12話 戦闘の基礎の話

「ではレイナさん。 準備はいいですか? 」


僕とレイナさんは学校の近くの人気のない森に訪れていた。


クラス対抗戦に向けてのトレーニングをするためだ。


あの一件の後、1組のクラス対抗戦の相手が7組に決定したという正式な発表があった。


それもルールはハンデなしというものだ。


例年7組は見世物にされるために1組と戦わされるらしいのだが、一応のハンデはつけられていた。


しかし今回は恐らく僕のせいでハンデルールが取りやめになったらしい。


クラスのみんなにはめちゃくちゃに責められてしまった。


僕は正直それでもいい戦いができると考えていたから、訓練して対策すれば大丈夫と訴えたのだが誰も聞く耳など持ってくれない。


結局、訓練してくれるのはレイナだけとなった。


クラス対抗戦のルールとして参加人数は最低1人最高5人であるため、僕とレイナさんだけでも参加することは出来る。


まぁ正直No.2であるヴォルフガングがあんな感じなら、僕1人でもいけなくもない所が本音だが…


ただそれだと7組は舐められっぱなしだ。


「あ、あの私はアレンさんに魔法を当てればいいんですよね? 」


ボーッとしている僕にレイナさんが問いかける。


僕はすぐに我に返り首を振って返事をする。


「そうです。僕は逃げ回りながらこの紙を丸めて作ったボールを投げ付けるので、これを3回ぶつけられたら終了です。ただ、今回は僕が相手なので魔力感知はできない状態で行ってもらうことになります」


今一度訓練内容の説明をするが、レイナさんはやっぱり腑に落ちないようだ。


「これってあまりにも私が有利すぎないでしょうか? 魔法って近距離戦ではあまり有効に思えないかもしれないですが、それが1対1となったら余程接近戦にでもならない限り威力もスピードもこちらにぶがあります。ましてやどんな魔法でも当ててしまえば勝ちなら、基礎魔法は1秒も掛からずに唱えられるので……… 」


「いや、そうでも無いと思いますよ」


僕は一言そう返事すると森の茂みに入っていく。


「10数えたらスタートです」







「はぁ、はぁ、はぁ、何で…… 全然魔法があたりません」


訓練を開始してから2時間くらい経つが、結果は僕の全勝だった。


「まるでずっと私の位置が見えているかのよう。いつも先制攻撃をされて、私が攻撃する頃には木や岩に隠れてしまって全然当たらない」


流石レイナさん、この訓練の目的をもう何となく理解してきているようだ。



「学校で行われる実践訓練は魔力感知に頼ったものが多い気がします。もちろんみんな魔法は使えますからそうなるのは無理ないんですが、魔力感知は人それぞれ得意不得意があります。だからまずは戦闘の基礎を学ぶことが大切なのではないかと思うんです」


「戦闘の基礎? 」


「はい、これは僕の経験からの持論ですが戦闘の基礎は“敵の先手を打つこと”です」


レイナさんは興味深そうに頷きながら持っていたノートにメモをとる。


「これは1例ですが、敵より先に攻撃をするということも先手を打つことになります。敵の足音や呼吸、魔法を撃つ時の癖、そういう小さな情報から敵の次の動きを予測して動く。そうすると敵は自分の意思で動いているはずなのにどんどんと選択肢がなくなっていくんです」


一時期、ミノカゲロウという魔物に多くの冒険者が襲われるという事件が多発した。


もちろん直ぐに討伐の依頼が出て多くの冒険者にが依頼を受けたのだが、全く討伐できなかった。


ミノカゲロウ自体はDランクあれば討伐できる雑魚なのだが、CやBランクの冒険者であっても苦戦を強いられていたのだ。


その理由はミノカゲロウは気配を消す力を持っていたためだ。


そのため奇襲をくらい、冒険者達は返り討ちにあっていたのだ。


それくらい冒険者達は魔力感知に頼りすぎている。


だからこそそこに勝機があると考えたんだ。


「もう1回! お願いします! 」


レイナさんは腕をまくり杖を握ると真っ直ぐにこちらを見つめてそう言った。


夕暮れの日差しのせいか、血の気の感じなかった白い肌も少し赤く染まっていて、活気があるように感じる。


結構負けず嫌いらしい。


「ちょっとまてよお前ら! 」


突然声をかけられ驚いた僕達が声の方を向くと、そこにはナナリの姿があった。


「アタイもそれ参加させなよ」




<あとがき>

できるだけ高頻度にしたいですが、3日に1回がベースです!

水曜日、金曜日、月曜日です!(土日もするかも)

投稿時間は20時です!


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