【バレンタインミステリー】密室教室ロストチョコ事件
押見五六三
前編
2月14日――
毎年この日にその悲劇は繰り返される。
あなたの街でも同じような事件がきっと――
A男「犯人は必ずこの学園の中に居る!!」
B男「オイッ!A男!まさか俺達の事を疑ってるのか?」
C男「何でもいいけど早くしてくれよ。俺、約束が有るから急いでんだ」
グランドでは金属バットの音が、中庭では管楽器の音が、淡く鳴り響く放課後。
2年3組の教室には被害者A男と本日の日直だったB男、C男が教室の真ん中に佇んでいた。掃除も終わり、他のクラスメイトは既に教室には残って居ない。
A男「今日の5限目の授業、この教室から最後に出たのは日直のお前ら2人だったよな?」
C男「ああ。6限目が体育だったからな。教室に鍵をかける為に最後に出たよ」
A男「やっぱりな……そして俺は体育の授業終了後、お前達と一緒に一番乗りで教室に戻ってきた。C男が鍵を開けると同時に俺は教室の中に入り、すぐに机の中を調べたが無かったんだ。つまり犯行は俺が5限目終了後に教室を出てから、お前達が鍵をかけるまでの間。この約10分間の間に犯人は俺の机の中からチョコを盗んだ事になる。普通に推理すればだが……」
B男「なるほど……それで最後に教室を出た俺達を疑ってるのか」
A男「そうだ。体育の授業中、この教室は密室状態だから犯行は不可能だ。だったら最後に教室を出たお前達が怪しくなる。疑われるのが嫌なら犯人探しを手伝ってくれ。C男!扉に鍵をかける前に、ちゃんと窓の方の鍵も調べたのか?」
C男「ああ。ベランダ側も、廊下側も窓の鍵は全て俺が閉めた。それは間違いない」
B男「あ、そうだ!そういえば寒いからって、エアコンつけっぱなしだったわ。チョコだから溶けたんじゃないか?」
A男「箱ごとか?例え裸で入っていたとしても痕跡が残るだろ」
B男「冗談だよ。もしかしたら教卓か、掃除用具入れに誰か隠れてたんじゃないか?俺達がサッカーしてる間に盗み食いしたんだろ」
A男「その可能性も有ると思って現在D男に体育の授業をサボったクラスメイトが居なかったか調べてもらっている。もし居ればソイツが犯人の可能性が高いが……お前達!俺が教室を出た後、俺の机に近づく不審な人物を目撃しなかったか?」
B男「すまん。お前の机なんか興味ないから覚えてない」
C男「俺もだよ。そんな大事な物なら机の中じゃなくて、カバンに入れて更衣室に持っていけばよかったのに……因みに誰から貰ったチョコなの?」
A男「わからない」
C男「そうか。名無しで机に入れたのか……とりあえず食べられたかも知れないが、教室中を探してみよう。どんな箱に入ってた?」
A男「まだ見てない」
C男「なんだよ!どんな箱に入ってたのかも分からないんじゃ、探しようないじゃん!そのチョコいつから机に入ってたの?」
A男「5時限目終了時にはまだ入って無かった。だから5時限目終了時からお前らが出ていくまでの10分間で机に投入されたはずだ。チョコは俺が席を外したこの空白の10分間で投入され、そして盗まれた……」
C男「はあ?」
B男「どういうこと???」
A男「つまり、まだ俺はそのチョコの存在を確認していない状態だったんだ。おそらく入れるタイミングが無かったのだと思う。だから俺は5時限目終了後、早目に教室を出たんだ。女の子にチョコを机に忍ばせるチャンスをあげたんだよ」
C男「……誰かにチョコを机に入れてもらう約束をしてたの?」
A男「いや」
B男「お前……それって……」
A男「なあ、お前ら!俺が教室出た後、俺の机に近づく女子を見なかったか?見たなら――」
D男「そんな女子は存在しないッ!!」
3人の会話を遮るように扉を『バンッ』と勢いよく開け、A男の幼馴染みでクラスメイトでもあるD男は教室にゆっくり入って来た。
A男「D男!どうだった?体育の授業をサボった怪しい奴は――」
D男「授業をサボった生徒は居なかったし、クラスメイトの女子全員に聞いたが、お前の机にチョコを入れた女子は居なかったよ……」
A男「えっ?い、いや……恥ずかしくて言えないのかも知れないし、他のクラスの女子かも!そうだ!先生の可能性も――」
D男「A男!いいかげん目を覚ませ!バレンタインデーは、イケメンと一部の運動部員の為の祭典だ!漫画オタクで厨二病野郎のお前には無関係のイベントなんだ!お前にチョコを贈与する奇特な女子はいない!お前の机の中には最初からチョコなんか存在しなかったんだ!」
A男「ぷッ!フフッ、フハハハハハハ……ハハハハハハ……」
D男「何がおかしい?」
A男「そう言うと思ったよ。だが残念ながら違うんだよな……」
D男「何がだ?」
A男「俺は今日、チョコを貰える絶対的な確信が有る。お前らには内緒にしてたが、実は俺は既に准リア充なんだよ。去年からな……」
〈解決編につづく↓〉
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