」
『キャーーー!』という母の悲鳴。腰を抜かして、ドアの前に座り込む母に駆け寄った。
「これには、訳があるような無いような・・・というか、お母さん見えてるの?」
説明のしようのない出来事に信じるかどうかも分からず、どうしようかと思っていたら河童さんを指さして母は、声にならない声で言う。
「か、か、か、河童が・・・。」
「うん。」頷くしかない私。
「こ、こ、こ子鬼も・・・。あっ狸!」
「うん。」頷くしかない私。
だが、気を取り直したその後の母の行動はすごかった。
「かわいいいいいいいい!!!。」
「え?何が?」
「全部!!に決まってるでしょ!!」
「えーーーーーー!!受け入れるのーーーーーー??この状況?」
子鬼を抱きかかえて頬ずりし始める母に、子鬼が喜んで抱き着いている。
「ははうえのにおいがするじょ~。」
河童は、壁に張り付いたまま、身も心も干からびそうな状態なのは、言うまでもなかった。
母は、やっぱり、私の母だった。この状況をすっかり受け入れた。
河童と子鬼、もれなく狸と共に・・・私の奇妙な共同生活がスタートしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます