「ノア君たち、今頃アメリカで何してるんでしょうね……」

 お昼休憩中の村上がそう呟く。

「さあな。捜査でもしてるんじゃないのか?」

 斎藤がそう返事するも、村上はまだ続ける。

「何の捜査してるんでしょうか」

「知るか!俺に聞くな!」

「そんな言い方しなくてもいいじゃないですか!気になりません?」

「ならない。なってもどうしようもない」

 子供のように口を尖らせ、村上は「斎藤さん、何かまたつんつんしてません?」と郷田に話しかける。

「ははは、そうか?斎藤はいつも通りだと思うぞ?」

「いや、絶対におかしいですって!ノア君が帰ってから不機嫌ですもん」

 そう話す村上を、猛禽のような目で睨む斎藤。

 村上はさっと森田の背中で顔を隠した。

「ほら、さっさと食べて戻るぞ!」

 森田は背中に隠れる村上を引っ張り退け、早く食べろと促す。

 今日もこのチームは平和だ……。郷田はそう微笑ましく思った。

「ん?……電話か……?」

 胸ポケットに入れていた携帯が震える。

 電話の相手は馬場だ。

「管理官、どうされました?」

『戻ってこい、急用だ』

 馬場はそう告げると、電話を一方的に切った。

「切れたな……」

「切れましたね……」

 一同は残りをかけこみ、店を出た。



「あの……何かありました?」

 郷田は馬場にそう尋ねる。

「PC事件は解決した……そうだな?」

 彼はそう言う。郷田は頷き、もちろんだと返事した。だが、馬場は一枚の資料を彼に渡す。

「これは……?」

「読めば分かる」

 馬場はそう言って読むよう、促した。

 資料に目を落とし、文字を追っていく。

「いや……まさかそんな……」

【被害者たちの持ち物から発見されたカード】

 資料には文言とともにカードの写真が載っていた。

「PC事件は同級生による警察への復讐、そして加害者への罰として事件は解決した。だがPCとは関係ない事件で、同じくカードが見つかった。これはどういうことだ……?」

 馬場は怒りを抑えながらそう答える。

「……摸倣犯……ということでしょうか……」

「私もそれは考えた。だが、事件の詳細は報道もしていない。にもかかわらず、この事件は例のPCと酷似している。これ……模倣犯と説明できるか?」

 郷田は言葉に詰まる。説明のしようがない……。

「この事件、我々が捜査出来ます?」

「どうだろうな……所轄が担当してる。本庁うちが手を出せるか……」

「そこを何とかしてもらいたいんです。模倣にしてもPCにしても、何か腑に落ちないんです」

 馬場は渋々ながらも、承諾した。

「何とか掛け合ってみよう。ただ、期待はしないでくれよ」



 馬場はメンバーに話をしていた。

「まさか……」

「おそらく摸倣だとは思うが……捜査できるか、掛け合ってもらっているが……」

 郷田の顔色から、メンバーは自分たちが捜査できる確率がはるかに低いのを読み取っていた。

 そして、夕方。

 馬場は「一日だけならという条件付きで捜査を許してもらえたよ」と若干の安堵を見せた。

 郷田達一同はすぐさま用意し、翌日の捜査に備える。

「私としては模倣犯の可能性が高いとは思ってるが……みんなはどう思う?」

「俺も摸倣犯だとは。ですが、報道していないことまで再現されているなら……PCの可能性が高いんじゃないかと……」

「僕はPCだろうな~って思うんですけど……」

 森田に続き、村上は他とは異なる意見を言った。

「どうしてそう思う?」

「勘です。PC事件はもしかしたら、まだ終わってないのかもしれないですよ」

 村上のその一言に、何も言えなくなる一同。

「なぜ……終わってないと言えるんだ……?」

「じ……実は……FBIの方たちがアメリカに帰る前、少しだけ僕、ノア君と話をしていたんです。その時に、ノア君から聞いていたんです……“最後に一つだけPCは事件を起こすかもしれない”って」

「おいっ!なんでそれをもっと早く言わないんだ!?もし、摸倣犯じゃなくて本当にPCが絡んでいたら、大問題だぞ!?」

 斎藤は村上にそう怒鳴る。

「だ……だって確証がないじゃないですか……それで、もし混乱させたらって考えたら……確証もないこと言えないですよ……」

 村上は肩を落とす。

「とりあえず、明日の捜査に備えよう。捜査の期限は一日だ……。斎藤、なぜ……ジョンソンさんは事件を起こすのかもしれないと考えたのか、お前なら想像ついたりしないか?」

 郷田はそう言って斎藤の怒りを鎮めた。

 斎藤は口を開く。

「おそらく……今までのPCとの繋がりを見つけたか……あるいは……PCは何かを達成するために再び事件を起こしたか……と考えられますが……」

 彼はそう言う。

「明日の現場で、関連性があるのかどうか、お前に見極めてもらいたい。いいな?」

 郷田は半ば強制に同意させた。

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