第2話 ロゼリアメンバーに試される話

「ロゼリアに、僕が?」


「はい!」


ルリルは真っ直ぐにこちらを見つめる。


そもそも何故パーティーに所属していないことを知っているかと話を聞くと、どうやら僕は寝言でパーティーからハブられたことを呟いていたらしい。


「パーティー追放されたんだよ僕。そんな奴が」


「追放されたんですか!?てっきり自分から辞めたのだと思ってました」


「違う違う、僕の能力はAクラスレベルではダサいらしいよ」


ルリルはしばらく黙り込みしばらく考えたあと、僕の手を掴む。


「アレンはもう冒険者やりたくないですか?」


いつもの明るい表情とは違い、いつになく真剣な表情でルリルが語り掛けてくる。


「それは、僕だって冒険者を続けたいけどー」


「じゃあ、行きましょう!」


ルリルは僕を軽々と抱き上げる。


お姫様抱っこだ。


「ちょっとルリルさん!これ僕物凄く恥ずかしい」


「冒険者なら恥をかくことを恐れちゃダメです!旅の恥はかき捨てです!」


ルリルは全速前進で駆け出した。






町外れにある、どデカいお屋敷。


これがロゼリアのホームらしい。


「流石Sランク冒険者はすごいなぁ〜」


思わずそんな並の感想が口をついた。


「さ、着きました。取り敢えず他のメンバーの皆さんに会いましょう!」


ルリルは僕の意見を聞く暇もなく屋敷の両開きの扉を開ける。


「お帰りなさいませ!お嬢様!」


すると30はくだらない数のメイド達が一斉に出迎えた。


ルリルは僕を下ろすと、ツカツカと道の真ん中を歩き始める。


僕は戸惑いながらもその後ろについていく。


「みんな、ただいま!お姉様に会いたいんだけど、居るかな?」


ルリルに話しかけられたメイドは頭を上げる。


「いえ、今日は朝から王都の方にお出掛けなされております。手紙をお送りなさいます―きゃあ!」


そのメイドは僕を見た瞬間悲鳴をあげた。


その悲鳴で頭を下げていた他のメイド達も頭を上げ、同じように悲鳴を上げる。


「え、え?どういうこと、ルリル僕何かしちゃった!?」


そう言ってルリルを見ると彼女は困り顔を浮かべながら、どうしたものかと後頭部を掻いていた。


その時―


「こいつぁどういう事だ!ルリル!!」


奥から1人の女性が歩いてくる。


「あ、イナちゃん彼は―」


「彼?」


イナと呼ばれるその女性は僕の顎を人差し指と親指でクイッと上げる。


「そうだよな、どうみてもこいつぁ男だよな?」


速いっ!


さっきまで20メーター近く離れていたのに一瞬で目の前まで詰められている。


瞬きした瞬間にはもう目の前まで来ていた。


「イナちゃん聞いて!私は彼をウチのパーティーに入れるべきだと思うの!」


イナさんは僕の顎を持ちながら、横目でルリルを睨みつけた。


「ルリル…ウチが男子禁制ってのは忘れてないよな?」


「え?」


シリアスな状況に似つかない間抜けな声が僕の口から抜けだした。


「え、え、え!? ルリルさん僕そんなの聞いてないですけど!?」


ルリルは顔の前で手を合わせ頭を下げる。


「ごめんなさい!それ言っちゃうと一緒に来てくれなさそうだったから!」


なんてことだ。


そりゃイナさん怒るわけだ。


「ルリル?てめぇ、こんなこと姉さんが許すと思ってんのか!?」


「わかんない、でも話は聞いてくれると思う!」


「チッ!」


イナさんは舌打ちをすると、僕から手を離し近くのメイドが手に持っていたタオルを取り上げる。


「おい、お前たち模擬刀を持ってきな!」


イナさんはメイドにそう指示すると僕の方へと向き直る。


「ウチのパーティーに入りたいんなら、素質を見せてもらおうか?」


「それってどういうことですか?」


僕の質問にイナはどこか嬉しそうに答える。


「アタシは魔力感知が苦手でね、見ただけで相手の魔力ってのを測れないんだ。だからこうして一戦交えて力を測るのさ。アタシに指1本でも触れたら、門前払いはしないでやるよ」


その返答を聞いている間に僕に模擬刀が渡される。


「さて、ルリルがウチのルールを破ってまで入れたいってんだから、アタシを楽しませてくれよ?」


え、全然ムリなんですけど。


僕は改めてイナさんの全身をしっかり見る。


まず、ルリルもそうだがこのレベルの人は体の軸が一切ブレない。


それ故に隙なんて何処にも見つけられない。


僕は目でルリルに救助を求める。


「アレンさん!頑張って!」


ルリルは笑顔でそう言った。


何だかこの状況を楽しんでないか?


「やるしかないのか…」


覚悟を決めるしかない!


今この瞬間にある情報だけで、やれることを精一杯やろう。


それでダメなら仕方ない。


ルリルには申し訳ないけど、過大評価だったってことで大人しく帰ろう。


「分かりました!お願いします!」


僕はそう言うと今一度イナさんを観察する。


少しだけ紫がかった黒髪の長髪で後ろでひとつに結んでいる。


色白で切れ長の目、唇は薄く、鼻筋はスーと通っており、可愛い系のルリルとは違い綺麗系って感じだ。


体型は綺麗な逆三角で胸もお尻もキュッとしまっている。


足を前後にして前で重心をとっている。


足は左右ともバネのありそうな感じだ。


魔力の感触から性格は頑固で天邪鬼、身内には優しくそれ以外には厳しい。


礼儀作法に敏感で厳しいが、それをしっかりと守れば心を開いてくれる。


手の平は硬く厚いため、魔力は腕や手に流れやすい典型的な剣士のタイプ。


手の平の硬さはさっき左手で僕の顎に触れていた時に分かった。


そして筋肉の付き方や顎に触れた時に手から放たれれていた微かな革の匂いから利き手は左手だと予測できる。


あの匂いは剣の柄によく使われる革の匂いだ。


もちろん両手剣で利き手は右の可能性もあるけど、左腕が右に比べて大分太いから、片手剣をメインに使う人なのだろう。


そして服に着いた汗ジミや、多少の呼吸の乱れから恐らくさっきまで剣を使った鍛錬をしていたって感じか。


タオルは右手に持っており力が抜けている。


かなり余裕のありそうな構えだ。


魔力は流れにムラが感じられる。


細かい魔力コントロールで繊細な戦いよりも、魔力の総量で押し切る脳筋って感じか。


ただ、どちらかと言うと魔力の線は細いから繊細な戦いの方が向いているハズだ。


まぁ、そこはイナさんの性格がそれを嫌うんだろう。


「戦い方は体型からして、捻り運動が得意…」


僕はイナさんの体型、性格、魔力、あらゆる情報を元に分析していく。


「おい何ブツブツ言ってんだ?早くかかってこい!」


イナさんは目に見えてイライラしだしていた。



<あとがき>

できるだけ高頻度にしたいですが、3日に1回がベースです!

火曜日、金曜日、月曜日です!(土日もするかも)

投稿時間は20時です!


評価やコメントとして頂けたらとっても嬉しいです!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る