裏の家から
影神
思念
「はあ。
旨かった、、」
遅めの夕食を食べる。
おばあちゃんの料理は変わらずに旨かった。
「ご馳走さま」
時刻は1時半を過ぎていた。
布団を用意しながら、母親とおばあちゃんは話している。
おばちゃん「布団が干せなくてさ」
母親「明日。コインランドリーとか行くしかないね」
久しぶりの帰省。
母親のお母さん。
俺達からしたらおばあちゃんの家へ。
母親。俺。弟と3人で向かった。
父親は蒸発し、おばちゃんの旦那。
俺達からしたら、おじいちゃんもそんな感じだそうだ。
今回は久しぶりに。
様子見を兼ねて帰省した。
俺達の住んでいる場所からおばあちゃんの家までは、
かなり距離が離れている。
それにこんな御時世で、会う事自体が久しぶりだった。
おばあちゃんは、いい歳だった。
言い方が悪いが、ボケたりしていないか。
怪我等していないか。確認する為でもあった。
逢いに行くのに。
本当は、理由等は必要無い。
心配だから、家族だから。会うのだ。
だが、それが普通に出来ない時代になってしまった。
俺は食べ終わった食器を洗う。
ジャー、、
カシャカシャ、、
キュッ、。
食器を洗っていると、何かの気配がする。
「ん、、?」
振り返ると、黒いモヤみたいのが、
俺の後ろを通っている。
「うわぁ!!」
「どうしたん?」
心配しに見に来てくれた弟。
「何か居ない?」
弟「いねえよ?」
俺はめんどくさい事に。
そういうのが強い訳でもなく、
全く見えない。という訳でもなかった。
中途半端な、一番めんどくさいやつ。
「それ、冷蔵庫に閉まっといて?」
弟「あぃ。」
洗い物が終わり、居間に戻ろうとした時。
ドンドンドン!!
玄関から大きな音がした。
時計は2時を少し過ぎていた。
「誰だよ、、うるせーな。」
玄関へと赴く。
「あの、、。
何時だと思っているんですか?
うるさいんですけど。」
来たのが分かるなり、こう言われた。
「ココカラデテイケ!」
玄関は昔ながらの白い硝子で、
電気の明かりでシルエットが何となく見える。
、、子供か?
真ん中に入っているラインよりも。
頭らしきものは、下にある。
こんな時間だぞ、、?
自分の中でそう考えていると。
不意に玄関が開いた。
ガラガラ。。
「嘘だろ、、
鍵。閉まってねえのかよ」
見知らぬ子供は、普通に家へと入って来た。
見知らぬ子供「ココカラデテイケ!!」
睨む様な顔。
そして違和感のある声。
恐怖。
いや。どうしたら良いのか分からず、
あり得ない状況を、ただ。怒りへと変換する。
「ここは、俺ん家だろうがよ!
出て行くのはてめえらだよ!!」
子供を、玄関の外へと押し出す。
見知らぬ子供「ココカラデテイケ!!!」
子供の力ではない力で、家へとあがろうとする。
玄関の隙間から見えた外には、もう一人。居る様だ。
見知らぬ子供「デテイケ!!」
「しつけえな!!」
何度も外に出し、鍵を閉める前に開けられる。
頭にきた俺は地面へと、叩き付ける。
そして怯んでいる隙に、鍵を閉めようとした。
「待って、、」
後ろから母親の声がした。
俺は。おせえな!と、矛先を変えようとしたが。。
ゆっくりと玄関が開かれたそこには、白い小さな犬が居た。
「えっ、、、。」
頭が混乱する。
おばあちゃん「もしかして、、裏の家の○○さんが。
飼っていた、犬じゃないかい、??」
、、、、。
状況が読み込めない。
さっきまでの、子供は、、。
するとおばあちゃんは話し出した。
「裏の家の○○さんはね。。
家で亡くなってたみたいなんだけど、、
○○さん家からは、鳴き声が凄くてね、、
おかしいってんで近所の人達が、
何回も警察に相談したのだけど、
特に何もしてくれなくてね?
ずっと変な鳴き声がしてたんだよ。。
それでこの間。回覧板か何かを持って行った人が、
○○さんの遺体を見付けたらしくて。。
その時に、家には沢山の動物の死骸があったそうだよ、、」
おばあちゃんは、何とも言えない顔をした。
「もっと私が言ってあげてたら、、」
母親「○○さん家の子かい?」
靴を履き、白い小さな犬へと近寄る。
「可哀想に、、
嫌だったね?怖かったね?」
すると。犬は目に涙を浮かべた。
母親「痛かったね、、」
母親は、犬を優しく抱き締めた。
俺も真似するかの様に。
外から見ていた犬を抱き締める。
「ごめんな、、。
何も知らなくて、、
ごめん。。」
抱き締めた毛並みはふわふわしていて。
○○さんがどうしてそんな事をしたのか分からなかった。
だがそれは、さっきまでの俺がしていた事だった。
母親「ちゃんと。話さなきゃ駄目だよ?」
「ああ、、。ごめん、、」
腑に落ちない所もあったが。
やってしまった事は事実だった。
外には列が出来ていて、後ろで泣いていた弟にも。
白黒の猫を抱っこさせた。
弟「可哀想に、、よしよし。」
それは、辺りが明るくなるまで続いた。
母親と俺と弟。
3人で訪れた動物達を優しく抱き締め続けた。
動物は、一緒に泣きながら、
最後には優しい表情になって。
綺麗な光となって、消えて行った。
おばあちゃんは、おにぎりを作り。
庭の花を切って、○○さん家に近い所へと供えた。
線香に火を付けると、手を合わせた。
「どうか、、次は。
沢山可愛いがって貰えます様に。。」
俺はただ。
何か変な役割を引いてしまった感が残りながらも。
こうして家へと着いたのだった。
「ただいま、、」
「オカエリ、、」
鳥のぴーちゃんが肩に乗って来て、
優しく指で頭を撫でた。
「ぴーちゃんお留守番出来た?」
ぴーちゃん「ピーチャンイイコ」
「ぴーちゃん聞いて?」
ぴーちゃん「キイテアゲル」
母親が言うのには、俺は昔から動物に好かれやすいらしい。
母親「だから分かってもらえると思って、
来てしまったんじゃない?」
と言ったが。
弟が黒いモヤの事を話したら、
母親「台所で見た黒いモヤは○○さんだったから、
動物達は○○さんから護ろうとしてくれたんじゃない?」
というので落ち着いた。
それなら、「デテイケ」の意味も理解出来る。
俺が最初から間違っていた。
んなん、わからねえよ!
と、開き直る事も出来るが、、
してしまった事はしてしまった事。
そんな何処にも持って行き様の無い。
俺のしてしまった、嫌な感じを含めた。
ちょっとうるっともする不思議な体験でした。
ぴーちゃん「ギャクタイ。ダメ!!!」
裏の家から 影神 @kagegami
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