第21話 守護神

 サクは帯刀にもたれ掛かり、胸元に唇をつけた。そして、舌を這わせながら襟を開いていく。

 サクの赤い舌が帯刀の乳首を舐め上げた時、帯刀は思わず声をあげた。

「あっ……」

 同時にサクは、袴を雄々しく持ち上げるモノの先端を、手のひらでクルクルと弄ぶように愛撫する。

「ああっ……そなたほどの娘が、なぜこんなふしだらな事を……」

 帯刀の妻は武家の娘である。夫婦の営みでも、唇を噛んで決して声を上げない。

 まるで我慢大会の様相で、自分から夫を求めるなど有り得なかった。

 ところが、この娘はどうした事か……。

 だが、サクはキョトンと不思議そうな顔をして言った。

「サクはジュリでございますが、何か?」

「……」

 帯刀は、今さらのように、ここがどこかを思い知る。

 サクは笑顔に戻ると、帯刀から少し離れて立ち上がった。

 女性の琉装は帯が細い。その細帯をほどくと、サクは両膝を立てて座る。

「一体何を……」

 狼狽える帯刀に、サクは答えた。

「帯刀様。どうぞサクが初物である証拠をお確かめください」

 そして、サクはゆっくりと膝を開いていく。

 帯刀は顔を背けた。

「か、確認などよい。よいから着物を直してくれ」

「そういう訳にはいきません。サクの処女には、立派なお屋敷が建つほどのお金を頂いております。処女の証をご確認頂くのはお約束でございます」

「しかし……」

「帯刀様。サクは明日も明後日も、これからお客様が付く限り、ずっと殿方に抱かれ続ける日々を送ります。汚れる前のサクの姿を、どうぞ帯刀様の記憶にお留めください」

 帯刀は、恐る恐るとサクの開かれた膝と膝の間に眼をやった。

 蝋燭の艶かしい光に導かれ、帯刀は引き寄せられるようにサクの股間に顔を寄せていく。

「あ……恥ずかしい……」

 サクが消え入りそうな声で呟いた。

 その声で、帯刀の中の何かがプツンと音を立てて切れた。

「もっと開いて見せるのだ……さあ、左右にグイと広げて」

 サクは言われるがままに、両手の指で秘部を開く。その手が震えているのを、帯刀は見逃さない。

「何だ、そんなに恥ずかしいのか? そんな事では立派なジュリにはなれぬぞ……ああ、これか。私も見るのは初めてなので良くわからんが、多分これが処女の証だ」

「あ、ありがとうございます。では、脚を閉じても……」

「それどころではないぞ。そなたの身体が異常な反応を示しておる。中から何やらどんどん溢れてきておるし、入り口の小さな突起が腫れ上がって真っ赤だ」

「帯刀様、これ以上はどうかご勘弁を……」

「だが、心配はいらぬ。こんなもの、舐めておけば治るからな。任せておけ」

「えっ?」

 帯刀はサクな股間に顔を埋め、敏感な突起を舐め始めた。舌先を尖らせ、丹念に舐める。

 サクの身体が、海老の様に仰け反った。

「ああっ! ああっ!」

 気の抜き方を知らない幼い身体は、いとも容易く絶頂に達した。

 サクは大きく呼吸を繰り返しながら呟く。

「知らない……こんなの知らない……」

 帯刀はゆっくりと頭を立てる。

 サクの顔を見ると、睫毛が涙に濡れていた。

 帯刀は、一気に正気に戻る。

「私は……何という事を……」

 ところが、帯刀を見下ろすサクの眼は、もう清らかな乙女のものではなかった。

 妖艶な娼婦の眼だ。

「帯刀様ぁ、サクをもっとねぶってください」

 サクのおねだりに、なんとか立て直した帯刀の理性は、いとも簡単に吹き飛ぶ。

 再びサクの秘部にむしゃぶり付く。

「ああぁ、気持ちいい……男の人にねぶられるのが、こんなに気持ちいいなんて……」

 赤子が母親の乳首に吸い付く様に、帯刀はサクの小さな突起に吸い付く。だが、ただ吸うのではない。突起を舌先で上下左右に擦り、唇で挟んで引っ張ったりする。

「あ、あ、また来ます。何か来る……来るぅ!」

 そして、先ほどより激しく海老反った。

 両足をだらしなく開き、性器を丸出しにして放心しているサクの姿に、帯刀は立ち上がって袴を脱ぎ捨てる。

 サクが何とか眼を開いた時、帯刀はふんどし姿になって仁王立ちしていた。

「申し訳ございません。サクがご奉仕せねばならないところを、逆にご奉仕頂いて……」

 そして、ゆるゆると上体を起こすと、帯刀の足元まで這った。

 サクは、帯刀の腰に掴まって膝で立ち、股間に顔を押し当てる。

「ああ……素敵。殿方の匂い……サクは堪りません」

 ふんどしの横から手を入れると、青筋を立てていきり勃つモノを取り出した。

 サクはそれを、潤んだ眼で見つめる。

「硬い……こんなに硬いなんて」

「男に触るのも初めてか?」

「もちろんでございます。給仕をしておりましたので、何百本と眼にはしましたが、触るのは初めて……」

 サクはいたずらっぽく、上目遣いで帯刀を見上げた。

「でも、ご安心ください。張型で殿方の喜ぶ技は学んでおります」

 帯刀のそれは、一直線に天を指し示していた。うつむいている時には裏になる部分が、今は真っ正面を向いている。

 サクは、その裏の部分に舌を当てた。スジに沿って、下から上へとチロチロと這い上がる。

「クッ……何たる舌使い……」

 帯刀の顔が歪む。

 そして、一番敏感な亀頭の部分に差し掛かった時、全身を震わせた。

「ううっ……」

 サクの舌が、そこを集中的に攻める。

 帯刀の顔が更に歪んだ。

「た……たまらん」

 サクは素早く顔を離す。

 帯刀が落ち着くのを待って、二つの玉を手のひらで弄ぶように転がし始めた。

「フフフッ……まだまだ、夜はこれからですよ」

 帯刀は、サクの最初の攻めで呆気なく射精しそうになり、それを見透かされた事が恥ずかしかった。

「そなたが……そなたが美し過ぎるのだ。その美しさで、こんな淫らな事をされれば、耐えられる筈もない……」

 サクはいたずらっぽく微笑むと、帯刀を見上げたまま先端から咥える。そして、男根を咥えた自らの淫らな姿を見せつけるかのように、頭を前後にゆっくりと動かした。

 帯刀は悲鳴を上げる。

「ああっ! これがジュリの技……もう辛抱ならん。お願いだ、入れさせてくれ!」

 サクは帯刀から口を離すと、妖艶な笑顔で頷いた。

 


 三回連続で精を放った帯刀は、グッタリと天井を見つめたまま呟く。

「すまぬ……そなたは初めてだというのに、全く気遣いをする余裕など失っていた。痛かったであろう?」

 サクは、帯刀の裸の胸に頬を乗せる。

「いえ、帯刀様がお優しかったので、痛いのは最初だけでした。とっても、とっても素敵でした」

「そう言ってくれると救われる。それにしても……」

 言葉が途中で終わり、不思議に思ってサクが顔を上げると、帯刀は寝息を立てていた。

 頬を帯刀の胸に戻したサクも、情事の後の気だるさにウトウトとして記憶が途切れた。


 サクが跳ね起きる気配で、帯刀は目を覚ました。

 見ると、サクは着物に細帯を締めている所だ。

「どうしたのだ?」

 サクは、人差指を口の前に立てた仕草のまま、小声で答えた。

「人が来ます」

 帯刀もつられて小声で返す。

「給仕だろう?」

「いえ、辻の給仕は床を摺って歩くので、あの様な足音はたてません」

「では、客が帰っているのでは?」

「お帰りのお客様は、出口に向かって足音が遠ざかります」

「うむ、確かに近付いて来ておるな」

「泥棒なら、人の少ない所を目指します。帯刀様、お命を狙われる心当たりは?」

「江戸や京都であればだが、まさか琉球で……」

 帯刀が枕元に置いていた打刀を手にすると、サクが言った。

「狭い娼館で長い刀は振れません。短い方をお持ちください。そして、屏風の裏へ」

 帯刀は、そういうものかと脇差を手に屏風の裏へ向かう。

「そなたは?」

「大丈夫です。サクは……」

 その眼差しは、先程までの妖艶な娼婦のものではなく、覚悟を胸にした侍と同じ眼であった。

「……ヤーヌカミーですから」

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