会員制真夜中のクラブ

織風 羊

第1話 丸いテーブル



 いらっしゃいませ。

 お待ちしておりました。


 都会の雑踏に紛れた背の高いビルの中に、その部屋はあった。


 店ではなくビルの中の部屋の木目調の扉を開けると、年老いた上品な男が私を迎え、中へと通してくれた。


 部屋の中では、数人の男女が丸いテーブルを囲んで、様々なハード・ドリンクを楽しんでいた。


 その横にあるテーブルでは、二人の男がビリーヤードを楽しんでいた。私がそちらを見ると、一人の紳士と目が合い、彼は静かに頷いた。私も静かに頷くと、チェック・メイト、と言う言葉が耳に入ってきた。


 すると、一人の男が大袈裟に両手を広げて立ち上がるのが見えた。向かいに座っていた男性は静かに笑うと、彼も席を立ち中央の丸いテーブルへと向かって行った。


 私を迎え入れてくれた老紳士が椅子を引くと、先程までチェスをしていた二人の男がそれぞれ椅子に座り、何かを注文したようだった。


 私は、隅々を見回し、丸テーブルの前まで行くと、やはり先程の老紳士が椅子を引いて座らせてくれた。


「ビールを」

と言うと、老紳士は優しく微笑み、丸テーブルから離れ部屋から出ていった。

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