第4話 神さまゲーム
今日、聞こえてきたのは、教祖様のお話のような内容。
ぜんぜん、海賊放送らしくなかったが、地下組織のカリスマかもしれない。
はじめは、「与える」ことについて。
貰ったらお返しする、というのが普通の感覚。
ちょっといい人は、先にプレゼントをする。でも、二三回プレゼントしてお返しがなければ、やめてしまう。
中には、ずっとプレゼントを続ける人がいる。もちろん、毎回毎回、買ってはいられないから、自分の出来ることでやる。
それをしばらく続けていると、物事がうまくいくようになる。不思議と幸運に恵まれたり、見知らぬ人に助けられたりするそうだ。
優秀な人が計算して要領よく、一生懸命頑張って手に入れられるものよりも、もう一段上に行こうと思えば、計算しないで、与えることに徹した方が実は良いそうだ。
しかし、さらにその上の世界もあるらしい。
そこに行くには、どうすれば良いか?
与えて、与えて、与え続けているのに、それ以上、何が出来るのか?
答えは、隠れなさい、だった。
見えないところで与えたり尽くす方が、同じことをやってもポイントが高くなるらしい。それが「神様ゲーム」のルールだそうだ。
世界中の人が、皆、同じ空気を吸っているが、皆が同じゲームをしていると思ったら、それは大間違い。「損得ゲーム」をやってる人たちは、自分たちがメジャーだと思っているが、そうではないらしい。
本当の実力者は人目に付かないところで「神様ゲーム」をやっている。
そのことを知らないと、隠れてこそこそやっているのは影の支配者たちだとか勘ぐってしまうが、悪いことをして上れる階段はたかが知れているのだそうだ。上の上は、皆から尊敬されないと行けない。尊敬されるには、うまいことやっててはダメ。それは大きな勘違い。お金をたくさん持てば羨ましがられるが、それは尊敬とは違う。そこに気づかないといけない……
とまあ、そんな話だった。
もし悪意のある人が相手を騙すためにそういう話をしたら……と思うとゾッとした。実際、侵略戦争をしかける前に、まず宗教を広めて、戦う気持ちをなくさせるという手法が、しばしば使われてきた。
今日の海賊放送も、その類いだろうか?
ただ、人の幸福ということで云えば、たとえ騙されたとしても、「損得ゲーム」から「神さまゲーム」に移行した方が幸せになれるのではないか。そういうリクツも成り立つはずだ。
しかし、オレとしては、その「神さまゲーム」とやらには、どうも馴染めそうにない。別に、その世界を疑っているわけではない。そうではなく、何となく底辺でうろうろしていたいのだ。偉い人になって、皆から尊敬されるよりも、ひとりで気ままにやっていたいと思ったりするのだ。
成功の方程式のようなものを教えられると、かえって、それを避けたくなってしまうのだが、そんなオレは、ビョーキか?
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