第348話 民主国家?

 翌朝クロエをワーグナーに帰し、入れ替わりでアリア達を連れて来た。為政者について探る為だ。詳しくは分からなかったが、どうやら領主というのが無く、選挙で選ばれた市長が町のトップだった。そして市長の上についても分からないが、少なくともこの町では行政のトップは市長だという事だけは分かった。


 また、町と町間の移動手段は陸地では馬車が主流だった。

 この町ではもう調べる事が殆どなく、俺は街道を進んで別の町を探索しに行く事にした。ナビゲーターとして裕美を連れて来ている。セレナを含め、ワーグナーの騎士達、アリア、レニス、レーヴエン、プレアデス達をゲートで連れてきており、馬車3台に分乗しての移動になり、俺が向かうのとは反対方向へ進む。


 馬車組は旅人風にした。追い剥ぎや盗賊がない訳ではないらしいからだ。


 今日は複数の町へゲートポイントを設置し、俺は首都を目指す。首都の場所自体は地図から分かっているから、俺は裕美と向かう。また、各町の調査を分担して行うようにした。


 馬車組には景色を見てもらい、何か変わった事がないかのについて判断してもらいたいからだ。


 町への出入りはある意味唖然となった。壁がないの事に驚いたが、門すらない。正確には門はあるが、名残があり、ただの町に入りましたよとのモニュメントになっていた。

 護衛以外は商人風の服を着て、怪しまれないようにしていく。町を囲む防壁がないのだ。


 向こうでしか取れない特産物が高級食材として売られているのが分かり、商人として町の商店に少し売り捌き、皆の服を買うお金にした。そうやって皆の現地活動の服を揃えていったのだ。


 ドロシー、フレデリカ、ワーグナーの商人達に最初の町について引き続き調査するようお願いしていた。


 町並み等は典型的なのか、ここが特別なのかは分からない。

 亜人がいるから人種的に差はないが、やはり皆魔力をほとんど感じられないという。


 目立たない所で魔法を使うが、魔力の回復がかなり遅い。希薄な魔力を取り込むからのようだが、皆魔力が薄く気分が悪いという。

 慣れかも分からないが、この地に移り住めと言われても生理的に受け付けないかもと言う。ただ、魔法を普段使わない者には影響が殆ど無かった。


 軽く打ち合わせをした後、皆をそれぞれの出発地点(町)に送り込み、スタートする。


 本来馬車での移動は我々には不要なのだが、上からだと分からない事がある。調査が第一目的であり、必ずしも町を目指す必要がない。いかがわしい連中を見付けたら捕縛したりも有りなのだ。


 俺も裕美を抱いて飛んで行く。

 裕美に相方を頼んだのは、やはり1番慣れれているのが裕美だからだったりする。急ぎだと俺は1人で飛んでいく。


 ただしフルスロットルでは裕美が持たないから、速度を出したとしても、時速60キロ程度で進む。これだとある程度の異常が分かる。裕美を抱いての通常時はその半分だ。


 例えば馬車が襲撃されているとかだと、これ位なら発見できそうだ。


 しかし何事も無く隣町に着いた。

 調査班はいくつか作ってあり、必ず念話が出来る妻を1名帯同させる。

 2つ目の町も似たりよったりで、その事をセリカに伝えた。そして調査班を送り込み、次の町への移動を開始した。


 俺の移動は平和そのものだった。

 単なる空の散歩状態だが、たまたま平和な地域なのか、大陸全体がそうなのか分からない。

 気になるのは以前勇者召喚ができるのは、ルシテルの所だけだと言っていた意味だ。てっきり磁場とか魔力の何か、そういった地理の関係と思い込み、特に疑問には感じなかった。嫌な予感がしてきた。


 時折裕美に進行方向を修正されながら進む。考え事をしていて注意散漫だったからである。ただ、次の町への道中も見かけるのはのんびり馬をすすめる農家や商人の馬車位であった。

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