相手の体型や言動を見ただけで能力を見抜く力を持った主人公。ただ魔力0スキル0なのでパーティー追放される。何故かSランク冒険者に拾われたのでそこで頑張る。

プリントを後ろに回して!!

第1話 Sランク冒険者に拾われる話

「アレン、お前は今日でこのパーティーから追放だ。」


パーティーのリーダーである、ローレンに突然告げられたその言葉の意味を僕はしばらく理解出来ていなかった。


「え?なんで?」


「なんでじゃねーよ、俺たちは晴れて明日からAランク冒険者になるんだ。そのパーティーにお前みたいな、魔力もスキルも0の奴がいてみろ、見栄えが悪いったらねぇーよ!」


「そんな!確かに僕は能力低いけどこのパーティーの司令塔として…」


「ゴチャゴチャうるさいわね!」


僕の言葉を遮るように叫んだのは、女魔術師(攻撃系魔法専門)のアカネだった。


「そもそも、アンタだけウチのパーティーで貴族の血を引いていないじゃない!それなのに3年もウチに置いてやった事を感謝しなさい!」


「全くアカネの言う通りです」


次に口を開いたのはもう1人の女魔術師(治癒魔法専門)のイーリアだ。


「戦闘中のアレンの指揮は優秀でしたが、3年も一緒にいればもう、あなたに指揮をとってもらう必要もありません。私達はアレンなしで十分やっていけるでしょう」


イーリアが話終わらないうちにローレンは僕の荷物を投げつけてくる。


「ほら、どこのどなたか知りませんが邪魔なので早くどっか行ってくれませんか〜?」


ローレンは勝ち誇ったような笑みを浮かべている。


「僕、たち…みんなで魔王倒して勇者になろうって―」


その瞬間、ローレンは僕を蹴りつける。


「うるせぇな!誰が平民なんかと交わした約束を守るかよ!こっちは3年間もてめぇーの偉そうな指揮に耐えたんだ!だが、もう用はねぇさっさと消えろ。俺たちはもうお前を必要としてない」


「まってよ!まだ、皆の悪い癖が治ってない!それを治さないとAランクでは多分通用しな―」


そこで僕の意識は途切れた。


多分ローレンに頭を殴られたのだろう。


薄れゆく意識の中で僕は3人のことを考えていた。


ローレンは剣士だが、首が太く、肩の筋肉が発達しているため、魔力が頭に流れやすい体型している。


本来この体型の人間は魔術師向きで、特に人の感覚に作用する魔法に適応しやすい。


剣士に向いているのは、指の骨が太く、手の平の厚い体型をしている人だ。


本来魔術師向きの人間が剣士として一定のレベルに至るためには、より繊細な魔力コントロールが求められる。


だから僕はローレンを最前線では戦わせず、隙を見て大きな一撃を与えるという、本来なら魔術師がやりそうなポジションで戦わせた。


ローレンの場合は剣を振る回数よりも、剣に魔力を込める回数を増やした方が良いと判断したからだ。


ただまだやはり、魔力コントロールが不安定で、戦闘中に柄を握る手の中指を浮かせてしまう癖が治りきっていない。


アカネとイーリアに関してもまだまだ治りきっていない悪癖が沢山ある。


アカネは呪文を唱える時の声色が、正しい音から少しズレる癖があるし、イーリアは臆病な性格がそうさせるのか、高レベルの敵を相手にすると重心が後ろになり、腕や肩に力が入り魔力を分散させてしまう癖がある。


「みんなまだまだ強くなれるって伝えたかったけど―」


まぁ、もういいか…









「…ですか?」


何だか、声が聞こえる。


「大丈夫ですか!?」


ハッと目を覚ますとそこは知らないベットの上だった。


「し、知らないてんじょ―」


「よかったぁ!」


僕のセリフはかき消された。


「君は?」


僕はベット脇でホッとしたような表情をしている女性に話しかける。


「私のこと…覚えません…よね?」


僕は数回目を擦り、その姿を凝視する。


オレンジの長髪に、緑色の瞳、顔は丸型で着ている装備の色合いは派手だが、どこかまとまりのないスタイルをしている。


胸が大きく、お尻も右側の筋肉が発達してるように感じる。


このタイプは胃袋に魔力が流れるタイプだ。


…って分析するんじゃなくて、思い出さないと!


「えーと…………はっ!昔僕らが助けた村の女の子が!名前はえーと―」


「ルリルです!」


思い出したのが嬉しいのかルリルは目を輝かせた。


「私あの時、冒険者になりたかったんですけど自信なくて…でもアレンさんが私に“君はご飯をいっぱい食べたら立派な拳闘士として冒険者にならるよ”と言ってくれたおかげで今冒険者やってます!」


「そうか、役に立てて嬉しいよ!僕をこの宿に運んでくれたのも君なんだろ?」


「はい!」


「まさか、僕なんかがSランク冒険者に関われる日が来るとはね〜」


「え!?」


僕がそう言ってベットから出ようとすると、ルリルは目を丸くしてこっちを見つめていた。


「え、どうしたの?僕何かした?」


「どうして私がSランク冒険者だってわかったんですか?」


やってしまった。


悪い癖だ。


「あ、いやその……………Sランク冒険者となれば僕みたいな底辺冒険者でも見たことあるし…」


「嘘です!私の顔見ても名前わかんなかったじゃないですか!?」


しょうがない、白状しよう。


「ごめん!君その体格からして、魔力量も凄く多く見えたし、一つ一つ体に合わせた作りになってる。グローブは魔力伝導率の高い希少なバジリスクの皮が使われていて、極めつけはその靴底」


「靴底?」


「君みたいなタイプは右足を軸にしやすい。だから右の靴底がすり減りやすいんだけど、君の靴底を見ると左右のすり減り具合に差が生まれていない。正直こんなこと有り得ない。誰しも絶対利き足の方がすり減りやすいんだ。けどそうなっていないってことは、利き足である右足と同じくらい左足を使って鍛錬してきたことが分かる。だから実質どちらも利き足くらい使いこなせるんだろう。そんな拳闘士が弱いはずないからね」


僕は長々と語ってしまった。


正直自分でも気持ちが悪いと思う。


また、嫌われてしまうのだろう。


「…やっぱり、すごい!」


「へ?」


僕は予想だにしない返答に間の抜けた声を出してしまった。


「アレンさん!ウチに入りませんか!?」


「は?」




<あとがき>

できるだけ高頻度にしたいですが、3日に1回がベースです!

火曜日、金曜日、月曜日です!(土日もするかも)


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