第27話 作戦決行
~それから、1週間後。職員室にて~
「……先生、今日の練習なのですが…………」
制服を着た天河が、目の前で椅子に座った女教師――小田牧に話しかける。彼女は、気だるそうな声で椅子から立ち上がり、言った。
「あぁ、練習ね。……えーっと、体育館の鍵は……」
彼女が、体育館の鍵を探しに歩き出そうとしたその瞬間、後ろから天河が声を発した。
「あっいや、そうではなく……今日の練習は無しにしたいと言う連絡をしに来ただけでして……」
すると、小田牧は驚いた様子で彼の方を振り返った。――しばらく口をポカンと開けっぱなしにしていた彼女だったが、少しして小さく鼻で笑って言うのだった。
「……ふっ、なるほどな。そうか。……分かったよ。今日の練習は無しだな。良いよ。勝手にしな」
彼女は、呆れた様子でそう言うと自分の作業机に戻ってパソコンをカタカタと打ち出した。
――天河は、そんな彼女の姿を見て気まずそうな表情をしながらも職員室から出て行こうとする。
「……失礼します」
彼が、職員室のドアを閉める。――――少しして、タイピングをやめた小田牧が、パソコンの画面をぼーっと眺めながら言うのだった。
「……やっぱり、扇野原だしな……」
彼女は、深い溜息をついて、しばらくしてからタイピングを再開し始めた……。
*
「ひとまず、休みは貰えたぞ」
職員室から出て来た天河が、その前で待っていた3人の男達――花車蓮と白詰想太の2人にそう告げる。すると、2人は声を合わせて「よしっ!」と言って、嬉しそうな顔を浮かべる。
花車が言った。
「それじゃあ、作戦通りに行くぞ? 全員、ちゃんと話は通して来たな?」
天河と白詰は、コクっと頷いて反応する。……そして、花車は言った。
「それじゃあ……これより、サイゼパーティー作戦を開始する! 2人とも良いな?」
「おう!」
「あぁ……」
*
――学校近くサイゼ店内。ガラガラの店の中で3人は、それぞれ同じ場所に座りながら待っていた。
「遅いな……アイツら」
天河は、ドリンクバーで汲んで来たコーラを飲みながら時計を確認していた。
「おい! お前らは、ちゃんと呼べたんだよなぁ?」
すると、白詰がチョリソーを頬張りながら目の前に座る天河と花車に尋ねる。
「あぁ……そのはずだが」
「ラインで、”分かった”って来てるし……」
彼らは、もう既に30分以上店の中で待っていた。――しかし、問題の2人は一向に来ない……。
白詰が言った。
「2人が来なきゃ……狩生に通話できねぇぞ?」
「分かってるよ。――でも、霞草だって、紅崎が来ないとなると……」
「……紅崎…………」
彼らは、更に待った。
・
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そして、外がもう暗くなる頃にようやく、その姿が見えてくる……。
「いらっしゃいませ~」
店員の前に2人の高校生が現れる。――1人は、メガネをかけた長身の男。もう1人は、煙草を吹かせた長髪の男……。
彼らは、ゆっくりと天河達の元へ向かって行った。
「遅かったな……2人とも」
かくして、男達のサイゼパーテイーが始まるのであった。
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