旅立つ人はみんな
シヨゥ
第1話
「旅立つ人はみんな勇者なのさ」
先輩が紫煙をくゆらせながらそう呟く。
「現状を良しとせず、今よりも良い環境に身を置くために旅立つ。次の街はきっと。そんな思いで、保証のない旅をする」
「だから勇者なんですね」
「あちらの街は良いらしい。そんな嘘か真かわからない噂を信じて住み慣れた街を出ていく」
「中にはそんな街を探すことを目的に旅立つ人もいますね」
「そうだな。俺たちは住み慣れた街を離れることができずにくすぶっているというのに」
「本当旅立つ人は勇者ですね。自分と比較して嫌になる」
ため息がシンクロする。
「本当、うちって人が居着きませんね」
「本当にな」
また後輩が辞める。若手と中堅のその間。程よく経験を積んだところで決まって旅立っていく。
「お前は辞めてくれるなよ」
「当面のところは予定ないですね」
「ならいい」
先輩のため息を聞きつつスマホを取り出す。画面にはメールの着信を報せる通知。そこには『書類選考通過のお報せ』と表示されている。
「当面のところはね」
旅立つことが普通なのだからその準備を進めるに越したことはない。
勇者に憧れるひとりとして、常に刃は研いでおくべき。そう思うのだ。
旅立つ人はみんな シヨゥ @Shiyoxu
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