第340話 掃討戦

 今俺は猛烈に腹を立てている。

 天使達の戦闘訓練が全く進んでいないからだ。50名が目覚ましく伸びているだけだった。それ以外は幼稚園のお遊戯としか思えないのだ。


 「えい!」


と木剣を振るも、何故か俺の方にばかり


俺は何度避けた事だろうか?

その度におおお!と周りが驚嘆し、俺はアホな事に、くるっと回って決めボーズをついしてしまった。

しかし、ハッとなり何で避ける羽目になったのかを思い出し、ため息をつく。


 俺はいっその事、居城区にこいつらを放とうかとさえ思うようにさえなっていた。居住区で奴らが暴れだしたら流石に徒労を組んで戦うだろうと。

 しかしリリィとオリヴィアが俺の怒りを察したようで、オリヴィアは首を振り、リリィはなだめに来た。


「志郎様。お怒りはごもっともですが、それをしても全員が死ぬだけです。あの者達は達です。自己犠牲や戦う選択肢ができた者が上級へ上がる事が出来ます。彼ら、彼女達は所詮下級天使なのです。怒るだけ無駄です」


 更に教えらもらった。時折下級天使からオリヴィアの様に上級天使が生まれるが、それは極めて稀な事だと。なので上級天使の数が少ないのだ。 

 そして貴重な上級エリアにいた者達は戦い、敗れたのだと。


 下級天使は約1万年すると転生し、下界で生を全うする。

 大概は傑物となり、魂の位を上げ、何度か転生した後に上級天使の素質を得ると。


 俺は天使の仕組みを知らなかった。本物の天使は上級天使で、下級天使が面倒を見ているのは天使に見えるただの魂だった。


 リリィが避難させていたのは下級天使の中でも転生間近の者達だった。転移局に向かっている時に襲われ、逃げられるのが上級エリアしかなかったと。おまけに転生前に俺の魂に触れた為、全員がまず間違いなく傑物になり、彼女達は上級天使の素質を持って転生すると。更に言われたのは、俺達は彼女達を探し出して保護すべきだという。また、導いてやって欲しいと。光源氏じゃあるまいし、育てた女を己の都合の良いように育て、惚れさせるような事はしないぞ。


 恐らく俺と縁が強い、ワーグナー、バルバロッサ、ボレロ周辺に数年以内に生まれると。発見するまでに数年~20年は掛かるので、気の長い話だ。


 今回下級天使があれだけいるにも関わらず、新たに上級に成る事が出来る者が50名しかいなかった。


 仕方がないので気持ちを入れ替え、またもや上級エリアに行く。


 改めて上級エリアを見ると、そこは下級天使を管理する為の場所だというのが分かる。

 しかし復旧には数年は掛かるらしい。


 それからも進行は遅々としてしか進まず、イライラしていた。どれ位経過しただろうか?やがて後一日で踏破する最奥まで来ていた。時折様子を見るかの如く奴らが現れたが、恐らく最終決戦に備え、奥に逃げ込んだと思われる。

 壁を厳重に封印し、翌日の決戦に備え、俺は下界に戻るのであった。

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