第5話 美しき肉の裏側





いつも無表情。言葉は無い。

しばらくの沈黙の後、人間を形成した皮膚を無慈悲にも引き剥がしにかかる。

与えられた仕事を完璧にこなす機械とでも言うべきか、この道具はやめるまで辛抱強く付き合ってくれる。

器に滴る赤黒い体液からは温もりを感じ、すぐにも封蝋のように固形化してしまう。いつまでも黒い、どこまでも黒い、邪悪な液体は放棄されるまで黒くあり続ける。

痛みは自らの手で調整可能だが、耐え抜いたからといって誰も褒めるどころか呆れ、罵倒される未来しかないというのに呻いて息を飲む。手は震え、血の気は引き、換気扇が回る虚しい音の中で心が凍えていく感覚を堪能するのだ。

誰にも理解を求めてはならない。誰も理解などしてくれない。この行為は本人にのみ意味を成す。

痛みはいずれ麻痺していく。痛みはいずれ意味を持たなくなっていく。何のための行為なのか、当人ですらわからない。

そうしているうちに気付かず、望まず、くたびれた命は絶たれていく。

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