第10話ディア=ヴェスト=ヴェスト(後編)
序章9.ディア=ヴァル=ヴェスト(後編)
「今、ここで決めるのだ。祖父の後を継ぐか、別の道を選ぶか」
「そんなの決まってるだろ」
「そうだよな。大事なおじいちゃんの後だ継ぐに決まって――」
「やるわけねーじゃん」
「はぁ!?」
先程までとは別人のように厳かな雰囲気を纏ったヴェストからの問いかけに、食い気味に否定の言葉を投げつけてやると、なぜかめちゃくちゃ驚かれた。
なんで逆にやる前提で話してたんだ? こいつ。
「やる理由がないだろ魔王なんて。めんどくさいし。そもそも、俺。切れ痔を治すためにここにきただけだし」
「いやいやいや、おかしいのだ。お前やっぱりおかしいのだ!! それに、切れ痔!? そんなことのためにここまできたのか!?」
「そんなことはないだろそんなことは。こちとら切れ痔のせいでどれだけ苦労したか……とにかくやらないったらやーらーなーい!」
「駄々をこねるんじゃないのだ! それに残念だったのだ! 試験を受けて合否を得ないとここからは出られないのだ!!」
「なんだよそのとってつけたような設定は! それに、さっき自分からやるかやらないか聞いたじゃねえか」
俺が呆れた顔でそう言うとヴェストは目を泳がせた。こいつ……久々に人が来たとか言ってたが、構ってアピールか? 頼むから他所でやってくれよ。
「そそそ、そんなこと言って、いや言ったかもしれたいけど! 我が帰してやらないのだ!」
まじか、言い切っちゃったよこの人。
あぁ、もう良いやめんどくさいなぁ。
「ああもう! わかったよ!! やれば良いんだろやれば!!」
やめろその嬉しそうな顔。いや、竜だから細かい表情とかまでは分からないけど、ニヤついてるのはわかる。
「では、こうするのだ。制限時間は5分その間に我に一発食らわせてみるのだ。お前が気絶するか、時間切れで我の勝ちなのだ。わかったか?」
「わかった。それで良いよもう」
どっかで聞いたことあるようなルールだけど、まあ良いか。ツッコむのも面倒臭い。さっさと終わらせよう。
「じゃあ今から開始なのだ!!」
はやっ!
まず初手は、俺が出遅れた……というかヴェストのフライングのせいで、相手のターン。飛んでくるブレスをとりあえずひたすら避ける。避ける。避ける。避ける。避ける。避ける。って多いな!!
「おいおいおい! さっきからずっとそっちのターンじゃねーか!」
「何をふざけたことを言ってるのだ!! これは真剣勝負なのだ。手加減はしないのだぞ!」
などと犯人は供述しております。って、言ってる場合か!!
どーしよー、俺の戦歴こんなのばっかじゃんなんでこんな強敵ばっかと戦わせるんだよ!! こっちはちょっと喧嘩が強いくらいのただのいたいけな少年だよ?
そして避けるただただ避けるだけで2分くらい経過したところで1つわかったことがある。
間近で2分間くらい死にそうになりながら強烈な魔力の塊をくらい続けたお陰で魔力の使い方というものが少しづつだがわかってきた。
じいちゃんそう言うのは教えてくれなかったからな。ちょっと1回試してみるか!
こう、魔力をぐわーっと込めて――
「ちょ、ま、待つのだ! ななな、何を洒落にならなさそうなことしようとしてるのだ!? そんな魔力ぶっ放したら消しとんじゃ――」
「うぉぉぉぉぉおぉ!!! 『龍嵐刃舞』!!」
適当に思いついた名前をとりあえずでつけた魔術をぶっ放す。
術式も何もない雑魔術。ただ、魔力の使い方を学んだおかげで威力は『風牙』とは比較にもならない。
「バカ!! やっ、やめ――」
凄まじい地響きと共に、何かが体から流れ出していく感覚があった。
あっ、やばい。魔力使い果たしたせいか意識が……
魔力使いすぎると、こんなことになる、のか
「こ、ここまでのことをされたら認めてやるしかないのだ。お前を魔王として……ってあれ? 真宗ー? 大丈夫なのだ?」
当然、既に気絶しかけている俺に、そんな呑気なセリフが届くことはなかったのだ。
……………………………………………………
To be continued
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