第13話双子ってなんかいいよね

序章12.双子ってなんかいいよね


「何だこれ……?」


 目の前に置かれたこの箱。以下にも怪しい、えっ? 何、なんでこんな怪しいの?

 だめだ、絶対関わらない方がいい。嫌な予感しかしない。ちょ、早く行こう。じゃないと絶対面倒臭いことにな――


「ちょっとどこいくのよ」


 1足遅かったらしい。振り返ると、箱の中から女の子が顔を出していた。ただし、服はぼろぼろに破れ、元は綺麗だったのだろうが、顔や髪の毛は泥だらけになってしまっている。


「ごめんなさいちょっと急いでるんで」


「そんなわけないじゃない! 今あんた串カツ頬張ってご満悦だったでしょう!?」


 やばい、変なのに絡まれた。1応会話は成り立つが、事件の匂いしかしない。肌で感じる。とにかく関わり合いにならんほうがいい。


「いやいや、本当に急いでるんで、ごめんなさい」


 少し可哀想にも感じるが、ここは心を鬼にしてスルーだ。


「待ちなさいよ! まだ話は終わって――」


『ぐぅぅぅ』


 なんだ今の音?


「わ、私じゃないわよ!?」


「じゃあ誰なんだよ。俺とお前以外に誰もいねぇだろ」


「……私」


 そんなことを思っていた矢先、ふと先程までの威勢の良い声とは違う声が聞こえてきた。


「うわっ! びっくりした……なんだ、もう1人いたのかよ」


 瓜二つだな、というか同一人物なんじゃ無いか? これ。いや、よーくみるとちょっと違うか。目元も、うるさい方は吊り目だけど、もう1人はどっちかっていうと垂れ目だしな。


「な、何よ。人の顔じっとみて。もしかして惚れたの?」


「んなわけないだろ。お前みたいなガキンチョは対象外だっての」


「し、失礼ね、私これでも13なんだけど」


 やっぱガキじゃねえか。まあ、本当に言ったらまたキレられそうだから言わないけど。というか、スルーしようとしたんだけど結局話し込んじまった。


『ぐぅぅぅぅ』


「今度はどっちだよ!」


「…………今回は……私じゃない」


ってことは、


「――ッ!」


 端で真っ赤になってるこのうるさい方か。


「し、仕方ないじゃない! ここ2日くらい何も食べてないんだもの」


 ぐっ、視線が痛い。この2人から浴びせられる、『はよその串カツよこせ』と言わんばかりの視線が痛い!


「ああもう! 分かったよ! こうなることなんて最初から分かってたよ!」


 もう吹っ切れた俺は、とりあえず2人に串カツを食べさせて、話を聞くことにした。ここまで関わって見捨てるのは流石に白状すぎだしな。


「で? お前ら、なんでこんなとこに捨てられてるんだよ」


「「むしゃむしゃむしゃ」」


 聞いちゃいねえ。まあ、食べ終わるまで待つか。


♦︎♦︎♦︎


 結局この2人、相当腹が減っていたのか俺の串カツほぼ全部平らげた。


「ご馳走様! 感謝してあげるわ!」


「何で上からなんだよ」


「…………ご馳走様……おいしかった。……ありがと」


「おう、どういたしまして」


 なんで双子でこんなに態度が違うかねぇ?


「そういえば、まだお互い名前も言ってなかったな。俺は大和真宗」


「イナよ! 名乗ってあげただけ感謝なさい!」


「…………ルナ。……実はイナとは双子の姉妹」


「それは、見ればわかる。おっけ、うるさい方がイナで、静かな方がルナな」


「うるさい方って何よ! だいたい、あんた急いでたんじゃないの?」


「たった今、誰かさんのせいで用事は無くなったんだよ」


「何よそれ。……でも、ご飯くれたのは本当に感謝してあげるわ」


 なんでこいつはいちいち上から何だよ。


「結局お前らはここで何してたんだ?」


「「わかんない」」


 ふざけんなとツッコミそうになったが、いきなり大声を出すわけにもいかないし、グッと堪える。

 そもそも、なんでそこハモるんだよ。とにかく本当のこと言ってくれないと話にならない。


「一応聞くが、ふざけてるわけじゃねぇんだよな?」


「違うのよ! 本当になんでこんなところにいるのか分からないの! 気づいたらここにいたのよ」


 本当か?的な視線をルナにも向けると、コクコクと小さくうなづいた。


「つまり、記憶喪失ってことか」


「そうなるのかしらね!」


「何で一語一句偉そうなんだよ。お前は」


 そうなるとここに置いていくのも忍びないか。まあ、関わり合いになっちまった以上そもそもで、そんな選択肢はないんだけど。


「じゃあうちくるか? うちって言っても俺も家を追い出されてるから定住はしてないんだけど」


 俺も本意じゃない。あくまで提案だし、こいつらのここまでの態度見れば断られるのがオチだろう。ただ、双子って事で自分とどこか重ねていたのかも知れない。


「「えっ?」」


 俺の提案に2人は完璧に息のあった返事を返してきた。

 俺からそんな言葉が出るとは思わなかったんだろう。俺もこんな事言うつもりじゃなかったし。


「か、考えといてあげるわ! そんなことよりもあたしお風呂に入りたいんだけど」


「おうおう、人の覚悟を決めた提案を『そんなこと』とはいいご身分だな」


「い・い・か・ら・お・ふ・ろ!」


 聞いちゃいねえ。まあ確かにこんだけ汚れてれば風呂も入りたくなるか。


「はぁ、分かったよ。近くに銭湯があるっぽいからそこでな」


 そういうと、2人はパァと顔を輝かせた。


「…………お風呂、久しぶり」


 なんか段々と本題からずれてる気もするが、まあ良いか。急いでるわけでもないし風呂くらいゆっくり入らせてやろう。


……………………………………………………To be continued

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