布団の中のいきもの(サンサ視点)
近々、東西南北を統一し一国とするかを審議する為、国家統一会議とやらが開催される。その前に南の国
「殿下、セリ様は先に部屋におられます」
「ああ 分かった」
毎夜私達は夫婦の寝間で眠っている。私の準備を終え、扉を開き中へ入ると机には何かを書き綴っていたのか……猫の絵か。
そして、青の国の歴史に関する書物が開いている。
教育を受けているのか……。
飲みかけの茶の横には杏の蜜漬け。これは私がタイガに頼み取り寄せたものである。
セリは見当たらない。やはり手持ち無沙汰で散歩へ出たか自室に居るのであろう。
「はあ 疲れたな……」
ベッドに座りそのまま倒れると、なんだ……生き物の感触……布団が盛り上がるその場所をめくりあげる。
「ん……」
「……セリ」
セリが潜り込んで眠っていた。手には筆を持ったままで、頬に墨がついている。
「ぶっ」
さすがの私もこれには笑ってしまった。
墨は取れるのだろうか、明日は揃って
私は水で布を湿らせ絞り、セリの頬をこする。起きたら起きただ。
「ん……つめたいぃ」
「目が覚めたか?……おい」
「…………」
起きないようだ。セリは以前と全てが異なるが特に寝言というか眠り方がまるで違う。
真っ暗にするのを拒み、そのくせ眠りこむと布団の下の方で丸まっている。おかしなやつだ。記憶が無くなると性質、人格すべてを変えてしまうのか。
私にとっては今のセリの方が扱いやすいのは事実だ。しかしまだ何を企んでいるや分からぬ。第一ここを出て戻るまで何をしていたのかも謎である。
あのカヤという女も怪しい。妙に剣術に長けているらしくタイガら相手に打ち合い稽古をしているそうな、どこから降って湧いたのだ。
「ああ……寒い」
今宵は冷える。年中温暖な気候だが朝晩は別だ。
しかし、この謎めいた丸まった存在のおかげで布団の中は温かい。
「お おやめくださぃ……」
「なんだ?」
何もしておらぬのに何を言い出すやら。
「や やめてくださいぃ……ミラクさま……」
ミラク……その名は西の国
「う゛…………ふ」
はあ……今度は寝ながら泣き出したではないか。
「おいっセリ、セリ」
目を瞑ったまま私の衣をぎゅっと力いっぱい掴む。叩き起こしてミラクの名を呼んだのは何故か問いただすか。セリの顔をつつき再び呼びかけるも今度は私の腕を巻き込みしがみつくようにしてしまった。
ああ……結果セリは私の胸に顔を埋め涙で人の衣を濡らしながら眠る。扱いやすいかも知れぬが手がかかりそうな気がするのは気のせいか。
しかし、人肌というのはこんなにも温かいものか……。
問いただすのは明日にしよう。
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