第244話 遅々として

 このフロアからも同じ事の繰り返しだった。

 少しペースを上げる事にした。一日に付き10階層ずつだと日数がぎりぎり過ぎるので、11階層/1日にしようと考えており、それを実行に移す。これで2週間は余裕が出来る筈だ。不測の事態でロスを喰らうと時間が足らなくなるからであって、焦りから無理をしているのではなく、いざと言う時の保険が欲しかったのだ。


 今は歩くのではなく駆け足だ。直線が続くので特大のファイヤーボールを投げてから駆け足で進んでいく。


 1490階のボス部屋まで順調に来ており、躊躇なく入っていく。

 やはりコンボであっさり倒す。ドロップはヒロミが着れるドラゴニックメイルだった。有り難い。強化を施し、早速ヒロミは着替えた。

 既に夕方だが更に次のフロアへ向かい、階段まで何事もなく到着した。その為、階段に入り口を向けてシェルターを出し休憩になった。


 俺は精神的に参っていた。

 ダンジョンがあまりにも代わり映えせず、単に階層表示の札が示すフロアの階数表示のみ違うだけだからだ。流石にボスドロップだけは違っていたが。


 既にヒロミも辟易しているようで、お互い無口だ。まるで倦怠期の夫婦のように。

 恐らく感覚を麻痺させる罠なのだとは分かっている。それにこれは精神を削る為の構造だとは分かっている。しかし理解していてもガッツリ効いている。ヒロミともその話はしていて頷いているのだが、それでもきつい。

 取り合えず他の装備品に強化を施したりしている。


 食事をし風呂に入ると寝る。単調な生活だ。そして昨夜と同じような夢を見る。またもや知らない昨夜の女と致し始めていると、がっつくなと言われ、頭を殴られてベッドから落ちて?暫くして目が覚めると頭が痛い。とパターン化している感じになってきた。一つ言えるのは、合体する直前までは全てを許してくれる。だが、合体しようとすると全力で躱される。


 昨夜はもう一度寝ると普通に寝られたのではあるが、その女は現実では逢った事が無い筈だが知り合いのような気がする。誰かの指輪での変化した姿だろうか?今日もこの後は普通に寝られると半ば確信していた。

 それでもあの夢の事は妙に艶かしい位にリアルに感じる。


 まだ2日目だが、妻達と離れ離れになった影響だろうか?そして早くも夢○していた。俺持つのかな?と思いつつクリーンを掛ける。


 女性の肌への禁断症状か?と思うし、妄想なのだとは分かってはいるのだが、それでも飢えているのだ。

 そんな事を考えていると何とか眠りについた。


 翌朝ヒロミに正直に話した。


「その者とまた会いたいのか?」


「そうだな、短い逢瀬だが、なんか惚れたんだよな。ちゃんと話しとかしたいんだけどな」


「そうだな、一時的に召喚された本物と思うぞ。多分ダンジョンを出たら会える筈だ。その者に刻印を刻みたいのか?」


「あの女性の意思次第だけど、俺はそうしたい」


「ならば最後まで致すのは駄目じゃぞ。儂の経験上本物の肉体の筈じゃから、今致すと刻印が刻めぬぞ」


「そうか、ありがとうな。夢じゃないのなら大事に扱わないとな。刻印の件は分かったよ。しかしよく分かるな」


「まあ、儂の身にも似たような事態が起こっておるでな。お主と同じ時間帯じゃて。やはりそれが理由で最後まではしておらぬ。儂も一つになりたいのだがな」


 そんな話をしていたが、出撃の準備が整ったのでダンジョンに繰り出していくのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る