第4話 出会い……そしてすぐに憧れの同棲生活へ! 

 翔はなぜか早紀とは上手く行くような気がしていた。何の根拠もないのだが。そしてその予感の通りとなった。


 翔は自分の顔写真を早紀に送った。


>かわいらしい感じですね。お会いするのが楽しみです。


>ありがとうございます。


 今まで「カッコいい」と言われた事はあまりなかった。褒められる時はいつも「かわいい」だったのだ。でも翔はそれがとても嬉しかった。


 翔からは早紀に写真は求めなかった。見た目はあまり気にせずにネットで知り合った女性と積極的に会っていたのだ。でも早紀は進んで写真を送ってくれた。かなり翔の好みに合っていた。


>とても素敵な人ですね。今すぐお会いしたいくらいです。


>そんな……恥ずかしいです。


 こんな感じで、会う前から既にかなり打ち解けた上で、メールで待ち合わせた。


 待ち合わせ場所は地下鉄半蔵門線某駅前。いた。けっこう天然ぽい感じ。メールやチャットで感じてたイメージの通りだ。

「深山早紀さんですか?」

「原口翔さん?」

「そうだけど」


 こうして翔と早紀は、インターネットを通じて出会う事になった。


 翔は、今目の前にいるこの娘が自分と同じ性癖の持ち主なのかと思うと、とても親近感を感じた。それにこうしてリアルで会ってくれるという積極性と勇気にも脱帽。男だって躊躇ちゅうちょするくらいなのに。


 でも、この時はひとまず早紀に名刺を渡し、若干の世間話をしてすぐにお別れした。もちろん連絡先は交換した。


 そして、その後再び会う事になった。今度はデートみたいなものである。


 喫茶店だと周りの人の目が気になる。なにせ翔と早紀は禁断の特殊性癖で繋がっている仲なのだ。そこで近くの広場に行く事にした。


 このあたりは高層ビルが立ち並んでいる場所だ。ここの公開空地のベンチに座って、秘密の会話を楽しんだ。

「いつ頃からセックス嫌いになったの?」


「病気になって3年くらいしてからかな。もうかなり経ったよ」


「そうなんだ。自分はもっと前、以前話した元カノが行方不明になったのが中学1年の頃だから」


 かなり踏み込んだ会話だ。まあ、その前にメールでけっこう長期間、日常の話とかをして打ち解けていた。それになんといっても熱いチャットセックスまでした仲だから。


 翔はこんな会話していたら我慢出来なくなってしまった。ダメ元で誘ってみる事にした。そして例の決まり文句を早紀に伝えた。


「なにもしないからこれから家に遊びに来ない?」


 これは嘘ではない。なにせセックス出来ない身体なのだから。


「本当? 行ってもいいの?」

「ぜひ」

 こうして翔と早紀は、出会った日の次のデートで家で2人きりですごす事になった。


 更に、そこでオナニーの見せっこをするという夢のような事をしたのである。早紀は翔と一度もセックスした事がないにもかかわらず、見せっこに応じてくれた。


 まあ、翔のサイトがきっかけだったからある程度は予測出来たのだが。


 翔はまず早紀に軽くハグすると、早紀は強く抱きしめ返してきた。


 翔も思わず強く抱き締め返す。そして早紀のほっぺにキスをすると、早紀は目を閉じた。翔は軽く唇を重ねた。


 普通のカップルならばこの後セックスになだれ込むのだろうが、この2人はそうではなかったのだ。

「早紀さん、君が一人でしている所を見せて」


「いいよ」

 早紀は翔の目の前で椅子に座ってほんの少し脚を開くと、洋服を着たままスカートの中に手を入れて、女の子一人だけの営みを開始した。

 


 翔は美紅以来、初のオナニー見せっこに大興奮。

「本当はもっと声出したいけど、周りにバレないように押し殺すのに慣れちゃって」


 早紀は恥ずかしそうに言った。


「いいよ。あまりわざとらしいとかえって萎えちゃうから。そのままがいい」


「普段はもっと地味なの。とにかく周りにバレないようにする事が最優先だから。見てみる?」


「見たい見たい」


 早紀は脚を閉じたまま、ほんの少しだけ締め付けるような仕草をした。普通に見ていたのでは、締め付けていることすら分からない程自然な動きである。

 ほんの僅か表情が変化した。言われなければ気かつかない程度だ。


「今イッたの。分からなかったでしょ」

 すごい、見た目では全くわからない状態でイケるのか。美紅以上だな。


 これも早紀がなんとかして日常生活を送るために、切実な思いで身に着けた技術なのかと思うと切ない。


 それでも早紀は少し経つとまたモジモジし始めている。本当に可愛いな。

「さすがに今日はもう限界だ。でも気にしないでいくらでも自分でして。僕ずっと見てるから」


「ありがとう。それじゃお言葉に甘えようかな」

 早紀はその後も何度も絶頂に達し、翔はそれをずっと見つめながら声を掛け続けた。


 翔は早紀に真面目な交際を申し込んだ。

「よかったら、これから僕と真面目に付き合わないか。これからは『翔』って下の名前で呼んで欲しい」


「はい。私の事も『早紀』って呼んで」


 翔はインターネット検索で、更に早紀の病気がいかに深刻なものであるかを知る事になった。


 イクイク病による性衝動がいかに強いかを物語る事が外国で生じていた。ある女性がこの病気で仕事もままならず、解雇されてしまったそうだ。ところがこの女性は強い人だった。


 この職場を訴えて、解雇無効の判決をもらい、復帰する事が出来たのである。しかもそれだけではない。復帰後の職場で18回までアダルトサイトを見てオナニーする権利を認められるという判決だ。


「早紀の病気の事色々調べた。外国の解雇無効の判決の話とか」

「そんな事して職場に戻るなんて恥ずかしくて無理。ましてや仕事中に自分でするなんて絶対無理。その女性メンタル強すぎだよ」

「たしかにそうだよね」


 もっと重症の患者だと、一日に何百回もオーガズムに達し、全く普通の生活が出来なくなり、あげくに自殺してしまったという例もある。


 その患者は、継続的な症状に対応する為に働く事を辞め、ほとんどの時間を自室にこもって、バイブレーターと共に過ごす事しか出来なくなってしまったという。


 その性的興奮状態からくる苦しみが自殺に向かわせたと思われる。

 おそらく周りの偏見だってかなりひどかっただろう。


(早紀がそんな事にならないように良く見ていてあげなければ)

 翔は、早紀と知り合った事で自分が何をすべきか、深く考えさせられた。



 早紀は、決して翔に無理にセックスするようにみたいな事は言わなかった。それがすごく楽だったのだ。


 他の女の子はとにかく、翔がセックス出来ないと知るとすぐに別れを切り出すか、あるいはなんとかしてセックス出来るように働きかけてくる。そんな事はとっくにやり尽くしているというのに。


「早紀、一緒に住まないか。今の状態をにすればいい。そうすれば少なくとも家にいる時は普通に生活出来るだろ。できる限り協力するから」


「わー本当? 嬉しいな」

 翔と早紀はその後すぐにマンションに引っ越し、同棲を始めた。


◇◇◇◇◇◇



 読んでいただきありがとうございました。


 次の第5話は、せっかく同棲生活を始めた翔と早紀の関係に暗雲が立ち込めます。ピンチ到来。いったいどうなるのでしょうか? お楽しみに!

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