第39話お前に無双はまだ早い
新章22.お前に無双はまだ早い
セリカと契約を交わした俺は、涙目になりながら必死で足止めをしてくれていたシルヴァの元へと駆け寄る。
「シルヴァ。大丈夫か?」
「見りゃわかんだろ。だいじょばねえよ。」
確かに、よく見るとあちこちぼろぼろだな。見るも無惨とはまさにこのことだろう。服は至る所がほつれ破れていて、血で染まっている。
ただし、服についている血が返り血でないのは、シルヴァの疲労具合と欠伸をしてやがるこいつ。トヘトヘの様子を見れば一目瞭然だ。
「時間稼ぎサンキューな。あとは俺に任せとけ!」
「おう。任せた。…けど、お前大丈夫なのか?」
「何が?」
「いや、お前スキルがなんなのかも知らなかったのに、セリカのスキルの詳細ちゃんと聞いたのか?」
あっ。そういや聞いてねえな。セリカの方を振り返ってみると、しゃがみ込んでリズの頭を杖でつついていた。何やってんだあいつ…。というか、あいつはあくまでも戦闘には参加しないのな。
「セリカ!そういえばお前のスキルがどんな能力なのか聞くの忘れてたー!」
「そういえば言うの忘れてたね。私のスキルは簡単に言うと魔力の回復がすごく早くなるの!それだけー!!」
なるほど、実にシンプルでありがたい。てか、セリカのスキル俺と相性良すぎだろ。
古竜の特性のうちの一つに、魔力最大値の上限が無くなると言うものがある。俺も例外ではないのだが、いかんせん俺は魔力が全く回復しない。
しかし、セリカのスキルがあればその弱点を克服できる。
あれ?もしかして、今の俺ってめっちゃ強いんじゃね?
世に聞く、俺TUEEEEEEE!ってのができるのでは!?
やっべー!テンション上がってきた!!
「となれば!早速行くぞ!!うぉぉぁぉお!!百火繚乱!!」
テンション爆上がりで放たれた俺の百火繚乱は、回転数が足りなかったのか、甲高い音をたて、トヘトヘの分厚い鱗の前に綺麗に、それはもう綺麗に弾かれた。
いや、なんとなく分かってたよ?分かってたけど…
「俺YOEEEEEEEEE!!!」
まあ、そうだよね。突然覚醒とか、そんな旨い話があるわけないか…。まともに戦えるだけまだマシだと思おう。
うぉっ!あっぶねぇ。
「おい!しっぽが今頭の上掠めたぞ!ショックで禿げたらどうしてくれるんだよ!!」
イラっときて、つい八つ当たりしてしまった。なんだよ。ショックで禿げるって。
…ここに来て一つ問題が発覚した。魔力に関しては全く問題ない。しかし…………体力がもたない。
そういえば、朝はルナ探しで歩き回って、そのあとすぐにトヘトヘと戦闘になった。今までは切羽詰まってたから忘れてたけど、もう体力的に限界が近いのだ。
「こうなりゃ。一か八かだ。」
トヘトヘにもう一度向き直り、メギドフォルンに魔力を込める。
極属性の魔術の一つに、龍嵐連舞と言うものがある。龍嵐刃舞に似ているのが少し気になるが、クロス曰く全く無関係らしい。
そして、その効果は…
「1!2!」
攻撃が当たるごとに威力が倍になる。ただし、比例して剣が重くなるという特性も兼ね備えている。
つまり、
「振る時めっちゃ疲れんだよな。これ。おらぁ!3!」
ちなみに、今の俺の体力だと、もうあと2、3回が限界だ。
途切れないように、残り3回をつなぐ。できるかは分からんけど、やらなきゃ負ける。それだけだ。
「4!……くっそきっつ!!‥‥5!!これで最後!6!!」
よし!効いてる!そして、龍嵐連舞は連撃が止まったあと、一度だけ最後の一発と同じ威力で攻撃できる。重さは魔術を使っていない時と同じままで。そしてその時、魔術も上乗せできるのだ。
「うぉぉぉぉぉお!!百火繚乱!!」
一番使用回数の多い百火繚乱。威力はこれまでとは桁違いの6倍になっている。これで倒せなきゃもうお手上げだ。
「…うっそだろ……?」
流石にかなりのダメージを負っているようだが、それでも致命傷には至っていない。それに対して、こちらは剣を杖代わりにして立っているのがやっとの状態だ。
あっ。やばい。またあのブレスの構えだ。流石に死ぬか?
……意外と怖くないもんだな。さっきまであんなに怖かったのに。やれることやりきったからか?
トヘトヘの方に溜まった魔力は、次第に膨張していき、俺ごと森を焼き切り……はしなかった。なぜなら…
「まったく。勇者と勇者補佐がついていながら、この不始末…。貴様ら、減給は免れんと思っておけよ?」
突如として現れた男が、トヘトヘの頭をぶん殴り、驚いたトヘトヘがブレスを中断したからだ。
そして、この男には見覚えがある。
「おっせえよ。グリム!!」
……………………………………………………
To be continued
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