園芸

バブみ道日丿宮組

お題:出来損ないの土 制限時間:15分

園芸

「うーん……」

 なかなか芽が生えなかった。

 本通りに栄養を与えてるはずし、陽の光だってあげてるはず。

 室内だからか? 外に出したら……虫とか入ってきて嫌だし……ダメ。

「……」

 いったん種を見てみようと、ほじくる。

 そこでみたのは、何も変わってない種。成長なんて微塵もないステータスがあった。

 もしかしたら、この種は死んでるのかもしれない。そういうことであれば、いくら植えたところで生まれるということはないはずだ。

 じゃぁと新しい種をまた鉢植えにいれる。

 難しい野菜じゃないのだから、はやく出て欲しい。

 結果こそが全てだ。

 パシャリと一枚写真をとって、SNSにあげる。

『やり直し』とコメントを添えて。

 いいねが早速ついた。

 仲良くなったフォローさんだった。

 

 それから数日。


「なんだろう……」

 やはり芽がでなかった。

 水のやりすぎということはないし、肥料が悪いというわけでもないと思う。

 しゃがみ込み、土いじり。

 その辺の公園から集めたものじゃダメだったか? 動物の汚物を含んでそうだし、汚かったか。いや……肥料だって、牛のフンとかあるかもしれないし。

 土を買いに行くことはできない。

 あんな重いものを持って帰ることができないから。

 なら、通販で買うのか。

 それで余った土はどうするのか。家に放置するのか。公園に捨てるのか。

 いいアイディアは浮かばない。

 またほじくり、種を見る。変わった様子はない。中古の種はダメだったか。リサイクルショップで50円で売ってたものだし、鮮度が悪かったのかもしれない。

 そう考えるならば、きちんとした種を買えばいいということになる。

 お金はなるべくかけたくない。

 別に育てたいから買ったわけじゃない。単なる気まぐれ。そう気まぐれだ。

 種から芽がでたところをとって、いいねをもらいたかった。

「……」

 現実は厳しい。

 残った種をゴミ箱に入れ、鉢植えを持ち玄関に向かう。

 そして玄関前に土を捨てた。

 誰も見てないし、そのうち風でどっかにいくだろう。

 マンションの廊下に土というのは違和感だが、犯人はわからない。

 ついでに鉢植えも捨ててやろうかと思ったが、それはやめた。

 部屋に戻り、大人しくプラ製専用のゴミ袋につっこんだ。

『ガーデニング失敗』

 今度はいいねはもらえなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

園芸 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る