第2話 聖職者の真っ平らな顔




美しい賛美歌が心を蝕んでいく。

そこに善意や道徳心は皆無で、そもそもそれらを持ち合わせる気もないはずだ。


「もう大丈夫だよ」


残酷に、それはもう殺人だ。

奴らは完璧に人を破壊できる術を知っているからこそタチが悪い。

直接的に手を汚さない正当な殺人。

勝手に死んだ、確かにそうだ。

救いを求めた手は掴んだ果てに切り刻まれ、慈悲もなく振り払われる。

その時の顔をよく覚えている。

パーツを失った人ではない人の顔。

ゴミ屑を見て悪臭に顔を歪めていたか、はたまた悪意に満ちた嘲笑を浮かべていたか、もはや定かではない。

真っ平らな顔。

顔なのか、それは顔と呼べるのか?

幾人も殺した冷たい刃物で背中を突かれる。

早く行けよ、早く逝けよ。

ひと突きされれば一歩、またひと突きされて一歩、死の淵に近付いていく。

寒い。

両手がガタガタ震えていうことを利かないし、両足は意思を無視した歩みを続けて膝は高らかに笑って叫んでいる。

振り向いた。

真っ平らな顔が並んでいた。

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