第4話 部屋とロボットと私
喪が明ける前に社長を退いた。創業時から一緒に頑張ってくれた専務なら後を任せでも大丈夫だろう。まあ円満退任ってやつかな。
練っていたプランを実現するべく、早々に行動を開始する。
まずはロボティクスのベンチャーを起業した青年に声を掛ける。
元社員だが、社内ベンチャーで企業し、今ではいっぱしの実業家だ。
なぜうちに?と思いながら採用したが、案の定業務と関係ない企画を立ててきやがった。もちろんOKを出したよ。手直しはしたけどね。わはは。
私も老々介護が心配だったから。人手のいい所は残し、ロボットで助けられることがあればどんどん取り入れていきたい、と考えていたからね。
次に音声認識、音声合成に精通しているメンバーを探していたけど、センシティブな依頼もするからね。そうそうに諦めて、検索サイトに師事して独学で身に着けた。
力試しに動画サイトにチャンネルを作ったけど、チャンネル登録者はそこそこいったさ。盾が貰えるほどじゃないけど。久しく更新していないな。
そのあと、知り合いの工務店に屋敷の改築を依頼する。
一室を病室に似せて模様替え。ドアも病院に似せてスライドドアにする。ベッドをしつらえ、窓も大きく。小物類も準備した。
バストアップのロボットも完成した。ベッドに寝かせるため、下半身は不要だし、可動部も少なくて済む。
ある程度割り切った設計ができたのも、製造の時間短縮につながったんだと思う。
数少ない妻との旅行で撮ったビデオから、彼女のセリフを拾っていく。ロボットに着ける表情も拾っていく。
彼女が食事をする。
彼女が手を振る。
彼女が笑いかける。
彼女が寝る。目を覚ます。
ああ。どうにかなりそうだ。
だがここを乗り越えれば。乗り越えなければ。
―――
注:実際に撮り残した奥さまのホームビデオから音素を拾い、UTAUデータを作って動画(楽曲)をアップされた方がいらっしゃいました。ソースが見つからん。
追記:松浦Pの"妻音源とりちゃん"でした。今でも衝撃。Mr.サンデー(FNN)に感謝。
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