RadiO In-Go！

第1話 ユウガイジショウ 0.75％↑

　ケイサツの隠語で「ラジオ」と言えば「食い逃げ」（無銭飲食）だそうだが、オレ語で「ラジオ」といえば、戦争中の地下放送みたいなもん。戦争中の地下放送と違うのは、ユビキタス式で通りがかったら、突然、聞こえてくるところ。しかも、周囲には聞こえず、オレにしか聞こえないらしい。

　といっても、そういう「声」が聞こえる人間はほかにもたくさんいると思う。それぞれがそれぞれの場所でその人だけに語りかけてくる「声」を聞いているのだと思う。

　今日、聞こえてきたのは、不穏なニュースだった。どっかの国の軍隊の医療情報がリークされたらしい。軍隊なんで外から盗るのは難しい。内部告発だ。

　内容は、この一年であらゆる疾患と傷害が急増しているというデータ。この一年の出来事と云えば、アレだ。ただ、人によって想像するアレは違うだろう。どっちかは云わない。云えば、もめるから。

　細かな数字が読み上げられていたが、そんな数字が年寄りに覚えられるわけもなく、うろ覚えのことしかいえないが、主な病気が三倍から五倍に増えたということらしい。癌も心筋梗塞もあった。神経の病気に至っては十倍だった。

　軍隊には基礎疾患で衰弱してる人はいない。つまり、アレに罹っても重症化する確率は一般以下であって、百万人のうち数人もいないのではないか。つまり、そっちのアレではないということだ。

「有害事象の発生率は、0.75％を超えている」

　このフレーズが出た時には、ニュースの「一日百万件」のテロップがオーバーラップして鳥肌が立った。単純に計算すれば、七千五百人に有害事象が発生するということになる。毎日だぞ！

　そのデータ、すでに裁判に提出されているらしい。よその国の話だが国家機密でもアングラ情報でも無い公開情報だ。もし、明日になっても「一日百万件」が撤回されていなければ、知らなかったでは通らないだろう。

　オレが云ってもゴマメの歯ぎしりだが、聞いた以上、黙ってもいられない。ひとりでも多くの人が助かって欲しい……という云い方が偽善に聞こえるほどだ。

　計算、間違ってるか？　百万人の0.75％だと何人？　頭のいい人、調べてください。そして、もしそういう事実があれば、皆を説得してください。

　アレは、マジ、ヤバイって！！！