お題 「ころぶ」「大福」「散歩」

嶋 徹

第1話 工場の更衣室で

「お疲れ様です」

「お疲れ様です」

僕は顔も上げず、ただ着替えていた。

いや、ちょっといらついていたかもしれない。生産量が落ちてきたのか残業なしの定時3:45に退勤となったのだ。


「更衣室でいっしょになることないですよね!」と話しかけられた。

「え?」

同じ派遣会社の城野さんだ。

「あ! 城野さん!ゴメン見てなかった」

「いや、いいですよ」

 彼は東京出身で頭が切れた。工場での勤務は副業で農業を生業としていた。

「城野さん、野菜って受注して生産するの?それとも生産した後?」

「まちまちですね。僕はどっちでもいいと思ってますよ……」

「はあ~、そうですか」


 彼は悪い人ではない。信用できないわけでもない。それでも……やっぱり苦手だ。話していて不愉快になってしまう自分がいる。僕の器が小さいのが最たる理由だが言葉の選択が地方の田舎のものとは明らかに違った。

 ゴメンね、城野さん。僕は君とは話したくない。





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