第6話 魔法実践訓練の話

「えー、今日は魔法による実践形式での戦闘訓練を行いたいと思います」


転校してから1ヶ月後、今日は校庭に出ての実践訓練だ。


「その前に、アレン君。君は魔法が使えないんだっけか? 」


先生は相変わらず抑揚のない喋り方でそう問いかけてくる。


「はい、戦闘では主に指揮と魔法具での戦闘が多いですね」


そう答えると先生はそうかと呟き


「君は今日見学していなさい。魔法が使えないんじゃできることは無いからね。特に今日は危険性がいつもより高いから」


戦えない訳では無いが、今日の授業は魔法を使った戦闘をメインとしているため、恐らくトリッキーな僕のやり方は逆効果を生み出すのだろう。


「分かりました」


僕は素直に先生の指示に従うことにした。


僕はその場から少し距離を置き近くの木陰に腰を下ろす。


もちろん浮いた行動を取っているから、クラスメイトの何人かはあまり快く思っていないような反応を見せていた。


先生は僕の動きを視界の端で感じ取ると、パンッと手を叩き訓練の説明に入る。


「今日はそれぞれの得意とする魔法を使っての一対一の戦闘訓練をしてもらいます。まぁ精神攻撃系は禁止ですが、それ以外の魔法であれば何でも大丈夫です。 私が皆さんに防壁魔法をかけるのでどちらかの防壁が壊されたら終了となります」


本格的な戦闘訓練は今まであまりやってこなかったのだろう。


全員の顔に緊張が走る。


「そして今日は、合同訓練として5組の皆さんと―」


「アドル先生! どうも」


「ポイ先生? どうして3組の担任であるあなたがここに? 」


「いやー、5組のママル先生が急遽出張しなくてはならなくなってしまったようで、代わりにうちのクラスが7組の皆さんのお相手をしよかと買ってでたわけですよ」


恐らく今日は5組の人達との戦闘訓練をする予定だったのだろう。


個人の戦闘力的にもそのくらいが丁度いいとしてその組み合わせになっていたはずだ。


3組となると結構強い人たちなのではないか?


「なるほど急に出張にね……… 普通こういう時は代わりの先生が、付いて授業に出るはずです。そうそう予定が変わることなんて考えられないのですが」


アドル先生は怪しそうにポイ先生を見つめる。


「変に考えすぎですよアドル先生。その代わりの先生も偶然見つからなかったって話ですよ。世の中偶然起きた出来事も沢山あるのです。全てに必然性を見出そうとすると心配ごとや悩みが絶えないですよ」


ポイ先生は両手を広げニヤニヤと笑いながらそう話す。


「それに安心して下さい。アドル先生の大事な生徒さんを傷つけるつもりはありません。その証拠に今日はシラギを使うよううちの生徒にいってありますので」


シラギとは学校に最初入って3ヶ月ほど使う練習用の杖の事で、初級の初級の魔法しか発動することの出来ないものだ。


「舐めやがって… 」


うちクラスの誰がそんな事を呟いた。


ポイ先生は手を耳に当てて聞こえないというようなジェスチャーをする。


「んー? 今何か言ったかな? 7組の諸君。何か勘違いをしているようだから言っておくけれど、本来は君達が私達のような上位クラスに相手して貰えるだけで感謝感激しなくてはならないのだよ? 」


これは僕じゃなくてもみんな分かっていることだろうが、明らかに力の差を見せつけてやろうという魂胆がみえみえだ。


「このっ! 」


ダノンが1歩前に踏み出そうとするが、アドル先生がそれを止める。


「分かりました。でも、1戦だけでお願いします」


「そうですかぁ、では早速始めましょう。ウチのナナリとそちらのレイナでどうでしょう? 」


「そちらが指定するのですか? 」


アドル先生の声がいつもより大きくなった気がした。


「何か? あなたが私の決定に何か文句でも? 」


そう言われると先生は口を噤んでしまう。


何か弱みでも握られているのだろうか?


「さ、始めましょう。ウチ1番の実力者の力を見せてあげますよ」


ポイ先生はいやらしく笑う。



<あとがき>

できるだけ高頻度にしたいですが、3日に1回がベースです!

火曜日、金曜日、月曜日です!(土日もするかも)

投稿時間は20時です!


評価やコメントとして頂けたらとっても嬉しいです!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る