第5話 ガラクタと呼ばれる理由

俺には家族がいる。

両親と5歳離れた妹が。

だが今は、彼らに会いたくない。

いや、今の俺には会いたくないのかすら分からない。


何故なら、あの日の記憶を少し思い出したから。

首を絞められる、かつて自分だった者の記憶が。

殴られ、蹴られ、暴言を吐かれて。

挙句の果てに生きる理由すら奪われて。

我慢をするほど心は傷つき始めていく。

思い出される度に腹が痛くなる。殴られていないのに。

何もできなくて無気力な、あの感覚は体から離れることを知らない。


少年は手を伸ばした。

誰かの助けを求めてもその手は虚空を切った。

俺はあの日、我慢という名の押し付けをきっかけに世界の理を見出した。


今更手を指し伸ばされたところで、その手を信用することができなくなった。

ここは、そんな奴らが集まったゴミ貯めの街。

壊れたのは俺なのか、それとも世界なのか。


俺は何を信じて生きていけばいいのだろうか。

その答えは今もまだ、見つかっていない。

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