第1章

第232話 新たな旅の始まり

 バルバロッサでの戦いが終わり、復興がスタートして既に2ヶ月が経過していた。明日はチャカハーンとのデートだ。年齢からもう少し早く刻印を刻んであげたかったのだが、復興の中心人物の一人だった為に、今まで結婚をするどころではなかったのだ。まだまだ復興には時間が掛かるが、漸く休みを取れる位には落ち着いてきた。


 一旦ボレロからセレナとブラックスワン、レニス達とバトルシップでおっさんのいるなんとかいう山にあるダンジョンに向かって貰う事にした。


 一旦復興の特別体制を解除し、俺も明日から暫くの間休暇だ。休暇と言っても妻達のご機嫌取りに右往左往する日々になりそうだ。


 ルシテルは総督を辞めたがっていた。候補者を探しているが、1人心当たりがある。ワーグナーのあいつだ。そうタオだ。アレイ殿は高齢過ぎるからだ。

 俺が信頼できる奴で裸の付き合いをした仲だ。能力は未知数だ。


 セレナ達を送り出した後、クロエ、オリヴィアを伴いタオ、アレイ殿、奥方を呼んで昼食にしている。まだワーグナーの屋敷が完成していないので、タオの所での昼食だ。


 なんの変哲もない昼食を装ってはいるが、俺は大事な事を告知する為に来ている。

 

 皆が食べ終わり、そろそろ解散かな?と言う時にしれっとさも大した事もないかのように言い、皆を驚かせるつもりだった。


 だがしかし、最早定番としか言えないのだが、告知するタイミングをアレイ殿が崩してくれる。妙に鋭いこのおっさん、いや爺さんがよりによって食事を始めた直後に指摘してきたのだ。


「そう言えば単に食事の為に今日ここに来たのではないのじゃろう?」


「愛する妻の肉親とたまには食事をと思ったのですが、駄目ですか?」


「ほほほほ。儂を試しておいでかな?儂は暇人じゃが主はそうではなかろう?バルバロッサの復興が一段落したのであろう?今のタイミングじゃとバルバロッサの統治の相談かのう?」


「あちゃー!やはり分かりますか?流石ですね!ビンゴですよ!」


「ふぉふぉふぉふぉ。タオよお主はどう見る?」


「そうですなあ。グリーンウッド家は最早ルシテル嬢しか生き残ってはおらぬので婚姻の話では無いでしょうから、はてなんでしょうな?補佐する者の人選の相談でしょうかな?」


「よく事情に精通されていますね。やはり女性の尻を追い回しているのはカモフラージュですね?」


 クロエがさらっと追撃をする。


「まあお兄様もそろそろ腰を落ち着ける頃ですよ。貴族の娘を誑かすのもそろそろ潮時ではなくて?」


「まあバレているのならしょうがないですね。ズバリ聞きますが、タオ殿、バルバロッサの総督を引き受けてくれませんか?」


「ぶふー!ゴホッゴホッ!?」


 俺の申入れはアレイ殿とタオの斜め上だったらしい。アレイ殿が珍しく噎せていた。


「おやおや予測しておいでかと思いましたが?」


「流石にこれは予測できぬぞい。良いのか?儂の愚息で?」


「アレイ殿が思う程タオ殿は抜けてはいませんよ。人望も厚いし、人情に厚い。暫くアレイ殿に指導して貰えれば大丈夫でしょう?」


 タオは動揺していた。


「あ、あの、わ、私がですか?務まりますか?その前にルシテル嬢は?」


「まあ落ち着いてください。総督なんてどーんと構えていれば良いのですよ!。適切に部下に仕事を任せ、成果を見て公正に評価と報酬を与える管理職ですよ。特にバルバロッサではルシテルが俺の妻なので、皇帝に従順な総督という体であれば領民を治められますよ。ルシテルが総督を降りたいというのです。表向きは皇帝の妻だから状況が落ち着くまでの一時的な就任として引き受けていたので引退としますが、実際は大陸を巻き込んだ事態を招いたグリーンウッド家は政治の第一線から退くべきとの判断なのです。あくまでルシテルからの申し入れです」


 そんなこんなで半ば強引に総督を押し付け、もとい引き受けて貰った。

 クロエに後で思いっきりほにゃららな感謝をされ、泣かれてしまった。勿論クロエには伝えていなかった。


 俺は俺で、俺が留守の間の体制を築くのに四苦八苦していた。皇帝は政治に口出しは出来るが、国難レベルの事がなければ政治に参加しないスタンスを考えていて、魔王の問題をやっつけたら悠々自適な生活を希望している。冒険者としてやって行きたいんだよね!俺は皇帝なんてキャラじゃないし!


 しかし、周りがそれを受け入れてくれないんだよね…


 タオ殿は少し考えてから総督の任を受託すると返事をするのであった。

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