第288話 人化の決断

 今はワーグナーの皇帝宮にいる。

 そしてセレーシャを取り囲むようにレニス、アリゾナ達が来ている。

 戦闘系の者達は警戒して取り囲んでいる。 いくら奴隷と化しているとはいえ、その膂力たるや軽く触れるだけで肩がもげるレベルだ。


 そして皆にセレーシャの事を紹介をしていると少し遅れて裕美が入って来た。

 そして裕美の姿を見るやいなやセレーシャが 突進し、裕美を抱き上げて頬ずりを始めたものだから、皆が唖然としていたが、セレーシャが泣きながら裕美に伝えた。


「裕美がいる!何でひろたんがいるの!? 生きていたんだ!よかった!よかった」


 セレーシャははしゃいでおり、ぐるぐる回って喜んでいたが、裕美はというと悲鳴を上げながら訳が分からず唸っていた。


「ちょ、ちょっと待ってよ!状況がよく分からないんだけど!何がどうなっているの?それに何故ひろたんって知っているの?」


 裕美が叫び声を上げると、我に返ったセレーシャが少し落ち着いて話し始めた。


「裕美!私よ!セレーシャよ!こんな格好だから分からないと思うけど、覚えている!? 」


 裕美は驚いた顔をした。


「まさか!?貴女はあの時死んだんじゃないの!?私と一緒で魔王になっちゃったの!?」


 セレーシャは首を振って否定した。


「うん、志郎さんに詳細を教えてもらったけど、私も貴女と同じように魔王として召喚されたの。だけど既に魔王がいて、私はなり損ないになったのよ。そして私が召喚された時の影響で意識が朦朧としている時に 、隷属の首輪を着けられて奴隷になっていて、その後は尖兵として使われていたのだけれども、そんな私を志郎さんが助けてくれたのよ。そして話から私の体を人間に戻す事がおそらく可能だと言うじゃない。だからお願いして連れてきてもらったの。貴方を見ていると本当に可能そうね 。志郎さんお願いします。殺ってください!」


 跪いて首を差し出すような形でお辞儀をしている。

 その状態でようやく俺の頭の高さと同じ位に頭が来る。そういう体の大きさであった。


 俺は人間の身体を取り戻す為の手順を説明していった。

 まずスリープで眠らせる。

 その後体の一部を切り取って、それをさらに細かく切り刻み、肉片とする。

 元の皮膚が残っていると、おそらく今のミノタウロスの体になってしまうと思われる為に、皮膚の残っていない内部組織だけにする。

 そしてその肉片を手に取り欠損修復を行う。その時は人間になるように、人間の体の構造を思い浮かべながら欠損修復を行う。

 そして人間の体が再生し始めたら一旦半分に切断する。次に半分にした体に対し、各々の肉体再生を始める。

 死者蘇生を行う為の体と、万が一の時の予備の体と2体を作成する。

 そしてその後眠らせた状態のまま首を落とし一旦死んで貰う。


 その後速やかに死者蘇生を行う。

 等と話したが、セレーシャは即答で同意した。何故こんなに簡単に同意するのかというのを聞いてみたら、セレーシャが持っているギフトにて、相手が嘘を言っているかどうかが判るのだと。その為に、俺が嘘をついていないと理解した。失敗する事があっても、少なくとも騙そうとしたりはしていないというのが分かったと。


 死者蘇生は特に問題ないというので、己の命を俺に託す、そういう決断を即決する事ができたと言う。


 俺が思っていた疑問点がこれで解決した訳だが、問題はどこで行うかであった 。裕美に立会いを求め浴室で行う事とする。その上で セレーシャの体格や背丈を教えて貰い、それに見合う服を準備する。

 そして服の準備が出来次第決行する事となったのであった。

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