⑦
翌朝、捜査に乗り出た一同。
「いいか?期限は今日一日だ。それまでに何としても手掛かりを見つけ、関連性を見つけ、本当にPCなら我々が解決せねばならん。急いで取り掛かろう」
郷田の合図で、それぞれが動く。
斎藤は村上とともに、事件現場の中へ足を踏み入れ、斎藤は郷田とともにすでに現場入りしている捜査員に話を聞きに行く。
「あの……斎藤さん……昨日は事件の……」
「何も言わなくていい。だからさっさと頭と目、使ってくれ。この捜査には期限があるんだからな」
素っ気ないが、斎藤なりの気遣いなのだろうか。目も合わせないが、斎藤は怒っている様子はなかった。
現場の外では、郷田と森田が捜査員に聞き込みをしている。
「お疲れ様です。本庁の郷田とこっちが斎藤です。遺体発見経緯から今日までの詳細をお聴きしても?」
「……あなたたちがあの捜査員ですか……。噂通り、人の事件に首を突っ込むのがお好きなようだ……上の指示なんで、仕方なく捜査の許可を出したんです。一日だけですからね」
目つきが悪く、本庁の人間にでさえ酷い態度を示す刑事が、ファイルを渡してくる。それには、今回の事件に関する情報が載っていた。
一ページずつ、読み込む。必要なところは全て森田がメモしていた。
「遺体写真は……あ、これか……はぁ!?」
森田は遺体写真を見て我が目を疑い、声にならない声を上げた。
「か、係長……こ、これ……」
「信じられん……一体どういうことだ……なんで拘留中の人間が……!?」
郷田はインカムを通して、斎藤と村上を呼びつけた。
「係長!どうかしたんですか?」
二人が駆け寄ってくる。
「これ……」
森田は力なく、二人にファイルを渡す。
「なんです?」
とりあえず読めと、森田は目で訴える。
斎藤がページをめくる。
「は……?これいったい何です!?」
斎藤もまた、信じられないようで手元のファイルと郷田とを交互に見ていた。
一同が驚いた原因。それは、PCメンバーが被害者だったのだ。
*
「だから、説明してくださいって!」
所轄の捜査員に説明を求める斎藤。
しかし、捜査員は「何度聞かれてもファイルにあるのが全てですって!」とまともに取り合わない。
「ここに書かれていないことを聞いているんです!なぜ、拘留中の人間がここにいるんです?なぜ死んでるんですか!?」
「我々に聞かれても知りませんって!」
「拘留されているのだから、外には出られないはず。だったら手引きした人間がいるってことになりません?」
「だったらそうなんじゃないですか!?」
斎藤の強い口調のせいか、捜査員ですら怒り口調になる。
「斎藤さん、また怖くなりましたね……」
村上がそう呟く。
「あいつは元々あんなんだろ」
森田もそう呟く。
「あなた本当にしつこいですね!なぜ拘留中の人間がここにいて死んでるかなんて我々にわかる訳ないじゃないですか!そんなに知りたいのならPCに聞けばいいでしょ!?」
「聞けないから言ってるんです!初動捜査をしたのはあなたたちでしょう!?情報はすべて出してください!」
斎藤は引き下がらない。
「情報、持ってんでしょ!?ほら、早く出してくださいよ!」
さらに食って掛かる。
捜査員は半ば諦めの様子で、胸ポケットからメモ帳を取り出す。
「あんた、本庁の人間なのは分かってますけど、一つだけ言わせてもらいます。あんた相当鬱陶しいな!」
捜査員は投げ捨てるように手帳を渡し、一歩引いた。
「係長、何とか情報持ってきましたよ」
メモ帳を手に戻ってくる斎藤。
「……怖いんですけど……」
「村上、それ以上喋ったらぶん殴るからな……。これ、PCのやつらが通報したらしいですね」
メモ帳には通報から現場に出動し、遺体発見までの状況が詳細に記されていた。
「“午前十一時四十五分、一一〇番通報あり。通報者はPCと名乗り、現場へ来るよう指示する。機捜が現着、遺体発見に至り、調査開始。被害者は四人、死因は鑑識によると一酸化中毒とみられる。現場には争った形跡もなく、物色の形跡もなし、遺体の損傷もなし。おそらく心中であると推測される”……心中……?」
森田は首をかしげる。
「何か……PCらしくないですよね。心中なんて。それにこれが自殺だとしても、自分たちに前科はない。死ぬ必要なんてないですよね?」
彼はそう説明する。
確かにそうかもしれない。PCの手口は、一貫性があった。被害者は全員前科があり、懲罰がある人間。自分たちに罪は……。
「いや……罪ならあるかも……」
斎藤がつぶやく。
「PC事件を起こしたことが罪ですか?何人も殺したから、それが前科……?」
村上はそう尋ねる。だが斎藤は首を横に振り、「いや、違う……」と一言。
「奴らは、自分の友達を助けられなかった。見つけられなかったという罪がある。だから、復讐し、仇を取り、自殺という、完全犯罪を成したんだ……」
斎藤はそう放つ。
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