第12話王都にて
序章11.王都にて
晴れ渡る空の下、俺は東共と北王の国境沿いを歩いていた。あれ? 日記みたいになってね?
まぁいいか。誰が聞いてるわけでもないんだし。
あの後結局ヴェストと連絡は取れなかった。ヴェストが本体だと言った玉に話しかけると光りはするものの、向こうからコンタクトは取れないみたいだな。
ヴェストは俺が魔王になったから魔力は増え続けるって言ってたけど実感は全くない。その辺りはおいおい分かるようになるだろ。
独りだと暇だなぁ。喋る相手がいるってのは案外いいものだったらしい。
そんなことを思いながらぶらぶら歩いていると、やたら頑丈そうな門に辿り付いた。張り巡らされてる壁を見るに、おそらく東共とどこかの国の国境についたんだろう。
「おい貴様。本当に東共を出るんだな? もう戻れないことは分かっているのか?」
「はい。大丈夫です」
こんなやりとり、本当はしなくてもいいはずなのにわざわざ確認してくれた。この門番さんめっちゃ優しいな。
「分かった。通るがいい。貴様が戻って来れることを願っている」
「はい! ありがとうございます」
マジでいい人だな。この門番さん。
そんなことを思っている俺には、門番さんが俺が通り過ぎた後、不気味な笑みを浮かべているなんて知るよしもなかった。
♦︎♦︎♦︎
そこから、北王の王都までは問題なく辿り着いた。
ちょっとばかり、漏れそうになったり、スリにあって犯人をボコボコにしようとして逆に泣かされ、哀れに思われたのか財布を返してもらったりと色々あったが、まあ問題というほどでもない。
なんなら、そのあと連れて行ってもらえたラーメンの屋台めっちゃ美味かったし。
「おー!! ここが王都かー! なんかすげえ賑わってるな」
そんな風に感慨に浸っていた俺に、不意に声がかかった。
「おっと兄ちゃん王都は初めてかい?」
振り返ると、人の良さそうなおじさんが、同じく人の良さそうな笑みを浮かべて立っていた。
「ああ、東共から来て今日やっと着いたんだ」
「わざわざ東共から来たのかぁ。そりゃ大変だったな兄ちゃん」
「なあおっちゃん。なんかめっちゃ賑わってるみたいだけどなんかのお祭りなのか?」
「おうよ、今日は丁度建国祭の初日なのさ! 兄ちゃんいいタイミングだったな。」
そう言っておじさんは豪快に笑った。声でけえなおい。
……って、あれ? このおじさんどっかで見たことあるような気がする。まあ気のせいか。
「そっか、祭りか! じゃあ目一杯楽しまなきゃな!」
「その息だ兄ちゃん! 精一杯楽しんでってくれよな! んじゃ、俺は屋台の店番しねえといけねえから」
「ありがとなー!」
気のいいおじさんだったな。さてと、これからどうしたもんかな。
まあ急いでギルドに向かってるわけじゃないし王国誕生祭に混じっていくか!
どんな店があるかなっと、あ! 串カツだ!
おー! あっちには串団子! 焼き鳥、チョコバナナにあっちにはパインバー!
何を隠そう俺は串に刺さってる料理が大好物なのだ!
おっと、興奮しすぎてヴェストみたいな口調になってしまった。
なんかさ、串に刺さってるだけでなんか美味しくね? そのまま食べても美味しいんだけど串に刺さってるってだけで2割り増しくらいで美味しく感じるんだよなぁ。
「お姉さん! 串カツ50本!!」
ちょっと頼みすぎかな? まいっか。串カツならいくらでも食べれるしな!
「はい、串カツ50本ですね。……はい? ご、50本ですか? 5本じゃなくて?」
「はい50本で!」
「分かりました。1万ゴールドになります」
割高だな。まあお祭りって事で稼ぎ時なんだろうな。
「うまっ!」
おっと思わず声に出してしまった。さっきのお姉さんがクスッと笑ったのが目の端に見える。うぅ、恥ずい。けどそれくらいこの串カツうまい。
サクサクとした衣の食感は言わずもがな、中のお肉のジューシーさがたまらない。それでいて脂っこくもないからいくらでも食べてられる。
串カツを食べながら、特に何も気にせずに歩いていると、裏路地にでてしまった。
「どこだここ」
はい、どうやら迷子になったようです。
なっちまったもんはしょうがない。とにかくまっすぐ進むか。迷ったときはまっすぐ進めってじいちゃんに言われたしな。
多分間違ってるけど。とにかくここがどこかもわからない今、動かないことには何も始まらない。
「なんだこれ……?」
そこには、「拾って下さい」と書かれた、猫を入れるにしてはデカすぎる、俺の身長とさほど変わらないサイズの箱があった。
……………………………………………………To be continued
おまけ豆知識
1ゴールド=1円です。わかりやすいね。
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