その件は水「で」流そう。~ソーマの異世界きまぐれ生活~

いけだけい

第1話

暑さで目が覚めた。

おかしい、寒くなってきた時期のはず。

それ以前に自分の部屋で普通に寝たはずだ。

だが、目を開けて周りを見れば砂漠だった。


自分の格好を確認する。

スウェットの上下に裸足。

寝たときの格好だ、おかしくはない。

ただサイズが少しデカくなってる。

いや、服がデカくなったわけじゃない。

俺の身体が小さくなった?

明らかに子ども、という程ではないが。

それに怪我の跡や歯並びまでキレイになってる。


俺は樹 槍馬(いつき そうま)、36歳だった。

だが、これは単純に30代から10代に若返ったという感じではないよな。


何が起きた?

ここは何処だ?

わからないことばかりだ。

暑いので取り敢えずスウェットの上だけ脱いだ。

脱いだやつはどうしようか。

日差しがきついので頭に軽く掛けておこうか。


さて、どうしたものか。


救助なんて期待できないよな。

と、なると…自力でなんとかしないといけないのか。

でもサバイバルの知識なんて一般的なものしかないな。


グルっと見回してみても砂と空しか見えない。

目印になる物がないと死ぬまで彷徨うことになりそうだ。

太陽から離れたい、という願望を叶えるなら影が伸びる方へ進んでみようか。

ベストな方法とは思わないが他に思いつかない。

それにずっとここに居てもどうにもならないだろう。

とりあえず歩く。

腰と裾にゴム入ってて良かったな、まだ歩きやすい。





どのぐらい歩いたのか。

10分か1時間か…それ以上か。

頭の中でカウントしていたが途中から面倒になってやめた。

寝起きで何も口にできず暑い砂漠を歩いてるんだ。

頭が回らないのはどうしようもないだろう。


周囲を見渡す、やはり何も無い。


水だけでもなんとかならないか…そう考えた時、体から何かが抜けていくと同時に目の前に透明な塊が現れた。

浮いてる、ふわふわという感じでは無くその場に固定されているように留まっている。


なんだこれ。


少しの間眺めていたが、そっと指先を触れさせてみた。

特になんの抵抗もなく指は塊に刺さった。

一応冷たいと思える温度だ、指を抜いて舐めてみる。

味はなし、すぐに異常は感じない。


これを飲んでもいいのか。

飲んで腹でも壊したらどうしようもなくなる。

だが飲みたい。

不安と欲求で迷った結果、一口だけ飲んで進むことにした。

ある程度時間を空けて、何も異常が起きなかったらまた飲んでみよう。


さて、残ったこの水の塊はどうしようか。


感覚的に、恐らくだが俺から出た何かの影響で出現したように思える。

信じられないが…これは魔法だろうか。

そうだとして、もしも1日に出せる量が決まっているならここに放っていくのは勿体ない。


漫画やアニメのように動かせないだろうか?


右手を少し離れた場所に固定し、そこへ移動させたいと考える。

スッと、音もなく水は移動した。

動かせて良かった、次は胸の前30センチ辺りに固定して1,2歩進んでみる。

自分との距離も設定できたようで水は一定の距離を保ったまま移動している。


よし、あとは進みながら砂漠を出ることを考えよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る